エピローグ
緑生い茂る〝スレンドの森〟。
ここでは今日も、冒険者と女将が魔物を狩っていた。
「よっしゃあ! 依頼クリア!」
近くで歓声とハイタッチの音が聞こえる。ディアナはそれを聞いて頬を緩めた。
目の前のビッグ・ベアが腕を振り上げる。
「あら、ごめんなさいね」
それを紙一重で避けて、ナタを振るう。
綺麗に首だけが落とされた。遅れてビッグ・ベアの巨体が地面に沈む。
「さて、あと一体くらい……」
「ぎゃああああっ!」
「うおおおおおっ!」
突如、森の奥から悲鳴が聞こえた。見れば、二人組の冒険者が決死の形相で走ってきている。その後ろには明らかに怒ったコカトリスだ。
進行方向にいた他の冒険者が飛び上がる。
「おわっ!? お前ら、どうした!?」
「コカトリスの尾をうっかり踏んじまった!」
「「おバカ!」」
怒鳴って一緒に逃げる。
「噛まれたか!?」
「大丈夫!」
「なら良し!」
状況的には全然良くないのだが、コカトリスは尾の蛇や爪に強力な毒を含んでいる。それを受けていなければ、あとは体力の続く限り、そして森を突破するまで走るだけだ。
「あらあら」
ディアナはにっこりと笑う。
「元気ねえ。ついでに助けてあげよっと」
ナタを担いでそちらに向かう。
冒険者たちとコカトリスの間に割って入ると、相手が突っ込む勢いを利用して首にナタを当てた。
コカトリスがやばいと気付いた時にはもう遅い。鶏の頭が宙を舞った。続いて蛇の頭を潰し、尾を切っておく。コカトリスの尾は全体に毒が回っているから危険なのだ。
「みんな、大丈夫かしら?」
振り返ってそう訊ねると、
「た、助かりました……」
腰を抜かした冒険者たちが息も絶え絶えに答えた。
「女将さん、マジ女神……」
「ただの女将よ。あ、このコカトリス、貰っちゃっていい?」
「どーぞ……」
冒険者たちがぜーぜー言っている横で、ディアナは涼しい顔をして血抜き作業に入る。
「あ、そーだ」
息が整ってきた冒険者が、ディアナに訊ねた。
「女将さん、今日のご飯ってなに?」
「ここのところ、ちょっと寒かったでしょう? ボアボアのお肉と野菜がごろごろ入ったシチューを頼んでいるわ」
「やった!」
「よし、がんばって今日の依頼をこなすぞ!」
「おー!」
彼らに活力が戻った瞬間だった。
日が暮れたら、明かりを灯せ。
銀のカナリア亭の開店だ。
「こんばんはー、女将さーん」
「いらっしゃーい!」
「シチューとパン頂戴!」
「こっちはサラダも!」
「はーい、テーブルについて待っててねー」
今日も銀のカナリア亭は満員御礼。冒険者もそうでない人も、皆嬉しそうに料理を頬張る。
「女将よ、今日の料理はなんだ?」
「……シチューよ。食べたいなら適当に席について」
「やれやれ。相変わらずつれないなあ」
「女将さん、空いているお皿を下げに行ってきますね」
「気を付けてね、ネリー」
魔王もやってくるし、聖女は従業員だ。
風変わりな者たちが運営する、ちょっと変わった酒場。
銀のカナリア亭の夜は、今日も賑やかに更けていく。
了
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