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偏屈な召喚者は異世界でも変わらない  作者: 35
第2章 タニア入国編
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第7話 防衛戦

バトルシーンですが書くのは苦手ですので、さらっと終わらせます。

「カトリーネ様、ただいま姫様に連絡できますか?」


二一達が王室で話しているころ、外で待機しているカトリーネに兵士が焦って連絡を持ってきた。


「何があった? 私が取り次ぐが?」


「はい、実は……」




「ルナ様! 緊急連絡です! コロンバの北部の防衛ラインが破られたそうです!」


「何ですって!」


その急の知らせは、すぐにルナルデッタの耳に入った。


「どうして? まだ前回ドルツ国が侵攻してきてから、そんなに間がないはずよ」


「わかりません! ですが、今回はクエストを受けた人間が侵攻してきたのですが、今回はアインバックの正規兵の姿があったそうです」


「油断してたわ……、クエストの場合はある程度頻度があるから、間が決まってるって思い込んで、私が対策を立てなかったから……」


「兵を集めるのも難しいですね。私の部隊のメンバーは前回のクエストでの療養でマーク森林に戻っておられますし、ルナ様の部隊はその護衛に行かれています。どちらも本日中に集めるのは難しいかと思われます」


「そうね……とにかくみんなを集めて。すぐに対策を練るわ」


大きなテーブルのある会議室のような部屋には、ルナルデッタ、カトリーネに加え、部隊長、大臣など要人が集まっていて、緊急会議をしていた。


「本日さえ乗り切ればいいです。そうすれば私の部隊を大急ぎで戻します」


「何を言っている。相手が本気を出してきたなら、こちらも特攻覚悟で行くべきです!」


「ここはマリオ様かトマス様に協力を仰ぎましょう」


「ダメだ! そんなことをしたら、反亜人派の意見を強くさせてしまう!」


「しかしロゼッタが落とされたら元も子もないだろう」


そこでは全く意見のまとまりがないままで、なかなか前に進まない。


「ごちゃごちゃ言ってないで、とりあえず選択肢を示せ。そこから消去法で決めればいいだろ」


この会議には、二一、歩、ルナルデッタも直接参加はしていなかったが、横で見学程度に見ていた。


だが、じれったい様子に二一が口を出してしまい、ざわざわしていた会議室がしんとなる。


クレアロッテは驚いていたが、歩がノーリアクションであった。


「なんだと、大事な会議に関係のないやつが口を出すとは……」


「関係あるとかないとかそういう問題じゃない。今のままじゃどう考えても決まらないだろう。誰かが意見を出したらそれを否定ばかりして。おいピッキー」


「は、はい!」


姫と呼ばない挙句、ため口で話す二一に対して、さらに冷たい目線が飛ぶ。


「さっきまで出た意見で、あんたが1番ましだと思うのはどれだ?」


「そうですね、お兄様への協力は私もできれば避けたいですし、特攻も避けたいです。ですから、なんとかロゼッタの直前で食い止めていただくのがいいです。ですが、それができるだけの兵士がいないので、事実上の特攻になりますわ」


「でしたら、私が残りの兵を引き連れて行きますよ!」


「カトリーネは駄目! もちろんここにいる誰も……」


「ですが! 誰かは無理をしないと!」


ここに集まっている要人は、全員がタニアにとって重要であるとして、ルナルデッタが選んだ人材であり、反亜人派への流出も目立つ中では、誰か欠ければ代わりがいないのももちろん、さらに亜人派が厳しくなることこの上ない。


それに、批判の多い自分に協力をしてくれているということで、実力的なものだけでなく、人としても大切であるため、そうしなければならないとわかっていても、誰かに無茶をいうことはできなかったのだ。


カトリーネが自らそう言ったのは、ルナルデッタがそう思っていることを察してのことだった。


「まぁとにかく、ロゼッタの南部で誰かが無理をしてでも食い止めればいいんだな」


「はい……、まさか!」


ルナルデッタは二一が言おうとしていることを理解した。


「俺とこいつが、食い止めてやるよ」


その二一の発言は、さきほどとは逆でざわつきが大きくなったが、もともとタニアに関係のない2人が戦ってくれるのであれば、タニアにはデメリットが大きくないということで、意見が決まり、会議は終わりとなった。


