第6話 3階の試練 国宝の試練
「むー、さっきのやつ私全然活躍できなかった」
「……私もです」
「さっきの場合は、相手がコピー能力があったからな。ツン子のわけのわからん攻撃力と、耳折れの速度をコピーされたら困る。さっきの場合は、何もしないのがお前らの活躍だ」
二一はさっきの戦いに、歩、クレアロッテ、サリアンを参戦させなかった。
ジャンマリアがいても、受けるのに苦労したサリアンの攻撃力、速度だけなら二一でも対抗できない、素早さのあるクレアロッテ、そして、国宝を持ち、回復能力に長ける歩、この辺りをコピーされると、二一でも大苦戦は逃れられなかっただろう。
それもあって、和美と里香が先行して動いたのは、二一にとって都合はよかったのである。
「まぁお兄ちゃんがそういうなら」
「二一さんの言うことなら間違いないですよねです」
「二一ちゃんは間違えないからねっ」
ずっと黙っていた歩も笑顔で顔を振る。
歩は今回の戦いで、ほぼ手も口も出さなかった。
ずっと二一の後ろにいて、動きを見ていたのであり、二一が何かを言わずとも、彼の考えを察したのである。以心伝心である。
「お姉ちゃんはすごいよねー」
「二一さんとの付き合いが長いですからです」
普段もめやすい2人も、歩のことでは揉めない。彼女は二一のパーティの中でも少し上に見られている傾向がある。
「先輩、次こそは!」
そしてさらに張り切る和美。プラス思考である。
「……次は頑張って見せます……」
マイナス思考でも張り切る。里香である。
「誰がどこでどう活躍するかは、その場の状況次第だ。冷静になれよ」
「3階に来たな。さて次は」
3階に上がってくると、今度は大きく違う様子だった。
ドアがつあり、2つだけ離れたドアにはマークがなく、そのほかのドアには、1~7の数字が振ってあるあった。
「ドアに鍵が7つついてる……、ということは、そういうことかな」
「ドアに説明があります。入れるのは1人までみたいです」
「……えーと、1から槍、2に盾、3に魔術、4に斧、5に銃、6に剣、7に亜人と書いてあります」
「ここまで書いてあればなんとなくわかる。つまりそれぞれの国宝をうまく使って戦えってことだ」
「二一先輩! これなら俺も活躍できそうです!」
「……私頑張ります」
「この亜人の試練は私が行く!」
「私が行くんです」
明らかに活躍できそうな状況に、また2人が張り切る。
1つある亜人の試練は、クレアロッテとサリアンが取り合う。
「1度に入ると分らんから、個別に行くぞ。あと今回はツン子が行ってこい」
「やったー」
「二一さんが言うなら」
「すいません」
「……焦った」
一気に4人くらいドアに入りそうだったので、二一が咎める。
「まずは数字通りにしてみるか。プリンスやってみてくれ」
「先輩! わかりました!」
1のドアに和美が入る。
「さて、次の戦略を考えておくか」
内容こそわからない部分が多いが、3階ともなれば、これまで以上に大変な試練になることは予想できた。
「数字通りなら、盾の試練だから……」
「あのー若松先輩」
「ん?」
二一が戦略を立てようと全員を集めていると、和美が声をかけてきた。
「プリンス? ずいぶんはや……、ってボロボロじゃないか」
和美がドアに入ってから5分ほどしか経っていないのに、和美は数時間戦ったような姿で現れていた。
「和美さん! 大丈夫ですか!」
「回復するよっ」
里香がすぐに駆け寄り、歩が回復魔法をかける。
「大丈夫か?」
「これくらいなら……痛いだけですし……。ちゃんと鍵は取れましたよ」
右の握りこぶしから二一に鍵を渡した。
「ご苦労さんだ。じゃあ耳折れ。持っててくれ」
「え? 私がですかです?」
「耳折れ以外は戦闘の必要があるからな。鍵の管理をする必要がある。全く戦いに参加しないとすれば、耳折れかツン子だが、ツン子にそれを任せるのはちょっと心配だからな」
「わかりましたです! 管理は任せてくださいです!」
別に鍵を持っているだけなので難しいことでもないのだが、二一に明確に仕事を頼まれるというケースは珍しいので、クレアロッテとしてはうれしいようだ。
「プリンス、どうだった?」
「相手も槍使いでした。普通の槍では到底ダメージを与えることはできなくて、国宝の槍でやっとでした。一進一退の攻防でしたが、耐久制度にまさる国宝で倒すことができました。でもすいません、連戦は無理です」
「いや、十分だろう。とりあえず休んどけ」
和美は歩の治療を受けて、ケガと傷は治ったが、体力はかなり下がっていたため、すぐに眠ってしまった。
「さて、プリンスの戦いでいろいろ情報が入ったな。こっちとドアの中だと時間の経ち方が少し違うというのと、国宝がないとまともに戦うのも大変だってことと、相当体力を使うってことか」
「……若松君は大丈夫なの?」
国宝がないとまともに戦うのも大変だと考えると、国宝を3つ使える二一が3回戦わなければいけないことになるのである。
「まぁその辺はいいんだ。ちゃんと国宝を使えるプリンス達を連れてきて正解だったな」
「……私も頑張るから……」
そして、3階の試練を全員で攻略することになった。