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偏屈な召喚者は異世界でも変わらない  作者: 35
第10章 決戦編
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第5話 2階の試練  少し能力が高いことは強いということではない

和美と里香の攻撃がヒットし続けて、ここはさすがに二一の出番がないと全員が感じていた。


「……いやな予感がするです……」


しかしここでもクレアロッテの危険察知能力が発動する。


「どうした?」


二一がクレアロッテに聞く。


「あれだけ有効打が当たっているのに、あの魔物の気配がなくならないんです」


「気配?」


「要するに倒せている感じがしないんです」


ドーン!


「うぉっ?」


「きゃっ」


それから大きな爆発音が鳴って、和美と里香の悲鳴がした。


「お兄ちゃん、あれは」


魔物が持っていたのはフラムリーブル。つまり、里香の持っている国宝である。


和美はぎりぎりで槍で受け、里香はもともと火属性にたいしては圧倒的な耐性があるため、致命的なダメージにはならなかったが、一歩間違えれば危険だった。


「国宝だと!」


さすがの二一も国宝が2つになっている事実には驚いていた。


「少し能力を見誤ってたな。国宝でも時間さえかけりゃあできるってわけか」


その魔物はうまく攻撃を回避しながら国宝のコピーをしていた。


「お前の正体はなんだ?」


「私には名前はない。ただここに居るだけ。だから、区別する記号として、イルと呼ぶものはいるがね」


「イル? 四天王の名前にも全く出てきてないはずだが」


「四天王とはまた枠が異なる。私は魔王様が直接召喚した魔物だ」


そうして話すうちに、その姿は二一の姿になる。


「若松君になった!」


「大変だ。若松先輩の能力をコピーされたら、大変なことになる」


戦っていた和美と里香がその姿を見て焦る。


「ジャンマリア様?」


そして何より驚愕したのは、二一の頭の上には、ジャンマリアがいたからだ。


ずっと二一の上に当たり前のようにいたジャンマリアがいるその姿に、特にクレアロッテが動揺した。


二一のコピー単体でも非常に難しい戦いになるのに、1度としてダメージを与えられることが無かったジャンマリアまでいては、ほぼ戦いにならないことを察したのである。


二一とジャンマリアのコンビを倒せるとすれば、同じ二一とジャンマリアのコンビ。しかし、こちら側にはジャンマリアはいない。


「これはいいな。これまで現身にした誰よりも使いやすい。それに伝説の狐人族までいたら、さぞ楽な戦いばかりだっただろうな」


二一の顔でイルが笑う。結構下種な笑みなのだが、二一が普段している顔とそこまで違いがないので、恐怖感はあまりない。


ドゥンケルハイトはもちろん、スクロペトゥム・ミノリース・モディー、ヴァーテルベイルも持っていて、圧巻である。


二一はあまり武器を同時に3つ出そうとはしないので、このような光景を見ることはあまりない。


「お前らは下がってな。俺がやるさ」


二一は前に出る。いつも使っているドゥンケルハイトを片手に構えて臨戦態勢に入る。


「お前はそれ1本でいいのか」


「俺はお前みたいに器用じゃないからな。3つも同時に使ってもいいわけじゃないさ」


イルは二一を攻撃する。


ドゥンケルハイトで攻撃を行う。雷属性を纏った二一もよくやる複合の攻撃である。二一の特性を受けているイルは、国宝の悪い属性ももちろん跳ね返す。


キン!


二一も全く同じ攻撃で受ける。ドゥンケルハイトはほぼ立てたままで動かさない。


スクロペトゥム・ミノリース・モディーで二一を素早く攻撃する。


しかしそれも二一はドゥンケルハイトで受ける。今度は刃先のみで受ける。


ヴァーテルベイルの攻撃も二一はドゥンケルハイトでうまく受ける。


二一に対して3種類の国宝をうまくつかった攻撃をするのだが、二一はそれをドゥンケルハイトだけで受けてしまう。


「くっ、なぜ攻撃が当たらない?」


イル自身も自分が使う攻撃が、これまでのものより威力が抜群に高いことは感じているのだが、二一にそれが効いていないことに驚いていた。


「どこまで言っても、俺の技なんだ。自分の技を知っている奴が俺以上にいるわけがないだろう」


「それはそうだろうが、そんな簡単なことじゃないだろう……」


イルは数こそ多くないものの、この戦い方で負けたことはない。どれだけの実力者であっても、自分と同じ相手と戦うことはできないのである。そのような練習ができないからである。


つまりは自分のことを知るというのはそこまで簡単なことではないのだ。


「簡単なことじゃないからやっとけば楽だってことさ。結局はお前は俺のコピーだから、俺より少し能力が高くても、俺のできないことはできないんだ」


「しかし、私には狐人族がいる。接近戦なだどうだ!」


イルは突撃してドゥンケルハイトで攻撃する。


防御を一切気にしていない、隙の大きな攻撃である。


「はぁ……、お前はどこまでいってもコピーか。思考だけは俺と違う」


その隙だらけの攻撃を回避し、二一はイルをドゥンケルハイトで貫く。


「なぜ……、狐人族がいるのに……、攻撃を受けない……」


「間違ってんだよ。俺は1度もあのプチ狐に頼った戦い方をしたことはない。あいつは自動的に攻撃を受ける盾じゃない。あくまでもあれは最後の手段。基本的にはいないものと同義だ」


二一の攻撃が直撃し、国宝の一撃を受けたイルは一瞬で消滅した。




「……先輩、また迷惑をかけて申し訳ない」


「……ごめんなさい」


和美と里香の2人がまた二一に頭を下げる。


「別にいい。今回のことは、2人が先行して動いてくれたから、分かったことでもある。とりあえず動いてもらうことがいいことでもある。あいつの動きを見て、確かに早く強く動くことはできても、できないことはできないことは分かったからな。より上のコピー能力で、できないことまでできるとなったら、また戦い方も変わっただろうしな」


二一と少し和美と里香の活躍もあって、2階の試練も攻略に成功した。





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