転生者は、妖精の知らせを受ける②
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気がつけばツンギレ、2周年目に突入していたんですね…!!
あぁ時が流れるのは早い…!!
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「誓いの里の、ミネルヴァさん。」
妖精たちから聞いたその人の名前を繰り返し呟く。
妖精王様の知り合いとなれば、それはそれは重要人物なのだろう。
緊張からカラカラになってしまった喉で呟く声は情けなく小さな室内に響き渡った。
しかしそんな私の様子に気付く様子はなく、我が友はあっけらかんと言い放つ。
『ソウダヨ!ダカラ今すぐ会いに行コー!!』
「い、今すぐ!?今すぐはちょっと…!!」
『大丈夫大丈夫!!問題ナシ!』
『ミーたちが案内してあげるからネ!』
「か、髪を引っ張らないで!!!そういう問題じゃないんだから…って、あれ?もしかして結構近いところにいらっしゃるの?」
『ウン!飛んでいけばスグ!!』
「うん!そもそも前提が飛べないんだよね!!もうアルもなんとか言ってやってよ!!」
するとアルは私の意識を自分の方に戻すようにパチンと自身の指を弾き、呆れたものを見るような視線で私の手元を指差した。
あ、やべ。そういえば私が口を押さえてたのか。
慌てて彼の口元から手を離すと、アルはため息を吐きながら宙を払う。
『キャー!!飛ばされチャウ!!』と楽しむような悲鳴があちこちから聞こえてきたので、おそらく払ってくれたのだろう。
「ありがとうアル。そして口押さえてるの忘れちゃっててごめんね。」
「いや忘れてんじゃねぇよ!!!鳥頭にもほどがあるだろ!!」
「だ、だって妖精さんたちがあまりにも急かすから…まだ心構えもできてなくて」
「おい待て、落ち着け。お前らだけで話を進めんな。誰なんだ、そのミネルヴァって奴。」
あ、そうか。
アルには妖精たちの声は聞こえていないんだった。
落ち着くように言われてようやく、数回酸素を肺に送り込み心臓を落ち着かせる。
そして大きく息を吐いた後に、自分自身の思考をまとめながら分かっていることをアルに伝えた。
「えっと、妖精さん曰くね、石になった人たちを元に戻す件で有益な情報をくれるかもしれない人…らしい。」
「は?そんな奴、本当に存在するのか?」
「うん、妖精さんは嘘つかないからね。誓いの里ってところにきっと居るよ。それに妖精王様に教えてもらったって言ってたし。」
「………妖精王からの情報、ね。」
「すっごく有難いけどさ、王様の知り合いってなったら一体どんな人なのかちょっと緊張しちゃうでしょう?それなのにこれからすぐ行こうって妖精さんたちが言うから…。」
『大丈夫ダヨレイちゃん!!』
『ただちょっと長生きしてるダケ!!』
『緊張するほどの人じゃないヨ!!』
「本当かなぁ……実は魔女さんですとか言わないよね?」
『マサカ!違うヨ!!』
『レイちゃんは変人同士、仲良くなれるヨ!!』
「魔女じゃないけど変人かぁ…。」
話が通じるか不安すぎる。
深くため息を吐きながらふとアルを見ると、彼は眉間に皺を寄せてなにか思い耽っているようだった。
「どうしたの?」
「お前の言う通りミネルヴァって奴が本当に存在するとして、だ。オレは今まで誓いの里なんて場所を聞いたことがねぇ。」
「え、そうなの?でもアルが知らないだけかもしれないし…。」
「いや、大抵の周辺地域の情報が集まってやがる王都の資料館でも見かけなかった。相当など田舎ってだけならいいが、曰く付きって場合もあるだろ。」
「んん?曰く付きとは?」
「ようするに、資料館から抹消されちまうようななにかしらの理由があるんじゃねぇかってことだよ。」
「え!?」
『失礼ナ!失礼ナ!!』
アルの言葉に過剰に反応した妖精達が興奮した様子で言葉を続ける。
『ミーたちがレイちゃんを危険な目に合わせるわけナイヨ!!』
『むしろ人間ばっかりなこの村よりずっと安全なんダカラ!!』