「待ってください! あなたたちにそんな無茶をさせるわけには……」


「勘違いするな。これは俺のためにやることだ。ロゼッタを落とされたら、ようやく見つかった情報が、また遠くなる」


「…………」


「それにあんたの理想に乗るって言ったんだ。だったら、そのためには協力してやる」


「!!」


ルナルデッタははじめ冷たい態度の二一に怖気づいたが、その後の言葉を聞いて、はっとした表情になる。


「まかせといてっ。二一ちゃんのいうことは絶対に正しいから。任せてくれればいいから」


そして笑顔で信頼を寄せる歩を見て、なんとなく信頼を見せてしまった。


「あんたは姫だろ。そして正しい判断を下せてると思うなら、任せてくれ、あんたは最後の責任だけとってくれればいい」


「厳しいですね。その責任が1番大変なのを知ってて言っているでしょう。ですが、それだけの自信があるのならお強いのですよね、異世界のお2人方、お願いします。1日だけで結構です。大変そうであれば

、絶対に無理はなさらないで……」


そして二一と歩は、たった2人でロゼッタの南部を守ることになった。









「へっへっへ。いいタイミングで奇襲が決まったな。これで、亜人やタニアの人間をものにできるな」

「タニアの人間は美人が多いですし、亜人も美形ぞろいですもんね。いい部隊に入れましたよ」

「しかも、ロゼッタへの道を切り開いたんですから、出世も間違いないですね」


コロンバの防衛ラインを守っていたのは、約800人、それに対して2500人の兵士で攻め込んでいたので、簡単に落とすことができた。


「裏切り感謝しとくぜ」

「いえいえ」


その中には、髪が緑色の人間もいた。コロンバを守っている人数とロゼッタが今手薄なことがドルツにばれたのは、裏切り者がいたからである。


「この関所を越えれば、ロゼッタです」


緑髪の兵士が先導して、コロンバとロゼッタの境まで来る。


「あれ? 警備が薄いだけではなく、いつもいる守備兵すらいない?」


その兵士はほとんど人がいないそこに不信感を覚えた。


「すでにロゼッタ城で籠城作戦か、あるいは、ロゼッタを捨てて逃げているか……、いずれにしても、簡単に攻め込めそうだな」


「いえ、隊長! 誰かいます!」


今から戦おうとは思えないほど弛緩した空気になりかけていたが、人影が見えて改めて引き締めなおす。


「ん? 2人だけか?」


しかし、また空気が弛緩する。目に入った戦えそうな人間は2人しかいなかった。


コロンバとロゼッタの間は、特に隠れられそうな場所もなく、奇襲をかけられそうな場所がない。


つまりあの2人はそれなりに実力はあるのだろうが、捨て駒として選ばれた可能性が高いと踏んだ。


「隊長、あっちのシスターえらく上玉ですよ。それにつけている道具もかなりいいです。それなりの実力者ではあるでしょうが、2人なら勝てるでしょう」


「そうだな。だが一応念を入れておくぞ。銃部隊と魔法部隊で、奇襲をかけて、一気に攻め込もう」


2500対2。これだけ圧倒的な有利な状況にあって、きちんと油断をしていないのは隊長は優秀であるといえる。


ただ、これだけ有利すぎる展開に、多少油断してしまったこと、そして、この2人がチートであることを知る由がなかったことは、攻めようがないことではあった。



「魔法と銃を放て!」


そして何の前触れもなく、遠くから魔法と実弾が2人に向けて放たれる。


砂埃が舞い、煙が上がって攻撃が避けられた様子もない。


そのため、ちゃんと確認をしないで、攻め込んでしまった。


煙がまだ上がっていて、視界が悪くなっていたのに。


ババババババン!


