第12話 彼の願い
「いや、私はもうこれでいい。降参だ」
レンスのもとにたどり着いた二一達を待っていたのは、レンスの無条件降伏だった。
「どういうつもりだ? なんか手があるんだろう」
「いや、ない。完全な幸福だ。お前の望んでいるこの国宝も渡そう」
そして、二一にルフトの国宝を渡した。
「……、どうしてだ。まだ戦力はあるはずじゃ……」
「いいや、すべてのドラゴンがお前らによって倒された。そして、今回戦った人間は全員、平地での戦いができない。つまり、戦力として数えることはできない。だから、私が降伏することを全国民にさきほど話した。だから、ルフトはこれで終わりだ。後はラルフの意向に従う」
「なんでそんなにことが簡単に進むんだ? このもめごとはずっと長かったはずだろ」
エドワードが悩んでいた通り、ラルフとルフトの問題は何年も揉める大きな問題だったはずである。
「私はずっとルフト国が好きだった。確かに貧乏だが、国民が国民同士に思いやりがあり、この国を出ていこうとしている人間も全然いない。だから、この国を愛していた。しかし、ほんの一部の人間が、豊かな生活を求めるがために、国が厳しいのに、戦争ばかりして、かえって苦しくなることを繰り返していた。
私は父上や国民を見てなんと愚かかと思っていた。だが、私がどのように思っても、国民が納得するはずもない。だから、私は結局父親と同じでいなければならなかった。だから完全な敗北をしてもらうことをどこか望んではいた。だからこれで終わりだ。後は私を殺してくれれば解決だ」
「……言いたいことは分かった。しかし、無条件降伏をしたあんたを俺が殺すのはできん」
「……俺を殺さないと、また復権の可能性があるぞ。私は兄弟がおらぬし、子供もおらん。つまり、私が死にさえるれば、この国には国宝を使える正当後継者はいなくなる。そうなれば、この国は単独で王国の形を成さなくなるから、結果的にラルフの加護を受けることになる。それでエドワードの望んだ連合国になるさ」
「…………」
「……俺はこの世界に来てから誰も殺さなかった。だがここはあんたを俺が殺すのがけじめだな」
「……二一ちゃん……」
「悪いな。いろいろやってるが、さすがに人を殺すのは初めてだ。悪いが、お前らは下がっててくれ」
二一を気遣い、ほかのメンバーはジャンマリアを残して全員その場を去った。
「確実に殺すために、電気でしびれさせてから、剣で殺す形にする。やったことがないから、きちんと殺せないと悪いからな」
「……最後に、あの姫様に、エドワードのことは謝っておいてくれ。そして、ルフトの国民のことを頼む」
「こっちからも1つだけだ。なんで魔物と手を組んだ?」
「……魔物と手を組めば国民から私が失望されると思った。そして、私が追放されればいいと思ってしまった。しかし、国民は私を信頼した。ただそれだけだ。心配するな。私個人しか魔物との付き合いはない。私が死ねば、魔物も手を引くだろう」
「……悪いな。あんたも被害者だったか」
「私に国民すべてを説得できる力があればな。いや、これ以上は語るまい」
「…………あんたの死を無駄にはしない。エドワードさんの死も無駄にはしない。それだけ約束はしておく」
「安心した。それではな」
そしてこれ以上2人は何も語らなかった。ただ、二一がこの戦争にけりをつけたことだけは確定した。
「戦争は終わりました。わが息子エドワード、ルフト国王レンス殿。2人の命が失われました。しかし、2人の望みは同じでした。ラルフとルフトが平和であること。ただそれを望みました。しかし、わが国では利権のために、ルフトをないがしろにしていた責任もあります。しかしルフト国も王の意思をくみ取れず、お互い話し合いという結果にならなかったこと。これは恥ずべきことです。2人の王の尊い命に誓い、タニアと協力して、ルフト国も満足した生活ができる国にすることを誓います」
エドワードの父であり、王であるニコラスが演説をラルフとルフトのちょうど国境沿いで行われた。
圧倒的なカリスマを誇る王の死は、ラルフでもルフトでも大きな衝撃を与えたが、彼らの影響力は死後なお強かった。
あの2人の願いをかなえるため、ラルフとルフトの関係を少しづつでもよくしようという穏健的な意見が多くなることになった。
まだまだ時間はかかるであろうが、もともと1つの国であったラルフとルフトがまた手をつなぐ未来への第一歩を踏み出したともいえた。
ラルフ&ルフト編 完




