第8話 内乱(すぐに終わります)
「た、大変です! ロゼッタ国内でクーデターが起こりました!」
コロンバに兵士の絶叫が響いた。
「なんだと! ルナルデッタ姫は?」
「王城内にいるようですが、安否はわかりません」
「カトリーネ殿や、兵士は?」
「また出払っているところを狙われました! 主犯もわかりません」
その報告は、コロンバ南部にいる二一達の耳にすぐに入った。
「た、大変です! 早く助けに行かないとです!」
それを聞いて、真っ先にクレアロッテが反応する。
「ちょっと待て! 落ち着け」
だが、二一は落ち着かせる。
「ダメです! ルナ様が居なくなったら……、大変なことになるです!」
クレアロッテが珍しく本気で二一に反論する。
二一のことはもちろん本気で好きだが、ルナルデッタは、本当に自身のことを考えてくれる大事な人である。
居なくなることは考えられない存在だった。
「だから落ち着け。俺たちはここ最近ずっとコロンバとロゼッタにいたが、ドルツ人含めた怪しい人間が来た気配がなかっただろ」
「私もずっと見ていたが、そもそも出入り自体がなかったでございます」
「折れ耳。まずいときはまず冷静になれ。つまり現状ロゼッタにはタニア人以外はいないということだ。これはどういうことだ?」
「…………、内乱ですかです?」
「そうだな」
「ですが、内乱ならばなおさらルナ様は危険じゃないかです?」
「いや、今マリオとトマスだったか? その2人が今行方不明だろう。その状況で国のトップを殺害するのはリスクが大きい。このまま2人が見つからなければ、ドルツにタニアを攻めさせるための口実にさせるだけだ。だから、とりあえずあのビーキーは生かされている可能性が高い」
「でも、そもそも何故内乱が起きたです?」
「私が外をよく歩くようになったからでございます」
「どういうことかなっ?」
「お前も聞いとけ。全員で今の状況が起こったきっかけ、そして今どうするのか理解しといたほうがいいからな」
今この状況をある程度把握しているのは、二一、ジャンマリアで、多少わかってはいるが、冷静ではないのは、クレアロッテ。そして冷静だが、理解が追い付いていないのが歩。
別に自分の意見に自信がないわけではないが、今後こういうことが起こった時に、歩やクレアロッテも、状況判断ができるようになっておいた方が、二一が結果的に楽ができるから、丁寧に説明している。
毎回教えるよりは、ある程度システム化をした方が楽である。考えさせる癖をつける。
「つまり、これまで良くも悪くも、タニア国ではバランスが良かったんだ。と、いうよりは、少しこの折れ耳みたいに、こいつらが少し我慢してたと思うがな。だが、プチ狐が来た事でバランスが崩れたんだ」
「私はこう見えても、タニアの神のような存在でございます。ですから、いわゆる私たちが人間と共存することを良しとしていない人間も、さすがに私には悪態をつけないのでございます」
「それで、こいつがいる状況で、他の猫人族とかを悪く言ったらどうなると思う?」
「…………神様の目の前で、その神様の同族を悪く言うことになるんだよねっ」
「そうだ。だから、これまでほど直接的には、反他種族派が動けなくなったんだ。すると、その矛先が向かうのはどこだ?」
「えーと、マリアちゃんを受け入れたのは、二一ちゃんだけど、それはルナちゃんが隠してるから……」
「…………ルナ様がジャンマリア様を受け入れたように見えますです。人間と私たちが平等であるべきと常日頃言っていらっしゃるルナ様が、私たちに有利な方針を受け入れたように思えますです」
「確証はないが、ドルツが動けなくて、マリオもトマスもいないのに、反乱がおこるとすれば、理由がそれしかない。現状の不満が一部で爆発したんだろう」
二一の説明で、全員が状況を理解する。
「なるほどです。ですからルナ様は無事であるといえますねです。ルナ様がなくなられても、ジャンマリア様がいらっしゃっては意味がないです」
