第61話 2-28 目隠し結婚 5
祝賀宴の賑やかな音が、リースとエリゼを閉じ込めている部屋の奥深くまで響いてきた。
それは、決して来てほしくなかった時間が、ついに訪れたことを告げる合図だった。
リースは不安のせいで目を閉じることができず、ベッドの横にあるティーテーブルの前でじっと座ったままだった。
エリゼがそんな彼を見つめている。
リースの眼差しは、あの時とまったく同じだ——エリゼは心の中でそう思った。
口元は笑みを浮かべていないのに、その瞳には一切の迷いがない輝きがあった。
それは、彼女たちがアルティシアを助けに行った時と全く同じだった。
エリゼはその眼差しに罪悪感を覚えた。
なぜなら彼女はリースを裏切った張本人だったからだ。
でも……どうしてだろう。
これから直面する出来事が、文字通り彼らの命を奪うかもしれないというのに、なぜリースの瞳にはあのような輝きがあるのだろう。
そして、ドアの錠が外される音が正面から響いた。
大きな扉が開くと、人形のような無表情の侍女たちが何人も入ってきた。
布で覆われたワゴンを押しながら。
三人の侍女がエリゼの元へ歩み寄り、こう言った。
「お嬢様、お風呂のご用意ができました」
そのうちの一人が、無感情な平坦な声で言った。
エリゼは即座に後ずさり、ベッドの端に背中がぶつかるまで下がった。
しかしリースは彼女の方を振り向き、こう言った。
「抵抗しないでくれよ」
彼女は怖ず怖ずとリースの顔を見上げたが、目が合った瞬間、観念したように立ち上がり、浴室の仕切りの方へ歩き始めた。
侍女たちが離れずに付き従う。
その時、別の三人の侍女がリースの元へ近づいてきた。
「坊ちゃん、こちらへどうぞ」
リースは立ち上がり、彼女たちについて別の部屋へ行き、そこで着替えを整えた。
多少の恥ずかしさはあったものの、人形のように硬い動きをする彼女たちを見ていると、その気持ちも薄れていった。
体を隅々まで洗い清めた後、侍女たちは彼の体と顔に香油を塗り始めた。
少し息苦しさを感じるほどだった。
髪は油で梳かされ、整えられて、自分でもほとんど見分けがつかないほどだった。
その後、完璧に服を着付けられた。
浮き彫りのような模様が入ったスーツが体にぴったりと整えられ、金属のチョーカーが首に巻かれ、白いスカーフで覆い隠された。
「こちらへどうぞ」
着替えが終わると、侍女たちは硬い動作で頭を下げながら言った。
リースは彼女たちについて歩き出した。
しかし、建物の大きな正門をくぐり抜けた瞬間、眼前の空は真っ暗だった。
所々に松明が立てられているだけだ。
リースの前には、城壁のように高く巨大な壁がそびえていた。
胸壁の上には兵士たちが等間隔に立ち、松明と交互に並んでいる。
さらに侍女たちについて少し進むと、一つの教会が見えてきた。
石壁に生えた苔が松明の光に照らされて反射し、その古さを物語っていた。
外観は古びて古風だったが、内側はしっかり手入れされていた。
扉が開かれた途端、祝賀の調べを奏でる楽器の音が中から響いてきた。
リースは裏口から一つの部屋に案内された。
彼がふかふかの快適な椅子に腰を下ろすと、侍女が言った。
「坊ちゃん、お嬢様をお待ちになる間はこちらでお座りください」
そう言い終わると彼女たちは去っていき、鍵を掛ける音が後に続いた。
リースは自分が閉じ込められたことを悟った。
「最後の一秒まで油断がないんだな、本当に」
リースは小さく独り言を呟きながら、ドアの方をちらりと見た。
アルトニオは、彼が精神支配から逃れたこと、そしてチョーカーの呪いが解除されたことも知っているはずだ。
