29
―――とんでもないことになった配信はまず終わりにして、休むことにした。
もうほんとに疲れたしね。
短剣の護衛さん、名前は……いや、名前今知ったのまじかよ。……名前はサンクっていうらしい。
展開が早すぎてびっくりどころじゃない。後藤さんも佐藤さんにツッコミ入れてたしな。
ギルドランクはBだそうだ。ギルドのランク言われてもわからんけど、たぶんいい方なんじゃないかな。
サンクさんには一旦異世界に帰ってもらって、あとからまた来てもらうことにした。異世界側にも説明するらしい。
佐藤さんは佐藤さんでテンション上がりっぱなしだったし、家に帰って―――というか警察寮らしい―――まあ、帰って落ち着いておくれ。
ただ、たぶんだけど配信のコメントからは先輩とかからの尋問みたいなのがありそうな気はする。
しかし俺はもうだめだ。ミケー疲れたよー!! 風呂入って寝るよー! あああ風呂が天国すぎる。
でさ、ミケがずーーっとずーーっと俺の近くにいるのがもうかわいくてかわいくてね。風呂の前で待ってるのかわいいよなぁ。
うん、アヴィラさんも一緒に寝ような。
―――ひっさびさにゆっくり寝たなー。やっぱり家の布団は違うや。
で、だ。今日は休んでいいか? と会社に確認したところ、……今日も出張扱いにしてくれるみたい。ほんと助かる。
昨日はさすがに疲れたからな。
あとついでに木戸にこう言われた。
『昨日の配信見てましたよー! すごいことになりましたねー。いやぁーおもしろかったですよ!
そうだ、所長が、サンクさん警備員してもらえないかなとか言ってましたよ? 今ほら人手不足だし、あの人ガタイもいいし圧もあるしで、スカウトしたいって言ってました。別に文字書けなくてもいいらしいですよ。口頭で書けばいいし、って言ってました。もし会うようなら聞いてもらえますか?』
って。あ、これのための休みか。
まーそだね、たしかに、それもありか。
サンクさん佐藤さんと一緒になるのはいいけど、異世界に佐藤さん行くのは危険すぎるからなー。サンクさんがこっちに住むならここで受付業務交代要員としてやってもらうのもありだなーと思っていたけど、……会社がそう言うならそっちのがいいかもしれないな。日本の常識だけは覚えてもらわないとだめだけどね。
まあサンクさんと佐藤さんがよければだけど打診はしてみるか。
てか国籍とかそこらの整備は佐久間さんがやるっぽい。ああ、頭抱えてたのはそれの法整備か! 仕事増えすぎかわいそすぎる。
―――まあ今日はゆっくりごはん食べてまったりしようか。
あああー、米美味いな!! やはり日本人は米だわ。特にうちは特A米だからなぁ。ここらは米美味いし酒もうまいしラーメン消費量日本一だし果物も美味いし。食べ物ばっかりだがまあ美味いもんは美味い。
そうだそうだ。うちにも日本語学校の読み書きだけみたいなのあるといいなー。ルトミスさんだけに教えるのもみんなに教えるのも一緒だしなー。
うーん、気になりだしたらイゴラフさんに打診したくなった。……早めに言っておいた方が募集かける方も楽だろうしなー。
ちょっと行ってくるか。
「ミケー、アヴィラさん、ちょっとイゴラフさんに用事あるから行ってくるな。すぐ戻る」
念のため配信つけてこ。
「おはようございます。田川です。昨日は驚きましたねー! 今日は俺お休みになったので、ちょっとイゴラフさんのとこに行ってきます。サンクさんにも用事あるしねー。ミケー! 配信に顔出しておいてなー! じゃあちょっと行ってきます」
―――イゴラフさんのいるギルド用住居ハウスに移動する。
お。外に出たらイゴラフさんがいた。
「イゴラフさーん、昨日はお世話になりました。今日はギルド設置の件と、あとうち側にも受付要因ルトミスさんだけじゃなくて誰か来れないかと打診するのと、あと読み書きできる日本語学校のこととサンクさんに用事もあって伺ったんですが……ん??」
―――なんか周囲がばたばたしてる。
なにがあった? またなんかあった?
ギルド用住居ハウスから外に出るとイゴラフさんが気づいてくれた。
「田川殿、少々今は危険だ、戻ったほうがいいかと」
「なにがあったのです?」
「それが、大きな魔力が感じられる。魔物ではないようだが、なにぶん気が立っているようなのでな。万が一を考えて臨戦態勢になっておる」
「大きな魔力? みなさんそういうの感じられるのですねー。わかりました」
「あああ!!! いたーーー!! ねえねえ!! こっちー!! きてーー!!」
「は?」
「ねえさま! だから勝手にいってはだめだと! あ。いいところに」
「え?」
と、そこに飛んできたのがフレヤさんとノッサさんの妖精コンビだった。
俺の髪を引っ張ってどこかに連れて行こうとしている。
「妖精族の方々よ。何をしているのだ。この方は我らの身内ぞ」
「ねえねええ!! いいからーー!! 急いでーー!!」
「ええーー? フレヤさん、ノッサさん、髪ひっぱるなってーなんなん?」
「おねえさま!!」
「田川殿、知り合いでござったか」
なんかわちゃわちゃしてきた。
ていうかフレヤさんが妙に急いでいるから、行ってみるか。でもよくわからないからイゴラフさん一緒に来てー!
「むう。……ルトミス! 少し離れる。ここを頼んだぞ」
「はい、わかりました」
イゴラフさん、ルトミスさんに引継ぎしてくれた。一緒に来てくれるみたい。
―――そのまま妙に急いでいるフレヤさんに引っ張られて森の中を進んでいった。
……なんか周囲の木々が倒れたりしてて物騒なんだけど! なにこれー?
と、急に開けたと思ったら、なんかでっかい爬虫類みたいな質感のなにかがいた。
え、ええ!? てかドラゴン? トカゲにしてはでかすぎる、いやでかっ!!? ていうか怪我してるんか? 血がめっちゃ出てる。
それに子どものドラゴンを守ってる? え、なにこれ?
「……これ……は。魔力の源はこちらであったか……」
言いながら、イゴラフさんが少し腰を落として俺の前に出てくれた。え、守ってくれてるの? 男前すぎる!