「だからおそらく今回のクーデターの目的は、ピッキーにプチ狐をグリッシーニに戻させることだ」
ロゼッタ王城内
「姫様。どうしても交渉に応じる気はないのですか?」
玉座の前には10人ほど武装した人間がいる。全員クーデターを起こした側の人間である。
「はい、あの方は既にご友人です。追い返すなど失礼ではありませんか」
「神様のきまぐれでしょう。帰れと言ったら帰りますよ」
今回クーデターを起こした人間は、ジャンマリアをルナルデッタが、他種族を守りやすくするために呼んだと思っていたのである。
だから、ルナルデッタが追い返せば、帰ると思っていた。
彼らは地位があまり高いわけではなかったため、ルナルデッタとジャンマリアの関係がどちらが立場上上かが、わかっていなかった。
そして、まさかジャンマリア側が、二一の思想、つまりルナルデッタの理想を聞いて自らロゼッタに来たとは思わなかったのである。
「しかもマリオ様とトマス様が行方不明です。このタイミングで、狐の亜人を呼ぶなど、もしかして、2人がいないのも何か関係があられるのでは?」
「失礼なことを言わないでください! 私達は思想は違いますが、タニアを守りたいという1点では共通しています! うっ」
「立たないでください! 自分の立場を弁えていないようで」
立ち上がって激昂するルナルデッタを思い切り押して座らせて、持っている槍で脅す。
「あ、あなた達こそ……、カトリーネ達が戻ったらどうなるかわかっていますの?」
「大丈夫です。亜人にとってあなたの存在の意味は分かっています。あいつらは簡単にあなたのために命を投げるでしょう。それに、王様もすでに拘束する予定です」
「お、お爺様はご病気なんです!」
「すぐにここに連れてくる手はずになっている。待ってな」
そういって、余裕の笑みを浮かべて、リーダーらしき男が再び背を向ける。
ロゼッタの玉座は後ろに壁しかなく、そちらは警戒しなくても大丈夫であるため、全員がルナルデッタに背を向けている。
(お爺様を誰か助けて……。ロッテちゃん達がいてくれれば……)
ルナルデッタはそう願ったが、厳しいことは分かっていた。
コロンバの南部からロゼッタの王城は遠くはないが、1日はかかる。
それに外の状況は分からないが、包囲されているとすれば、もっとかかるかもしれない。
「いえ、そんなにかかんないです」
「え?」
ルナルデッタはクレアロッテ達4人のことを思って一瞬だけ目をつぶったのだが、次に目を開けるといつの間にか暗い所にいた。
「あ、あなた達はっ!」
「落ちついてくださいでございます、ルナルデッタさん」
その聞き覚えのある声と、独特の話し方は彼女にはすぐにわかった。
声のする方に目を向けると、そこには小さな狐。ジャンマリアがいた。
「じゃ、ジャンマリアさん」
「まぁ余裕だ」
そして、自身を抱えているのは二一であった。
お姫様抱っことか、おんぶではなく、右の脇に適当に抱えていただけだったが。
「もういいか、降りろ」
「は、はい」
ルナルデッタはピンチを助けてもらうというなかなか乙女の憧れの状況を味わっているのだが、助けられる流れがあまりにも早いうえに、助けた人間の対応が淡泊すぎて、本人はあっけにとられているだけである。
「歩様とロッテちゃんは? それにここはどこかしら?」
そしてようやく言ったのは2つもっていた疑問を二一に尋ねた。
「ここは隠し通路らしい。ちょうどあんたがいた玉座の裏だ。プチ狐の瞬間移動でお前をここに連れてきた
他の2人は別行動だ」
「お、お爺様が王室にいるのです。助けてください!」
「そっちも大丈夫だ。マイナーと折れ耳が行ってる」
「おい! 姫様はどこに行った?」
そしてざわざわした声が聞こえる。
「じゃあさっさと逃げますか」
二一とジャンマリアはルナルデッタを連れて、奥のほうに戻る。
~少し前~