それでもなお、強引な手段を取ってこないということは、彼はまだリースとエリゼを支配下に置くための数多くの罠を用意しているということだ。
リースの瞳が心配そうに細められた。
エリゼを必ず連れて逃げ出すという強い決意は胸にあったが、アルトニオの考えまでは到底想像できなかった。
「僕は、越えてはいけない一線を越えるしかないのか……」
リースは再び目を閉じ、固く決意を固め、最悪の事態に備え始めた。
時間がしばらく経過した。
すると突然、外の音楽が止まった。
ようやくドアの錠が外側から開けられたが、この時入ってきたのは使用人ではなく、リースの父を名乗るアルトニオだった。
灰色の髪はリースと同じくきっちりと整えられている。紫色の瞳が勝利を確信したようにリースに向けられた。それは決して好ましい視線ではなかった。
「時間だぞ、愛する我が息子よ」
歌うように抑揚をつけた声が、大きく笑う口から漏れた。
一方の手が眼前の少年に向かって差し伸べられる。
「わかりました」
リースはその誘いに従って立ち上がった。
彼はアルトニオに対して控えめに軽く頭を下げた。
アルトニオは満足げに笑みを広げ、体をくるりと回してから外へ歩き出し、リースもその後に続いた。
リースは五段の階段を上り、広大な式場へと入った。
眼前には貴族のように豪華な装いの客たちがいた。
全員が仮面を着けている。
教会を埋め尽くすほどではないが、席の半分以上を占めていた。
聖堂中央の像は、海の女神マリーナや女王神ルセリアの像ではなく、棘の蔦に縛られた少女の像だった。
一方の手には男性の胸飾り用の針を持ち、もう一方の手は折れていた。
リースは彼女を知らず、彼女が何として崇められているかも知らなかったが、それでも目を閉じて心の中で祈った。
(もしあなたがマリーナ様と同じ女神であるなら、どうか私に祝福を)
「貴賓の皆様!!!」
式台の四段目に立つアルトニオが両手を広げ、大声で言い放った。
同時に、再び音楽が流れ始め、それは花嫁を招くための曲だった。
閉ざされていた正面の扉が開かれ、白く美しい花嫁衣装をまとったエリゼの姿が現れた。
長手袋に包まれた腕は執事のスミス——銀色の仮面を着けた大柄な男のスーツ姿——に絡められてエスコートされている。
エリゼの顔は化粧で美しく整えられ、ドレスの葉の形をしたクリスタルが太陽の光を反射して色鮮やかに輝いていた。
それらが一歩歩くごとに、心地よい音を立てる。
しかし、白いベールの下から覗く瞳は恐怖に満ちていた。
リースは彼女と目が合い、その恐怖をはっきりと感じ取った。
「大丈夫だよ、エリゼ」と口に出して言うわけにはいかない。
今ここで不用意な行動を取れば、すべてが台無しになってしまう。
だから彼は無理に口角を上げ、執事のスミスから彼女の手を受け取った。
花嫁と花婿が棘の蔦に飾られた女神の像に向かって向き合うと、仮面を着けた神父が革表紙の本を助手に受け取り、式台へと上がった。
彼はリースとエリゼの前で立ち止まり、命のないような平坦な声で言った。
愛と崇高な伴侶の関係についての教えが、教科書を音読する子供のような声で読み上げられた。
仮面を着けた客たちは、式にほとんど興味を示していない様子だった。
それはどの教会でも、どの女神でも同じ、繰り返しで退屈なものだった。
隙を窺うリースでさえ、うんざりするほどだった。
本からの一節が終わると、音楽が一節奏でられ、神父の役割を務める男が宣言した。
「誓いの女神アリスベス・ワーヴィルネスよ、どうか眼前の新郎新婦の誓いを聞き届け、新たに生まれる家族に蔦と紋章を飾りたまえ」
