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偏屈な召喚者は異世界でも変わらない  作者: 35
第3章 タニア亜人問題編
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23/104

第1話 グリッシーニでの出来事

グリッシーニはロゼッタの北部に場所がつながっている。


ロゼッタを北に行くとだんだん寒くなり、グリッシーニに入る直前になったところではもう既に暗くなっていた。


「ロゼッタの北はもうほとんど人は住んでませんです。もうここからは魔物が出てきてもおかしくないので気を付けてくださいです」


グリッシーニに今から入ろうとしているのは、二一、歩、クレアロッテの3人である。


グリッシーニには一応戦争をしに行くわけではないので、兵士は必要ないが、クレアロッテが自ら案内役を買って出たのである。



クレアロッテは小さい容姿とおっとりした性格からはわかりづらいが、意外に実力者である。


クレアロッテの能力は、二一が調べて分かった結果以下の通りになる。


クレアロッテ 17歳 レベル31


HP 1965/1965

MP 0

A  A(1302)

D   C(910)

MA G(0)

MD B(1004)

S  S(2154)

L  S(1944)


種族 亜人 猫人族

種族特性 暗視 異常聴覚 グルーシング

通常特性 危険予知 恒温 


『種族』


その生物の種族。人間における職業にあたるもの。


『猫人属』


スピードと聴覚が優れた亜人。体格は平均して小さいが、不意打ち性能と、危険察知能力は高く、見た目の愛らしさに反して戦闘能力はかなり高い。

爪と牙を主に使う。脚力も高いので蹴りもつかえる。


『種族特性』


人間における職業特性。最大3つある。ただし同じ属でも異なる場合はある。


『個人特性』

人間における特殊能力。


『暗視』

視界が悪くても、通常通りものが見える。命中率が落ちない。


『異常聴覚』

遠いところの音が聞こえる。複数の音が聞こえても聞き分けられる。


『グルーシング』

自分を含めた対象者の体力を回復したり、状態異常を治したりする。ただし、自分以外に行う場合は、お互いに高い信頼関係がないと、効果は大幅に落ちる。また、本人の調子が悪いと効果が落ちる。