「みんな………そうだよね、ちょっと田舎なだけだよね。」
『ウンウン!!レイちゃんが望むなら永遠に暮らしてもイイヨ!!』
『此処よりずっと静かで人がいなくて、自然いっぱいなミーたちの楽園ニ!!』
「うんうん素敵だね妖精さんの……妖精さんの楽園?」
「ッチ、ほら出たじゃねぇか。不穏すぎるっつの。」
妖精たちの言葉を思わず繰り返すと、頭を抱えたアルは思いっきりため息を吐いてしまう。
「で、でも妖精さんたちが大丈夫って言うなら大丈夫じゃないかな?そんなに心配しなくても…」
「まぁオレも妖精がお前を傷つけようとするなんて思っちゃいねぇよ。だけどコイツら相当な気まぐれでいろいろ雑な部分あるだろ。」
「それは…うん。あるね。」
「とにかくそんな奴らが楽園って言うほどの場所だったら実は一度行ったら二度と戻ってこれねぇとか、その里に滞在すると魔力がねぇモブの身体に実は負担がかかってたとかそんなオチがあっても可笑しくねぇと思ってな。」
「そ、そんなことが……!?」
「あくまで仮定の話だが、どうなんだテメェら。大丈夫なんだろうな?」
『モー!心配性ダナー!!』
『全然平気だモン!!………ダヨネ?』
『多分大丈夫だったハズ!!!』
『平気平気!多分全然平気!!』
どうしよう、急に不安になってきた。
曇った私の表情を見てある程度察したのか、アルは私に向き直り口を開く。
「下調べが必要だな。」
「でもどうやって?」
「幸いなことにこの村には王都騎士団長がいるじゃねぇか。アイツならもしかしたらなにか知ってるかもしれねぇ。まぁ本当ならその誓いの里出身の奴でもいてくれたら一番手っ取り早いが仕方ねぇよ。」
「そうだね。そんな珍しいところ出身の人、身近にいるとは思えないよなぁ…。」
『ウーン、出身といえばエドワードだけド、それ以外はいないヨ?』
「だよねぇ、お父さんぐらいだよねぇ。」
「は?」
「………ん?」
あれ?今、なんて言った?
声が聞こえてきた方向にギュルンッと首を回し、慌てて再度問いかける。
「エ、エドワードってさ…私のお父さんだよね?ん?あれ?お父さんって…誓いの里出身なの?」
『ウン、ソウダヨ!!』
『レイちゃん、知らなかったノ?』
「そ、そんなばかな……!!!」
身近も身近、まさか身内にいるなんて。
「お前、家族の出身ぐらい把握しとけよ……。」
衝撃のあまり口が開いてしまった私に、アルは正論を言い放つ。
そう言われてふと思い至るが、よくよく考えると私は両親の過去を全く知らないのだ。
(今まででも充分幸せだったから気にしてなかったけど、それって結構おかしくないか?)
「とにかく、それならお前の親父さんに詳しい話を聞けそうだな。良かったじゃねぇか。」
「う、うんそうなんだけど…。」
「あ?どうした。」
「いや、私に全く言わなかったってことはお父さんにとって言いづらいことだったりするのかなって…。」
「…まぁ、その可能性はあるだろうな。」
「……………アル。」
「なんだよ。」
「一緒に来て。」
「いやなんでだよ!!」
「だって不安なんだもの!!今まで実の娘に言わなかったことをそう易々と聞いていいものか!!?お父さんの心の傷を抉ることになりやしないか!?」
「だったら尚更オレはいない方がいいだろうが!!赤の他人に聞かれたくねぇだろ!!!」
「それなら玄関まででいいから!!もし嫌なら私の部屋でお茶好きなだけ飲んでていいから!!最悪隣で手を握ってくれるだけでいいから!!」
「要求具合がどんどんエゲツなくなってるじゃねぇか!!!サラッと聞いてこいサラッと!!」
「お願いぃいいい!!アルがそばにいてくれればそれだけで勇気が出てくるの!!アルがいてくれないと不安なの!!」
「っ、お、お前よくもそんな恥ずかしいことを…!!!」
「お願い!!アルにしかこんなお願い出来ないの!!」
「う、うるせぇ!!!お願いって言えばいいと思ってんじゃねぇぞ!!」
そう叫んだアルに祈りを込めて全身全霊でしがみつくと、彼は揺れていた金色の瞳を隠すように固く目を閉じた。