先行した200人くらいが、一瞬で倒れる。


「な、なんだ?」


その後ろにいた人間が確認すると、全員体をけいれんさせてしびれていた。


「いきなりたった2人にこんなに攻撃してくるとかひどいな」


「目に埃が入っていたいよっ」


そして彼らが見たのは、大量の銃弾と魔法を受けたのに、ダメージ以前に、汚れもついていない2人が立っている姿であった。


魔法と銃の大半は二一がサブマシンガンで撃ち落とし、残ったものは歩の光魔法による障壁で防がれていた。


たった1発も当たっていない。そもそも能力の差が、5倍以上差があるのだ。単純な攻撃は当たったとしてもまともなダメージにならない。


「い、いそいで追撃しろ!」


その光景を見て、隊長が焦った。どうやったかは分からないが、相手が普通ではないことを察したのである。


また同じように攻撃が当たり、今度は砂埃や煙が立ち消えるまで待つ。


「もー、髪が汚れちゃうっ。今度は私が行くねっ。たぁっ」


今度は歩が杖を振ると、光が拡散するように飛んで行って、遠距離から魔法と銃を撃った300人が全員気絶する。


「い、いかん!」


「逃がさん」


そしてマシンガンを放つ。今度は氷の弾が飛び出して、500人以上が氷漬けになる。


ほんのわずかの間に、1000人が戦闘不能になった。


「お下がりください、隊長殿。こういう時のために私の部隊がいるのでしょう」


「おお、そうだったな。まさかあなたの力を借りることになるとは」


慌てふためく若い兵士の中に、ひときわ異彩を放つ部隊があった。


隊長に話しかけた人物は、高齢で黒いローブで全身を覆っていた。


「ふぇふぇふぇ。あの2人は能力は高いようですじゃが、私の得意魔法を避けることはできませんじゃ」


実はこのローブを来た老人は、ドルツでも5本の指に入る実力者であり、二一達の能力はすべて鑑定で見ていた。


ただ、ここで彼にとって唯一誤算があったとすると、彼らが異世界人であることを知らなかったため、性格特性の存在を知らなかったことである。


鑑定は二一の情報通とほぼ同じ効果だが、わずかに違いがある。


鑑定は『自分の知りたいことを知る』能力なのであり、彼はステータス、特殊能力、職業特性、装備は確認したのだが、性格特性は確認しなかった。と、いうより性格特性は異世界からの召喚者しか持っていないので、相手が異世界人であることを把握しない限りはわざわざ調べないのである。


そのため、おそらくもっともやってはいけないことをやってしまった。


「貴様ら、覚悟せい! 皆の者、魔法を放て!」


その老人の魔法使いは、後ろについていた数十人の魔法使いに銘じて、魔法を詠唱させた。


すると、二一と歩の足元に魔法陣が発動して、その魔法陣がそのまま上に上がって紫色の霧で2人がおおわれる。


そして、その霧が晴れると、勝ちを確信したかのように笑う。


「ふぇーふぇっふぇっふぇ。これであいつらのA,D、MA,MDは0になってしまった。今なら勝てますわい」


「よし! 突撃だ!」


老魔法使いの言うとおりであれば、レベル1の民間人以下の能力となったはずであり、白兵戦でも余裕で勝てるはずであった。


「助かりました。あなたを連れてきてよかった」


「この魔法はめったに使えませんからね。多くの人数で詠唱しなければならぬ上に、範囲も狭いですが、相手が人間であれば決まりますからね」


「そろそろ終わりましたかね……」


「隊長殿? あ……」


隊長が2人の元を向いたときに見た光景は、攻めに行った人間が全員倒れている様子であった。


「な、なぜ……」


「わ、わかりませぬ! 間違いなく魔法は発動しておりますが!」


二一と歩には、ダメージ以外の効果が通らない(歩は戦闘時は、凝り性か偏屈を真似していて、原則は偏屈をつけている)性格特性の偏屈によりダメージ以外の効果が逆転している。能力を0にするということは、例えば、魔法を受けた人間の攻撃力が100であった場合は、攻撃力を100落とすという効果になる。


この効果が逆転したということは、二一を歩のA,D,MA,MDはマイナスではなくプラス扱いとなり、2倍となった。


つまり、彼らの能力はただでさえ強いものがより強くなったのである。


その場で、二一の拳銃と歩の光魔法により、隊長の部隊である100人と、老魔法使いの50人ほどのわずかを残して、全員戦闘不能になってしまった。


「こ、こんなはずは! タニアにこんな隠し玉があるなんて聞いてないぞ!」


「そりゃ教えるわけないだろう」


「こ、こんなのは……」


「あんたらはちょっと面倒だから、最近レベルの上がったこの剣を使わせてもらうぞ」


そして二一は、ドゥンケルハイトを繰り出す。


剣は黒色を伴い、上に掲げると、その黒色が空に向かって広がり、彼らの真上は昼にもかかわらずよる以上の真っ暗闇になる。


「ぎ、ぎゃぁぁぁっぁ!」

「ぐぎゃあああ!」


残りの150人はすべてその闇に飲まれ、ほかの兵士もそれに飲まれる。


「よし、これで終わりだな」


タニア国VSドルツ国、2対2500の戦いながら、2人が勝利する。だが、その戦いにおける死者は0人である。


だが、その後に彼らが第一線に復帰することはかなわなかった。


全員が以前と同じように武器や魔法を使うことができなくなってしまったのである。


その理由は、ドルツにいる優秀な魔法使いをもってしても、全く理解できなかったのであった。


















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