第4話 空中戦
「くっ! 攻撃が届かない!」
兵力だけならドルツに来ている味方の方が多い。
だが、侵攻してくる相手の半分近くは竜に乗っている。空からの攻撃は向こうからは届いても、こちらからは届かない。兵力が多ければただの的であり、戦況は不利を極めていた。
「頼むぞ! 魔法部隊」
その中で気をはいていたのは、エドワード率いる魔法部隊。魔法は相手が遠くても届き、ドラゴンにはかなりダメージをきちんと与えている。
そのため、防御力の低い魔法使い部隊を守りながら戦うことになった。
それでも攻め込むを受けるしかなかったのである。
「耳折れとプチ狐がいないのが面倒だな」
二一の攻撃は十八番の拳銃が遠距離にむかないため、投擲中心になっている。
クレアロッテがいれば、すばやい動きで、ドラゴンの上を取れるし、ジャンマリアはいうまでもない。
だが、亜人への差別の強いトリアに亜人を連れて行くことは刺激を大きくすることになるので、二一は避けた。
「槍じゃ何もできないし……」
「俺のこぶしも駄目だ」
和美と順二も、近距離での戦いを専門にしていて、直接ドラゴンに攻撃できる手段はない」
「えいっ!」
「……えい……」
しかし、歩、里香の貢献はかなり大きかった。
シャインという光魔法は、ドラゴンのすばやい動きを封じ込め、遠距離でも攻撃できる里香の水魔法は、ダメージをきちんと与えていた。
「多すぎるよっ」
「はい……、これでは攻め込まれてしまいます」
だが、魔法部隊だけでは、ドラゴンの侵攻を全て抑えることはできていない。これ以上押し込まれれば、ドラゴンがドルツに入り込み、大きな被害を受けることになるだろう。
「ここは任してくれ! できれば使いたくなかったが!」
ここでエドワードが魔導書を1つ出す。
「それは何です?」
「フラムリーヴルだ。使うことはないと思っていたが、いったん進行を抑えないと劣勢になる! これを使うとしばらく私の動きが悪くなるが、何とかなりそうか?」
「このままじゃどうせ押される、お願いします」
「了承した!」
そしてエドワードは魔導書を開く。
するとさきほどまで晴れていた空に急激に暗雲が立ち込める。
その異変に敵味方関係なく違和感を感じつつも、事態が呑み込めず、動くことができなかった。
ゴォォォォォォ!
雲は広く広がり、その雲の隙間隙間に渦のような穴が開く。
「総員退避!」
そのタイミングで指揮官らしき人間の声が聞こえたが遅かった。
その隙間から大きな火の玉が無数に発射される。
しかもその攻撃はランダムではない。的確に空を飛ぶドラゴンを狙い、地上に到着する前に燃え尽きる。
これが国宝フラムリーヴル。威力が高いだけの魔法ならほかにでもあるが、ここまで敵だけを的確にとらえるのはさすがのものである。
攻撃が終わると、空を埋め尽くしていたドラゴンは約半数が落下し、残りも無傷とはいかなかった。
状況は一気に好転。動きの鈍くなったドラゴンは、歩、里香の格好の的になり、ドラゴン部隊は壊滅的なダメージを受けた。
そして、ドラゴン部隊はいったん引くしかなくなったのである。
「ふぅ……ありがとう」
エドワードは歩の回復魔法を受けて、何とか動けるようになった。
他のけが人もドラゴン自身には攻撃力がないこともあり、攻め込まれてはいたが、被害は小さかった。
「しかし、ドラゴンか。ルフトまで絡んでくるとなるとややこしい話になってしまった」
報告を受けてランドルフはまた頭を抱えた。
「正直あれだけの動きがあると、俺も対策しづらい。亜人の味方を連れてきてもいいか?」
「もう今更だ。責任はわしがいくらでも取る。こうなった以上はなんとしてでもトリアの安泰のために、ゴートン殿を助けてもらい、彼に就任してもらう必要がある。そのためなら、多少のことはわしに任せよ」
「わかった。じゃあ急いで耳折れとプチ狐を呼ぶ。それでいいな」
「あの2人はいい戦力になるねっ。一緒にいられてうれしいよっ」
歩は単純に仲のいい2人が一緒になれることで喜んでいた。
初戦はドルツ連合軍の勝利となったが、まだまだ安心できるわけではなかった。