命のない声で語られたにもかかわらず、彼女の手の先の針が白く明るい光を放ち始めた。
室内の魔法ランプが消えた。
しかし、光の粒子が広い式場のホール全体に広がり、部屋中を明るく照らし続けた。
それはマリーナの教会の地下小部屋で起きた出来事と全く同じだった。
誓いの女神が眼前の像に降臨すると、仮面の神父が再び魂のない声を発した。
「花嫁側、エリゼ・ミランドよ、誓いの女神アリスベス・ワーヴィルネスに対して誓いを述べよ。汝はリース——汝の人生の主となる者に対して、忠実で貞節であり、生涯尽くすことを」
エリゼは唇を強く噛み、鉄の味が舌に広がった。
傷つき潤んだ瞳で、棘の蔦に縛られた女神の像を見つめていた。
なんて皮肉なことだろう。
彼女の名前は、この自分の人生を壊そうとしている女神の名前に文字が含まれている。
これは彼女が望んだ結婚ではない。
第二王子『ルシアン』が彼女を迎えるはずだったのに、代わりに彼女が裏切った少年リースがいる。
この結婚式が最後まで続けば、エリゼはこの望まぬ夢の中に永遠に囚われる。
たとえ後で政治の駒から救い出されたとしても、神に誓った以上、彼女はもうリースから離れられなくなる。
これが彼女が受けるべき罰なのだ……
エリゼはきつく目を閉じ、覚悟を決めた……
「私、誓います」
エリゼの誓いの言葉が終わると、長手袋に覆われた彼女の左腕が火で焼かれるように熱くなった。
彼女は身も心も痛む嗚咽を漏らし、隣にいるリースは思わず少し顔を背けた。
しかしその時、アルトニオが歩み寄ってきて、小さな箱をリースに差し出した。
「これは私が誇りに思う結婚指輪だ。花嫁に嵌めてやれ」
恐ろしい声で言いながら彼は小さな箱を開けた。
それは泥色の宝石をあしらった銀の指輪で、腐ったような臭いが漂い、リースは歯を食いしばった。
しかし、視線をエリゼに向けると、彼女は何の反応も示さなかった。
その様子を見たリースは、すぐに悟った。
これは呪いの気配か、何らかの制御のための魔法だろう。
この指輪を嵌めれば、着用者がどのような呪いにかかるかわからない。
これがアルトニオのもう一つの計画だった。
彼はリースにかけた支配魔法が解除されたことなど気にも留めていない。
結婚する二人はいずれにせよ指輪を嵌めなければならないのだから。
そして、儀式と女神の前で、リースはこの呪いを破ることはできない。
「恨むなら今のうちに恨めよ、息子よ。これからはもう恨めなくなるからな」
アルトニオは小さく言いながら、彼の視線はリースの瞳の奥を突き刺すように絡みついていた。
しかし、
水よ……
リースは息を吐くように小さく呟いた。
掌に小さな水の塊が生まれ、リースは魔法の力でそれを素早く鋭い槍状に変えた。
固まれ
もう片方の手には、先に放った水の魔法と連動した凍結の魔法があった。
魔法を放つと、手の中の水は瞬時に氷の槍となった。
リースは迷わずその氷の槍をアルトニオの脇腹に突き刺した。
汚れた結婚指輪が落ち、アルトニオも一緒に床に崩れ落ちた。
リースは足でアルトニオを蹴り倒して仰向けにし、エリゼの方を振り向いてきっぱりと言った。
「エリゼ、行くぞ!!」
「えっ!?」
次の瞬間、まだ状況を理解できていないエリゼは、お姫様抱っこで抱き上げられた。
固まれ 速くなれ 強化する
リースは本能的に三つの強化魔法を心の中で唱え、すぐに教会から外へ向かって駆け出した。
///
花嫁と花婿が目の前で逃げ去り、アルトニオが刺されて息絶えたというのに、混乱は起こらなかった。スミスさえ何の反応も示さない。
女神の光の粒子が消え、代わりに魔法ランプが灯された。