『危険予知』

戦闘時、非戦闘時どちらも、危機に陥る前にわかる。ただし、どのようなことが起こるかはわからない。


『恒温』

とにかくあたたかい。周りの気温、気候に行動が影響されない。触っていると恒温の恩恵を触った人も一定時間受ける。精神安定効果もある。



「だからあったかいんだよねっ」


能力を調べてみるとレベルも高く、能力もバランスよく、特殊能力も索敵向き。亜人はやはり平均的に強い。


道案内役としてはかなり適役であるといえた。


そして、恒温の能力を聞いてから、歩がクレアロッテを離さない。


「に、二一さんも触れてくださいです。寒くなりますからです」


「おい折れ耳を下ろせ。俺もそろそろ寒い」


「じゃあロッテちゃんを間に挟んで手をつなごっ」


「それじゃ動きにくいしな~。折れ耳、どうする?」


「あ、私にしばらく触れてくれれば、恒温はつきますです。歩さんはしばらく触ってくれていましたので、二一さんも少し触れていてくれれば、いいですです」


「むー、そっかっ。じゃあはい二一ちゃん」


そう言ってクレアロッテの腰をもって二一に差し出す。


「……手を握るだけじゃだめなのか?」


「えっと、できますですけど、歩さんみたいにしっかりくっついてくれたほうが、早く準備できますです」


「そうか、じゃあさっさとやったほうがいいな。来い」


二一は効率を重視して、クレアロッテを歩から受け取って抱く。


「ふぅ~」


クレアロッテは胸に軽く頬ずりをして、服を小さな手で摘み、顔を赤らめて二一の腕に収まる。


「私も二一ちゃんにそうされたいなっ」


「お前は身長が165もあるんだぞ。軽いとはいえさすがに厳しいわ」


「やりたくないとは言わないんだねっ。なんかロッテちゃんにやさしくなってから、私にもやさしいねっ」


「仕方ないだろ……。折れ耳に良いって言って、お前にダメっていうわけにはいかんだろう」


二一は基本的には性格がよくないだけで、悪人ではない。不平等を嫌う彼はある意味ではかなり優しくもある。


偏屈さがそれを隠してしまっているだけである。要は二一が悪い。周りの人とコミュニケーションをきちんととっていないからである。結果として本人は困っていないのだが。


「んぅ……」


「おっと、悪い」


自然に抱いていたつもりだったが、耳を思い切り触ってしまい、クレアロッテが声を出す。


耳やしっぽは亜人はかなり敏感のようである。


「い、いいえ。大丈夫です」


「わ、私も撫でてよっ」


「頭か? 耳か?」


「え? いいの」


「何回も言わせんな。折れ耳がよくてお前は断れないって」


「じゃ、じゃあこの辺……」


そして耳の上にかかっている髪を指す。それをさわるとどう考えても耳も触ることになるが、いいと言った以上は断れず。


暗くて寒くて人気もないところで、なぜかいちゃいちゃ空間が生まれていた。



「はい、もう大丈夫です」


「ああ、寒くなくなったな」


「じゃあ私が抱きしめるね」


「もういい、話が前に進まん」


クレアロッテを二一が開放すると、また歩が抱きしめようとするので、歩のシスター服のフードの下のほうをつかんで止める。



「あっ、二一ちゃん。私を猫みたいにしないでよっ」


「頼むから帰ってからにしてくれ。俺もお前も弱くないし、折れ耳もまぁまぁ強いが、警戒しておいて損はない」


「一応私が危険予知で警戒しておきますですが、急なのはどうしようもないです。ここから先は暗いので私が先頭で歩きますですから、ついてきてくださいです」


そして、グリッシーニに3人は入る。


「ほんとに暗いねっ」


グリッシーニに入ってすぐに、雪が降り、地面はでこぼこして、坂も続く険しい道になった。


真っ暗でこそないが、薄暗くて周りが見えない。地面は全部荒野で、遠くには葉っぱが全く生えていない木が何本かあるだけ。


住む住まない以前に、1日泊まるのですら困難であるのは一目瞭然である。


ちなみにクレアロッテが先頭を歩いて、その後ろを二一が歩き、その横を二一の服の袖をつかみながら歩が歩く。


「ちゃんとついてきてくれていますかですかです?」


「ああ、大丈夫だ。なんかまずい敵はいないか?」


「今のところ危険は感じないです」


「どのくらい歩けばつくんだ?」


「もう少し行きますと、神道っていうところにつきますです。そこでジャンルカ様が謁見を許可してくだされば、自動的にジャンルカ様のいるところに行けますです」


「なんでそんな面倒なんだ?」


「グリッシーニは南部の10%をのぞくと、すべて狐人族の所持です。それで、毎日毎日移動されて、どこにいるかはわからないようにしていますです。狐人族は、瞬間移動の能力を持っていますから、神道に入った相手を選んで瞬間移動させているのです」


「狐人族は強いのか?」


「私たちが100年くらいしか生きないのに、150年生きるので、寿命が長いのは知ってますが、それだけですねで……」


「どうした?」


話の途中でクレアロッテが黙ったので、二一が疑問を持つ。


「危険予知です。たぶんリアラから魔物が流れてきてますです」


「どこにいる?」


「東にいますです」


「歩、東の方向に杖を振れ」


「あ、うん」


そう言われて、歩は杖を振って光魔法を発動させる。


グギャアアア!


すると、近くから魔物の悲鳴が聞こえる。


「わ! カメレオンドラゴンです!」


そこにいたのは、色が白色の竜の魔物であった。


「やっぱりか」


「2人とも気を付けてです。カメレオンドラゴンは……」


「わかってる。姿を透明にする能力があるんだろ」


「ご存知でしたかです」


二一と歩がここに来て約3か月、タニアに来てからも約1か月である。その間、情報をたくさん集めることに事欠かなかった。


もちろん、このカメレオンドラゴンの能力も知っていて、それをわかったうえで、歩に攻撃を打たせたのである。


「? カメレオンドラゴンが姿を消さないです!?」


魔法が直撃しつつも、全くダメージを受けていない敵が、姿を消すのをクレアロッテが警戒するが、その得意技を相手が使わないので、逆に困惑する。


「ふっふっふっ。さっきのはひそかに研究してた光魔法だよっ」


「何をしたです?」


「特に変な技を使ったわけじゃない。普通の閃光魔法だが継続時間を長くしたんだ。直撃した後、継続してダメージを与えられるようにな」


カメレオンドラゴンは正確にいうと姿を消そうとしているのだが、閃光が発動し続けているので、消しても姿が映ってしまうのである。


「威力は大幅に落ちるが、命中率、発動速度、発動時間をかなり長い。姿が見えればただの攻撃力の低いドラゴンだ」


カメレオンドラゴンは姿を消して奇襲を行うタイプなので、ほとんどの能力が普通のドラゴンよりも平均的に低い。姿を消せなければ、かなり不利になるのである。


「ありがとうございますです。ここは私に任せてくださいです」


そしてクレアロッテはチート級の素早さを生かして自分の何倍もの大きさがあるカメレオンドラゴンに接近する。



そして、驚異的な跳躍力で飛ぶと、首元まで届く。


そして、右手の爪が長く、そして鋭利な刃物のようになる。


ザクッ!! ザクッ!!


