第2話 新たな仲間
「正直ですね。正しいとは分かっていても、人を手にかけるのはちょっと来ます」
二一は話した。今回のルフトとの戦闘で、最後のけじめをつけるために、レンスを手にかけたことを。
これまで大きな戦闘があっても、ドゥンケルハイトを使って適正を剥ぐだけにとどめ、人を殺したことがはじめてであることを。
「ご主人様がそこまで気に病まれるとは思っておりませんでしたのでございます。しかし冷静になってみれば、ご主人様は17歳。しかも、お話いただいたことを聞くと、平和な世界で、人が人を殺すことが当たり前ではない世界。当然ではあるのですのでございます」
「何なら、わしがレンスにとどめを指してもよかったのじゃが」
「それはけじめの問題があるのでダメです。俺にはレンスを倒す義務があった。あいつの持っていた国宝を手に入れるためと、レンスが生きている限り、ルフトの国民があきらめないという問題があったんです」
「…………、ご主人様、大丈夫ですか」
「大丈夫になるまでは、ちょっとあいつらから離れておこうと思ってここに来たんだ。ピッキーも弱ってるし、いる間くらいは頼りにしていいって言っちまったからな。俺が不安定じゃあいつも心配する。ほかのやつもそうだしな」
二一は偏屈だが、基本的に理にかなっていないことは嫌いである。エドワードがいなくて、落ち込んでいるルナルデッタを慰めた以上は、立ち直るまで協力するつもりだったし、一緒に来た召喚者も、なんだかんだでぶれない二一と歩を見て安心していることを彼は察していたので、自分がぶれるのは、後々問題を面倒にするとわかっていたのだ。
「……ふん、甘いわね。同じ種族同志でも、意見が合わなければ殺すことなんてあり得ることよ」
「サリアンか。何お前話に参加してんだ?」
フレードリクの影から、サリアンが顔を出して、二一に嫌味をいった・
「何呼び捨てにしてんのよ? お父様には敬語なのに」
「俺が敬語を使うのは、相手に対して敬意を持ってる場合だけだ。お前にはない」
「なんですって! 仮にも最強の竜人族に何て言い方をするの!」
「最強の竜人族の癖に、あっさりルフトの手ごまにされてたのはどいつだ?」
「キーっ! 助けてもらって感謝してたのに、何てむかつく奴!」
「感謝? へー、感謝してたのか」
「あ……。か、勘違いしないでよね。自我を失ってたところを助けてもらって、ちょっと嬉しかっただけなんだからね」
「微妙に否定しきれてないぞ」
ツンデレになり切れていない。へたくそである。
「別に心配とかしてないんだからね。人を殺したことを気に病んでるみたいだから、ちょっと自分にも責任んがあると思って気になっただけなんだからね」
「心配してくれてんのか。悪いな」
「あ、頭を撫でるな~。撫でるな~」
二一は偏屈だが、鈍感ではない。サリアンが態度とは裏腹に自分のことを心配してくれていたことが分かった。だから、つい歩やクレアロッテによくやるような頭なでなでをしてしまった。
身長差が絶妙にちょうどよかったため、二一としても無意識に手を置くような形だった。
「きゅ~」
顔を真っ赤にして、もじもじし始めてしまった。
「おや、サリアン、お前そんな顔できたんだな。さては、助けてくれた二一殿に」
「ち、違うもん! お兄ちゃんたちみたいにナヨナヨしてなくて、かっこいいとか思ってないもん」
「…………思ってるんだな」
「…………思っているのでございますな」
フレードリクとジャンマリア。共に人間では考えられないときを生きる2人には、サリアンのごまかしなど聞くはずもなかった。
「まぁ少しゆっくりしていってくだされ。サリアンも喜ぶじゃろう。兄2人は外に出るのを嫌がるし、いい遊び相手になってくれ」
「べ、別にうれしくなんかないんだから!」
「お兄ちゃん。もっと話を聞かせてよ!」
「えーとな、俺ともう1人で2500人を一気に相手にして、この剣で無力化してやったんだ。そこからドルツはタニアに攻め込まなくなってきてな」
「かっこいいー。勇者みたいだよね!」
数日間、二一はレンスを殺したことを切り替えるために、マーク森林にとどまっていた。
フレードリクもジャンマリアも、二一に敬意は払ってはいたが、二一にとっては、ジャンマリアの扱いがやや雑とはいえ、共に年長者。周りに自分より年長者だけであれば、二一もちょっとした悩みを言いやすく、そして、サリアンが予想以上に二一になついて、兄のように慕い始めたこともあって、二一はだいぶ癒されていた。
「さてと。そろそろ戻らないとな」
「え、お兄ちゃん言っちゃうの?」
サリアンがすごく悲しそうな顔をした。
「お前な。ついちょっと前までは俺のこと嫌いみたいな感じだったろ。どんだけちょろいんだ」
「だって、人間との接し方よくわからなかったし。軽い女みたいに見られたくなかったんだもん」
「ったく。慕ってくれるのがうれしくないわけじゃないが、俺はいずれもとの世界に帰るんだ。あんまり俺に懐くと、別れるとき面倒になるぞ」
二一はタニアでもかなり人気があったが、できるだけ関係は深くしないようにしていた。
二一はこの世界に残るつもりも、元の世界にこっちでの知り合いを連れていくつもりもなかったからだ。
「……この後って、四天王と戦って、魔王とも戦うんでしょ。私も協力できないかな? 私はお父さんほどじゃないけど、結構強いよ」
「強いのは知ってる。えげつない攻撃くらいかけたからな」
「それについてはごめんなさい」
「……いてくれたら楽だろうが、フレードリクさんが許さんだろ」
「いや、そんなことはない。サリアンを連れて行ってくれてもかまわない」
二一が断ろうとすると、フレードリクがまさかの許可を出した。
「いいんですか? せっかく行方不明だったの娘が戻ってきたのに」
「もともと家出の原因は外の世界を求めるサリアンを無理にここに押しとめたことがはじまりだ。たとえ短き間でも、サリアンの希望をかなえたい。それに、二一殿のことは信用しているようだ。それに、戦力としても、サリアンは協力できると思う。もうテレパスはしばらく使えぬし、この先サリアンがいれば、戦いに有利ではある。頼む。サリアンを連れて行ってやってくれ」
「フレードリクさんが言うなら。いいのか。もう残りの旅も少ないし、外は面倒だぞ」
「いい。お兄ちゃんと一緒に冒険して、恩返ししたい」
「はぁ。まぁいいか。あの攻撃力は魅力的だ。一緒に来るか」
「わーい、お兄ちゃん、ありがと」
「ご主人様のハーレム計画が順調でございますな」
「誰がハーレムを作ってんだ」
「いえいえ、元気になられたようで安心いたしましたのでございます。頑張っていきましょうでございます」
こうして二一の旅に新しい仲間が加わることになった。