「と、いうわけで、城の後ろの山に来ましたのでございます」
二一たちは相談の話がおわるやいなや、一瞬でロゼッタにいた。
ジャンマリアの能力である瞬間移動である。
「ではもう1度瞬間移動を使ってくださいです」
「申し訳ないのでございます。長距離の瞬間移動は1日1回が限界なのでございます。後は、見える範囲でしかできないのでございます」
「どうされるんですかです?」
「だから落ち着けって。プチ狐は380年生きてるんだ。何か勝算はあるんだよな」
「もちろんでございます。ここに瞬間移動したのは意味がございます。この岩が動くのでございます」
そして念力で大きな岩を動かすと、階段が出てくる。
「な、なんですこれはです」
「隠し通路でございます。ここから玉座のすぐ後ろの空洞と王室2つにつながるのでございます」
「だったら、マイナーと折れ耳、あっちの王室に行って、ビーキーの爺さん助けに行っとけ。俺とプチ狐でビーキーを助けてくる。ビーキーは手を出されないだろうが、爺さんの方は分からん。怪我でもしてるとまずいから、回復できる2人が行ってくれ。こっちは任せてくれればいいから」
「了解です」
「うんだよっ」
そして二手に分かれて行動に移した。
「こっそりと入るです」
歩とクレアロッテは、二一たちと別れたあと、道を進んで王室についていた。
「よかったです、王様がご無事です」
クレアロッテは王が無事に寝ているのを確認する。
「誰も来てないみたいだし。とりあえず、ドアに魔法かけとこっ」
すると歩はドアに沿って杖を振る。するとドアの形と同じ大きさの白い壁ができる。
「それは何の魔法ですかです?」
「光の壁だよっ。これは中からは出れるけど、外からは入れなくなるんだっ」
「ここにいるらしいぞ! すぐに拘束だ!」
そのタイミングで、外から音がする。
「ぎりぎりでしたです。人数は4人だけですねです」
異常聴覚により、人数は見なくても把握できる。
ガン!
「ん? ドアが開かないぞ!」
「鍵がかかってるんじゃないのか?」
「鍵は開けたぞ」
「とりあえずぶっ壊せ!」
「剣が1人、斧も1人、2人は魔法使いですねです」
外から武器を出す音だけで、道具がなにかも判断する。
「その耳は便利だねっ。いつもモフモフしてるだったけどっ」
ガァン!
「よし突撃だ」ガン!
ドアが壊れた音がして、だれか入ろうとするが、今度は歩が作った壁に激突する。
「手は出させないです! シャー!」
そして怯んだ隙に、高速でクレアロッテが廊下に飛び出して攻撃する。
クレアロッテの速さは人間はおろか全種族でもトップクラス。一介の兵士が動きを読むことなど不可能に近い。
ドラゴンが相手でも真っ二つにできる攻撃力を持ってはいるが、大きく手加減して、武器を持てない程度に爪と牙で攻撃する。
一般的に猫人属などの種族は魔法は苦手だが、当たらなければ関係ない。
「応援するよっ」
クレアロッテが1人でも余裕があるように歩みには見えたが、万が一の事を考えて、強い光を出して目くらましにする。
下手に直接攻撃をしなかったのは、逆に彼女を邪魔してしまうからである。
この作戦は以前から二一を含めて話していることもあったので、クレアロッテは引っかかることはなかった。
ただでさえ強い2人に、不意打ちまでされては4人ではどうしようもなく、4人とも気絶させられた。
光魔法を使って、4人をきちんと拘束し、横の部屋に閉じ込めて、しかもそのドアに先ほどとは逆向きの光の壁を作る。
「バッチリだねっ」
「問題なかったです、あ、二一様に、ジャンマリア様、それにルナ様! ご無事でよかったです~」
そして王室に全員が集合し、ルナルデッタの無事を確認したクレアロッテが彼女に抱き着いた。
これで事実上勝負ありだが、二一と歩は一応決着をつけに、部屋の外にでた。
ちゃんと読み直したんですけど、間が空いたせいで物語の流れがいまいちつかめないのが辛い。
自分の作品なのに。




