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異世界に若返り転移したおっさんの状態異常魔法は絶対にかかります。眠れ。麻痺。石化。  作者: 仁渓


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第62話 みゃて

「おっさん、驚いた?」


 ニヤニヤと嬉しそうにカイルが寄って来た。三人娘も後に続いている。


 俺は子供たちの悪戯(いたずら)()に、すっかり諦めて息を吐いた。


 自分が何歳で落ち着きを得たか覚えていないが、少なくとも二十歳やそこいらでは、まだガキだった。目の前に相手を驚かせるチャンスが転がっているのに逃がすわけないだろう。ヘレンまですっかり向こう側だ。みんな若いな。


 俺はヘレンから今回の依頼は領都所属の探索者パーティーの補助だとしか聞いていなかった。


 相手は誰だと聞き返せば良かったのだろうが名前を聞いてもどうせ顔が分からないと思ったので聞かなかった。領都の探索者ならば多分顔は分かるはずだが名前まではほとんど知らない。会えば済む話だ。


 ベテラン探索者たちは軒並み領主の私兵狙いになってしまったので護衛任務に補助が必要なパーティーとなるとDランク以下になる。


 となると、なおさら名前が分からない。名前まで分かるのは『清浄(クリーン)』の常連さんぐらいだ。それ以外は顏しか分からない。行けば分かるだろうと気に留めなかった。


 とはいえ、まるで知らない相手のサポート役をするよりはカイルたち相手のほうが遥かに気楽だ。【支援魔法士】たる者、相手が誰であろうと支援(サポート)できなければならないわけだがそれはそれだ。


 俺はカイルに声をかけた。


「お前は引退じゃなかったのか? 相手を何年も待たせているなら、さっさと村に帰らないと嫁さんに逃げられるぞ。王都なんかに寄り道している場合じゃないだろう」


「だからだよ。さっさと帰りたいのに後釜が決まらないから抜けられないんだ。王都に行けば昇給試験前の今なら凄腕のCランクが多くいるはずだ。良い人がいるかも知れない」


「素直にギンとヘレンが入ってくれていいのよ」


 あらためてフレアが言った。


「悪いな。俺はソロ嗜好なんだ。誘われて悪い気はしないが応えられない」


「分かってるわよ」


 フレアは息を吐いた。


「CやBならまだしも早くAになれなんてギルマスから言われてる人と組んでも私たちじゃ務まらないわ。ついこの前まで【支援魔法士】を舐めてたなんて自分が信じられない」


「三人ともここの私兵じゃ駄目なのか? それでも村は出られるし騎士団員のいい男がいるかもしれないぜ。なんならアルブレヒトに将来性のある奴を紹介させるが」


「姉さんたちに宮勤めなんかできるわけないじゃない。騎士の嫁も無理だ。がさつな探索者の中でもがさつなほうだよ。おまけに酒癖の悪さが知れ渡ってるから領都の探索者からは相手にしてもらえないんだ」


「うっさいわね。相手にしてもらえないんじゃなくてろくな男がいないから相手にしないのよ」


 アヌベティとエルミラがうんうんと頷いている。違うと思う。


 雇い主である商人と商人専属の護衛、それぞれの馬車の御者と挨拶を交わした後、俺たちはすぐに出発した。


 二台の馬車のうち、前方の馬車は荷台に満載した積荷にシートをかけて荷が落ちない様にロープで縛り上げた形だが、後方の馬車は荷台に幌がついていて荷台の中に座れるよう若干のスペースが確保されていた。


 俺たち護衛は、ずっと歩きなので座れないが依頼人である商人とその専属護衛は幌の中に乗り込む形だ。二人が座る以外のスペースには荷物が詰め込まれていて隙間がない。


 荷物を満載している馬車の歩みは遅い。


 基本的に徒歩と同じか徒歩以下の速さしか出なかった。


 領都と王都を結ぶ街道には概ね徒歩の旅人が一日かけて進める程度の距離毎に宿場が整備されている。何件かの宿と商店、井戸、馬車を止めたりテントを張るための広場が木製の簡易な柵で囲まれていた。


