第10話 フレードリク
「プチ狐。今回だけはちょっと無茶を頼むかもしれない」
「お構いなくでございます。今回の戦いは命懸でございます」
「わ、私は後ろから援護をしてればいいんだね……」
巨大ドラゴンが空中を旋回している中、さきほどの激闘で残っていた氷の柱に二一、二一の肩にジャンマリア、少し離れた低い氷の柱に里香が待機していた。
「ああ、あんたは炎には強いんだろ。直接的な攻撃だけは受けないようにしといてくれ」
「ご主人様! 来ます!」
先に仕掛けたのはドラゴンだった。
二一を視界に捉えると、少し息を吸って、炎を吐いた。
「ちっ」
その息を吸うモーションと顔の向きで方向はわかったため、すぐに大きく動いて余裕を持って炎を回避する。
「おおう!」
その炎は二一や里香から大きく離れた位置に向かって、空のかなたへ消えていった。
しかし、明らかに違うところへ炎が向かったのに、その威力が高すぎるのか、衝撃波が回りを襲って、二一や里香がバランスを崩しかける。
「デタラメだろ。炎が真っ白というかさ、あれ食らったら熱いとかどうとかじゃないぞ」
さすがの二一も冷や汗をかいたが、すぐに攻め込もうとした。
すぅ……。
「!?」
しかしまた小さく息を吐く音が聞こえてきたので、攻め込むのをやめる。
あの威力ではかすっただけでも致命傷になる。
しかもドラゴンの形状が蛇のような形をしているため、前後左右へ顔を動かすのが早く、回り込むのも難しい。
さらに言えば、あれだけの威力の炎をここまで連続で出せるということもわかった。つまり、単純に隙を見つけるのは難しいということだ。
「えい!」
しかし、その炎を吐く寸前、里香がうまく攻撃をあてて、一瞬だがドラゴンは二一を見失った。
「ナイスだデッカー」
その隙を見逃す二一ではない。一瞬でドラゴンの背中を捉え、ドゥンケルハイトを闇属性にして突き刺す。
キン!
「!? 硬い!?」
グルルルル。
ドラゴンは背中への気配を感じて振り向き、自らの長い胴体をムチのようにしならせて二一を攻撃しようとした。
間一髪で二一は回避したが、攻撃が効かなかったことに、驚愕していた。二一はこれまでの戦いで苦戦したことが無いわけではないが、国宝の中でも攻撃力に優れるドゥンケルハイトを使って、相手に攻撃が当たったのに、効かないということはなかったためだ。
「これは……、魔物のドラゴンではございませんね。これは亜人の竜人族でございます」
「プチ狐? どういうことだ?」
「一般的な魔物のドラゴンは、速度、耐久性に長けるものと、攻撃力に長けるものの2種類に分かれますが、あのような両方に長けるドラゴンは見たことことがありません。そして、蛇状のドラゴンは覚えがありませんのでございます」
「…………、そういえばフレードリクがドラゴンの亜人の生き残りはほぼいないって言ってたな。すると、もしプチ狐の言う通りだとすると、もしかしてあいつはサリアンっていうやつじゃないのか?」
二一はタニアを出るときに、フレードリクさんから娘のサリアンが行方不明になっていることを聞いたことを思い出した。
「あの人は戦い嫌いそうだったから、これは使うつもりなかったけど、ここはいいだろ。仮に違っても、ドラゴンにはドラゴン。多少は話になるだろう」
「ククク、さすがの二一もあのドラゴンには対処のしようはないようだな」
レンスは竜の後方で自らも自身の愛竜にのり、国宝を構えていた。
「あいつのそばにはあの狐人族がいるからな。この攻撃は確実に当てないと、隙をつかれる」
彼の持つルフトの国宝は、攻撃力は高いが、攻撃後の膠着が長く、隙が大きい。
あまりドラゴンを暴れさせるのは、ルフト国そのものが荒れる危険性もあるので、ほどほどにして、二一を倒すのが彼の目的であった。
「テレパス」
ゴォォォォォ!
二一が唱えると、二一の左手の紋章が消滅し、そこから大きなドラゴンが現れた。ルフトにいた竜人族と同じく、蛇状、しかし大きさは一回り大きな竜であった。
『二一殿、まさかあなたが私を呼ぶとは、よほど危機であると察した。そして相手は……」
「フレードリクさん。簡単に言いますけど、あのドラゴンって竜人族ですか?」
『何? おおう、サリアンではないか。二一殿、わざわざ見つけてくれたのを報告してくれ……』
ゴォォォォ!
『ぬわっ!?』
フレードリクが二一に振り向いて話しかけていると、協力な炎がフレードリクの背中に直撃した。
「大丈夫ですか?」
『びっくりしたぞ。きちんと探さなかったから、反抗期か?』
「のんきなことを言ってないでください。あのドラゴンがルフトの王の味方をして、俺たちに攻撃してきてるんです。それで、プチ狐が亜人の竜人族じゃないかって言ったので、あなたに来てもらったんです。しかし、さきほどの反応を見る限り、どうやらあのドラゴンは、竜人族でしかもあなたの娘であっているようですね」
『ああ、その通りだ。しかし、なぜサリアンがルフトの味方などを……』
「それを確認するためにも協力してください。何か違和感や違うところがあれば教えてほしいです」
『任せよ。森を助けてもらい、娘を見つけてもらった恩に報いねばな。もう戦うことなどないと思った負ったが、娘の行為はわしの責任でもある。二一殿、協力させていただこう。わしに乗って一緒に戦ってくれ』
「はい、俺にとっても決着をルフトとつけるための戦いです」
二一はフレードリクに跨り、空中での戦いに向かった。