高貴なスーツ姿の客たちは立ち上がり、先ほどの出来事について面白おかしく話し始めた。まるでそれは滑稽なジョークだったかのように。
「スミス、客たちをきちんと送り出してくれ」
最前列に座っていた仮面の男が、組んでいた足を下ろして立ち上がり、命令を下した。
「はい、旦那様」
スミスは謙虚に頭を下げ、信じられないほどの速さで壁際の絵画の方へ歩いていった。
彼が仕掛けに触れると、すぐに隠し扉が開いた。
「皆様、どうぞこちらへ」
スミスの声が終わると同時に、高貴な客たちは列をなして素早く隠し扉を通り抜けていった。
スミスが最後に入り、隠し扉を閉めた。残されたのは、茶色がかった髪の仮面の男ただ一人だった。
その男は歌うような声で言った。
フードと仮面を着けた者たちが闇の中から次々と現れ、彼の前に集まってきた。
最前列に立つ者は、威厳ある豪華なフードを着け、リーダーであることを示していた。
彼は仮面で変えられた声で叫んだ。
「失敗したくせに、まだ俺たちに命令する気か?」
「失敗だって? 僕にはその言葉の意味がわからないよ~」
そう言い終わると彼は手袋を外し、中指の指輪を引き抜いた。
すると髪の色が一瞬で灰色に変わった。
仮面を外すと、式台で息絶えていた人物と同じ顔が現れた。
「これはね~ 美しい大成功さ~」
「ふんっ」
苛立たしい調子の声が仮面の者たちの前で響き、相手側に強い不満を与え、彼らは武器を抜いた。
「もうお前の計画には付き合わないぞ、アルトニオ!! あの方に誓ったとはいえ、あの方はもういないんだ!! だから俺は……」
「跪け~」
アルトニオが言葉を遮ると、フードを着けた者たち全員が一斉に跪いた。
「アルトニオ!! お前……」
フードの者たちのリーダーは、抑えきれない力に抗いながら、苦しそうにアルトニオを見上げた。
「あの方がもういないと、本気で思っているのか? 考え直した方がいいぞ」
アルトニオの声はもう戯れではなく、横目で睨む視線は高貴な獅子が虫けらを見るかのようだった。
そして一瞬、彼の瞳に紫色の光が宿った。
それを見た仮面の男のリーダーは、言葉にならない叫びを上げた。
それを見てアルトニオは満足げに鼻を鳴らし、さらに言葉を続けた。
「もう一度機会をやる。私の息子と息子の嫁の体を連れ戻せ。生きているかどうかは問わない。頭と目玉だけでも十分だ。できれば、あの方に引き続き仕えることを許してやる」
「ぐっ……承……知しました……」
仮面の男のリーダーが応じると、すべての圧力が消えた。
彼らは一斉に立ち上がり、激しい戦いを終えたかのように荒く息を吐いた。
「愛を込めて忠告してやるよ~ 私の息子と来訪者たちは、ただの雑魚じゃないからね~ あいつらに簡単にやられるぞ~ 命だけは大事にしろよ~」
アルトニオは再びぞっとする詩的な調子で言い、うるさそうに何度もくるりと回ってから暗がりの中へ歩み去った。
アルトニオの姿が消えると、フードの者たちがリーダーに近づき、心配そうな声で言った。
「これから……どうすればいい……」
「模造魔獣を放て!!!」
仮面の者たちのリーダーが叫んだ。その声は、喉が火で焼かれたように掠れていた。
『あとがき』
今週の更新も、また月曜日の朝に遅れてしまいました。
どうしてでしょうね。
誰かに「更新日に間に合うように原稿を書く」と約束した途端、すぐに3つも不幸が舞い込んでくるんです。
来週は、誰にも約束せずに黙って進めてみようと思います。
不運が舞い込んでくるかどうか、様子を見てみますね。
皆さん、僕を応援してくださいね。
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