そして2回爪で首元をひっかくと、カメレオンドラゴンは首と胴体で真っ二つになる。


それは誰が見ても分かる絶命状態であった。




「ふぅです」


血の付いた爪を舌で舐めながら、二一達の前にクレアロッテが戻る。


すると歩がちょっと調子を悪そうにしていた。


「あ……、です」


「あ~悪いな、さっきの光景はちょっとこいつにはきつかったみたいだ」


ドラゴンが真っ二つになって、血をばらまき、クレアロッテが鋭く伸びた爪にこびり付いた血を拭く姿が、歩には刺激が強かったようである。


この歩の反応は普通であり、しれっとしている二一が異常なのである。


「ご、ごめんなさいです。私もお力になれるところをお見せしたかったのです」


助けられてばかりであった二一達に、自分の実力を見せたかったので、戦闘をしたのだが、それが歩を不快にさせてしまったことに後悔していた。


「あー、悪いな。俺がこいつを甘やかした」


二一はまだ戦闘で『人」を殺めていない。


それは殺すよりも、能力を消して残すほうが、中途半端に残って逆に相手が損をすると思ったからである。


そして、ダークツリーマンは攻撃するとそのまま消滅していた。


つまり、生物が生物を明確に殺すシーンというのは、二一達にとって初めて見る光景だったのである。


二一はその覚悟もあったので、気分がいいとは言えないが、元々図太い性格もあり、表情に現さなかった。


それ以上に、歩が思った以上の反応をしたので、それを気にしたのもある。


歩の図太さは二一に関連すること。いくら二一が問題児でも、殺しまではしないので、こういう状況にはさすがに耐性がなかったようである。


生臭い香りとグロテスクな光景を見て、嘔吐しなかっただけまだ彼女は図太いと十分に言えるのであろう。


「ご、ごめんねっ」


俯いて、泣き出しそうになるクレアロッテを歩が抱く。


いつもの楽しげな柔らかい抱擁ではなく、大丈夫であることを示す力のある抱擁だった。



「というか、折れ耳、そんなに強かったくせに、なんであんな人間に襲われてたんだ?」


歩が落ち着くまで、少し休憩をすることになった。それまでに恒温の効果が切れないように、初めにあった提案の通り、クレアロッテが歩と二一を両手で触っている。


「それはわからないです。ただ、襲われた時に、急に体がこわばって動かなくなったです」


「あ、悪い。いやなことを聞いたか……」


話を逸らそうと思ってなんとなく気になっていたことを聞いてしまったが、よく考えればクレアロッテにとってはトラウマになりかねないことのはずであった。


「い、いえです。確かに怖かったですが、あれは初めて二一さんに助けてもらった大切な思い出です……。結果的には襲われていないですし、あれがなければ、二一さん達と話せるきっかけがなかったかもしれないですから……」


そこまで言って、自分がものすごく恥ずかしいことを言ったことを自覚したのか、顔を逸らした。


「はぁ、俺の何がそんなにいいんだ?」


これはかつて歩にも聞いたことがある。


二一には、自分がひねくれものである自覚はないわけではない。


それだけに、自分がだれかが好かれることは考えられなかった。


歩にも何度か聞いたが、彼女は付き合いも長いし、世界に1人くらいは自分を好く人がいるのもまぁありえるとした。


だが、2人目ともなれば、二一の疑問は増える。それにクレアロッテは、1度助けただけで明確な好意を示してきた。

だから、自分を好いているというよりは、初めて親しくなれた人間の男性を好いているのではないかと思っていたのだ。


「二一さん、それは違いますです。確かに初めはあなたが助けてくれたことへの御恩もありましたです。でも二一さんを好きになったのは、二一さんの考え方がお好きなんです。私たちのことを嫌う人はいますですけど、逆に好いてくれる人もいましたが、好いてくれる人も、区別はするんです。ルナ様に協力されている方も、やっぱり人間と私たちを違うものとして見てますです。でも、二一さん、あなたはルナ様と同じで、私たちを人間と同じように見ていただいてます。私が城下町を案内したときのこと覚えてらっしゃいますかです? 歩さんが言われてましたが、二一さんは私を守るためではなく、理に合わないことを言っていることが嫌で怒られたんですよね? それを歩さんから聞いたとき、二一さんは私達を同列に見ていただいていると思いましたし、その後皆が絵空事と言って笑うルナ様の夢を、認めてくださいました。ですから、私はあなたのことが大好きになったんです」


それはたまに歩が二一に見せる、一切の不快さがない純粋な愛を示す言葉。


歩の言葉を拒否していない以上、二一はその言葉を受け止めるしかなかったのである。


ただ単に自分が気に食わないから怒る。まさかそんなことが理由で好かれているとはさすがの二一も気付けようがなかった。ここが学校ではなく、差別意識のある異世界であるからこそ咲いた恋愛の花であったといえよう。


寒くて暗い世界で、そこだけは暖かさを感じられた。


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