 ルンヘイム領内の宿場にあってはルンヘイム兵が詰めており隣接する王都直轄領の宿場にあっては王国の兵が詰めているため安全が確保された場所だ。


 ルンヘイム領都と王都を結ぶ街道は王国の主要街道であるため宿場間は定期的に兵が巡回していた。毎日、宿場で寝泊まりさえできればそれほど危険のある旅路ではない。


 だからといって護衛を付ける必要がないわけでもない。


 無法者たちは遠巻きに旅人の様子を窺っているため隙があれば確実にどこかで襲われる。


 俺たちの場合は馬車二台に対して六人の探索者が警備をしている形だ。隙はなかった。


 幸い、俺たちは人からも魔物からも襲撃を受けることなく王都に辿り着いた。


 道中、俺は『地図』の光点を常に意識していたが俺たちを遠巻きにする存在は確認できたが襲って来ようとする気配は感じられなかった。俺たち探索者の存在が無法者に対する抑止力として役立っていたのだろう。


 毎日、確実に宿場内にテントを張れたため夜間の見張りも、まったくの野宿に比べればそう苦ではなかった。


 領都を出発して十五日後。俺たちは王都の門を前にして道中の無事を依頼人と喜び合った。馬車が王都の門前に到着するまでが護衛依頼だ。


 以前は馬車が門を通過するまでという契約が多かったようだが依頼人側の手続きの不備により馬車の入場がすんなり認められなかった場合に護衛依頼が未完了だとして修正手続きが済むまでの何日間か余計に王都の門の外で隊商を護衛するよう探索者に無理強いをした事例があり最近では目的地の門前到着で任務完了とする契約が主流だった。


 隊商の馬車が馬車用の列に並んだところで任務が完了したと見なされ商人から依頼達成のサインを依頼書にもらう。


 機会があれば次の護衛依頼もよろしく、と挨拶をして俺たちは商人と別れた。


 王都の門は二十メートル近い幅がある。


 向かって右側に馬車用の列が続いていて左側に徒歩用の列が伸びていた。


 中央部分は開いているが貴族用の通行場所だ。煌びやかな鎧を着た兵士が隊列を組んで並び、一般人の進入を阻止していた。


 俺たちは徒歩用の列に並んだ。


 列には王都を拠点としているのだろう他の探索者たちも並んでいた。


 宿場と宿場の間は徒歩でほぼ丸一日程度で辿り着く距離とされているが領都と王都からそれぞれ一つ目の宿場までの距離は丸一日よりも若干短めに設定されている。丸一日がかりで都市に到着したのでは、その後に入場手続きをしていると時間が遅くなりすぎるためだ。手続きにかかる時間を見越した分の距離だけ近くなっている。


 したがって、まだ夕方と呼ぶには少し早い時間帯だ。


 王都の兵隊が何人かずつ組になって列に並ぶ入場者の確認を行っていた。


 配属が違うのか貴族用の通行部分にいる兵士よりは安っぽい鎧姿だ。こちらは一般対応用、あちらは貴族対応用なのだろう。


 王都への入場確認は基本的に身分証となる探索者タグの提示ですむはずだ。


 俺たちより前に並んでいる探索者たちはタグの提示でほぼスルーパスで通過できていた。


 俺たち六人もそれぞれ兵士に探索者タグを見せて王都への入場を許可された。


 残る手続きは探索者ギルドに任務終了の報告だ。報告前に宿をとるべきか、それともギルドでお勧めの宿を聞いてから宿をとるべきかとそんな話を俺たちはしていた。ヘレンの顔が利く宿はないのか? そんな話題だ


 無事に兵士の確認を終え、俺たちが歩きだしたところで横合いからやたらキンキン甲高い声で「待て」と言われた。『待て』でなく『みゃて』のようだ。


 声の主は聖職者風の衣装に身を包んだ僧侶だった。


 カイルより若そうだ。こちらでの成人そこそこだろう。俺からすれば小僧も小僧だ。


 俺はその小僧が入場者確認をする兵士たちの後方に腕を組んで立ち、やたら指揮官面をしている姿に気付いていた。年齢の割に尊大な態度で生意気そうだというのが

俺の感想だ。


 小僧が言葉を続けた。


「その女はザマー教徒だな。通行は認めんぞ」


 睨みつける様な小僧の視線はアヌベティに向けられていた。

本作品をお読みいただきありがとうございました。


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なお、本作品以外にも筆者は下記の作品を公開しております。


本作品をお気に入りいただけました方には同様に気に入っていただけるのではないかと思いますので、ぜひお読みください。


よろしくお願いします。



傷つかないため誰からも距離を置く優等生は助けたクラスで一番の子とも距離を詰めない

https://ncode.syosetu.com/n4182kh/


呪剣に憑かれていた万年Fランク探索者。剣が折れたら、あれよあれよと隣国で英雄に。

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ボッタクル商店ダンジョン内営業所配達記録

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再開していたんですね! たまたまサイトを開いてよかったです。
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