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どうぶつ村のエリカと妖艶なデーモン  作者: あめ野コッキー
5.ふれあい
19/26

1

天使てんし? なによそれ」


思いがけない質問しつもんをするデーモンさんにエリカは首をかしげました。


ふたりは大広間おおひろまの中心で手を取り合っておどっていました。

エリカいわく、城では踊るものなのだとか。

大階段だいかいだんわきに置かれた蓄音機ちくおんきからは軽快けいかいな音楽が流れています。もちろん、蓄音機はエリカがポシェットから出したものです。


「違うのか?」


「違うわよ、ほら」


エリカは一度(にぎ)り合っていた手をはなして、くるりと回って背中せなかを見せました。


「羽だって生えてないじゃない」


「ふむ……」


そうして、再び手を取り合って踊りを再開さいかいするのです。


「あなたはえてるようだけどね」


エリカは踊りながらデーモンさんの背中をのぞみます。


「あなたって飛べたりするの?」


「ああ、飛べる」


そう答えたデーモンさんは、つばさを一度羽ばたかせてちゅうかび上がりました。


「わー! すごい!」


エリカは宙に浮かぶデーモンさんを見上げて、手をたたいてよろこびます。


「私をっこして飛べる?」


エリカがそう言うと、デーモンさんは一度(ゆか)に足を下ろし、エリカに近寄ちかよってきました。そして、エリカの脇をかかえるようにして、再び宙に浮かび上がります。


「すごい! すごいわ!」


エリカはデーモンさんの首元くびもとにギュッとしがみつきました。


「あなたってすごいのね!」


そうして、デーモンさんの頭の横から賛美さんびを送ります。


「そうだろうか……?」


デーモンさんは少しれくさそうな表情を浮かべていました。


「このままシャンデリアにタッチよ!」


エリカは天井てんじょうのシャンデリアをゆびさして言いました。


「わかった」


デーモンさんはエリカの言われるがままに翼を羽ばたかせて上昇じょうしょうします。


「ターッチ! あつっ!」


エリカはいきおいよくシャンデリアのランプにタッチしましたが、かりのともるランプは熱をびていました。


「大丈夫か?!」


デーモンさんは心配しんぱいそうにエリカの顔をのぞんでいます。


「えぇ、平気へいきよ」


エリカは顔をあげてそう言うと、ニシシと笑いました。


「本当か?」


「ええ、火傷やけどもしてないわ」


そう言ってエリカはランプにさわった手をパーにして、デーモンさんに見せました。


「よかった……」


デーモンさんは心のそこからホッとしたような表情を浮かべています。


「ねぇねぇ! このまま踊りましょう!」


エリカはデーモンさんに突飛とっぴ提案ていあんを持ちかけました。


「ああ、いいぞ」


デーモンさんは「おおせのままに」と言葉を続けて、ふたりはそのまま空中くうちゅうで踊り始めました。


「あはははは!」


エリカは楽しそうにはしゃぎます。

それは、さながら空中の舞踏会ぶとうかいでした。


デーモンさんは時にエリカの手をはなしたり、エリカをまわしたりしましたが、エリカはまったくこわくはありませんでした。


ゲームだから、という気持ちももちろんありましたが、なにより、出会ったばかりのデーモンさんをとても信用しんようしていたのです。


それからふたりは、エリカがきるまで踊り続けました。


────


「わたし、空を飛んでみたいわ! 外に出ましょう!」


舞踏会を終えてふたりがゆかに足を下ろすと、エリカは突然そんな提案をします。


すると、デーモンさんはきょかれたような顔をしました。


「それはできない」


「どうして?」


「私はこの城をまもり続けなければいけないんだ。城の外に出ることはできない」


デーモンさんはそう言いながら、自身じしんの首に付けているチョーカーの、何やらかぎの形をしたかざりを手でギュッとにぎりしめていました。


その表情はどこか悲しげで、そして真剣しんけんな表情でもありました。


「あらそう……それは、仕方しかたないわね」


エリカはその表情を見て、相手あいての気持ちをみ取るように、同じような表情をして答えました。

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