第7話 王都アポロメルタン裏グルメ集! 18
わたし達のパーティは、ラテさんの勇者パーティに待ってもらって、エスメラルダの顔をマントのフードで隠しながら、ベンチにお金を広げた。
「わたしのお給金でしょー。ニャビのお給金でしょー。女中だけでも結構あるのね!ラゴゥは?」
ラゴゥは袋から全部出した。
「近衛隊長のお給金と、父上からのエスメラルダ発見の褒美と、国からの賞金。財布に入らなくてさ。」
「すごい金貨いっぱい!!ちなみに、チップとクロウは?」
「ほれ。」
チップはまたえらい金貨の量だ。
「え?なんでこんなにあるの?チップは三代目よね?働く必要あったの?」
「おまいなー。今まで田舎で集めてた宝石類、王都まで取っといた訳。貴族連中の街だかんな。しっかり鑑定されて、バザーの倍は儲かった訳よ。」
「あの石が、そんなに高く売れたのかぁ……」
クロウは中々の金貨。なんで金貨?
「クロウってチップのお父さんに拉致監禁されてたのよね?働く時間あった訳?」
「チップの親父からの礼金と、エルン=ファルファロ教会から女王の旅の支度金を預かったからな。」
ニャビとモコちゃん、わかってない顔してる。
「おかいもの、すゆ?」
「また服漁るの、お姉ちゃん達?」
「書店に行くの。学者さん達のアンソロジー的な、大変な値段のレシピ本を買うのよ!全ての階級と種族の食文化レシピ!!」
「ほれ、ほれ!金貨まとめて、行くぞ!」
わたし達は書店に駆けつけた。
例のレシピ本、あんなにたくさん重ねてあったのに、もう二冊しか残ってない!!
わたしが素早く一冊取り上げた。
「危なかった!売り切れ間近よ!!」
クロウはレシピを嗅ぎつけて、言った。
「支払いは全員だから全員のもんだ。だが、管理は俺でいいな?」
盗賊時代から抜けない、クロウのコレクター精神である。
でもまぁ、一番きちんと管理できるのは、クロウな訳だしね。
「皆が食べれるんなら、いいんじゃない?」
わたし達はお支払いして、まだたーくさん、金貨の余りがある。
「すごくない?こんなに金貨余ったよ?ラゴゥのお金でこと足りたどころか……」
「まぁ、ペンテシレイア王女捜索は、国中の悲願だし。なるべく貯金の方向で、城下町は高いから、市場行って食材買い出ししとこっか。」
いざ、わたし達は王都アポロメルタンを後にした。
さよなら、宮廷生活。
そして久しぶり、現実の庶民暮らし!
「やりきった?エスメラルダ。」
ラゴゥがエスメラルダに聞いた。
エスメラルダは、涙混じりに頷いた。
「やりきったよぉ!!後は約束通り、旅の果てから、生きて帰るだけだ!!」
わたしも、一筋涙がこぼれた。
チップがわたしを案じた。
「おまい、どうした?」
「ううん。ほんと、カイヤさんはわたし達の仲間だったし……マリアンヌさんや、ガラングルおじいちゃん、色んな出会いがあって。別れは、寂しいね。」
チップは励ますように告げた。
「へっ!別れだけじゃねぇや。レニさんとの再開もあんぞ!」
「うん!うん……!!目指せ、レニさんと赤ちゃん!!」
「レニさんと赤ちゃん……?」
ラテさんに、わたしが話す。
「人間サイドの魔族のレニさんが、赤ちゃんを身ごもってるのー。」
「なら、その高価なレシピ本が役に立つわね?魔族の赤ちゃんのご飯くらい、載ってるんじゃないかしら?」
「わぁー!!ほんとだ、目次に書いてある!魔族の赤ちゃん離乳食!!ありがとーラテさーん!!」
わたし達とラテさんパーティは、ひとしきり村を目指して歩いて、魔物にも遭遇しなかった。
でも夕方までには間に合わず、夜には野宿のテントを張った。
「あなた達は大所帯だからか、大きなテントね?」
「普通はラテさんとこみたいなテント買うけどねー。」
わたしは皆に振り向いた。
「とりあえず、楽なもの作ろっかー!」
ラゴゥが、前の町で買った中華鍋を手に、告げた。
「俺の趣味のチャーハンで良ければ、作っちゃうよ?レシピも暗記したしさ。」
「わぁーい!食べたーい!!」
「クロウは手伝ってー!ラビとチップはお皿の支度!あ、ラテさん達も食べてください!格安メニューだからお気になさらず!」
「いいの?」
ラテさんパーティーの拳法家さん、笑った。
「カカカッ!俺も徐々にだが、ラテやアスタロトがなんで惹かれたか、わかってきたぜ。痛快なまでに、人当たりのいい奴らだ!」
「ありがたいお言葉です。たくさんおかわりしてくださいねー!」
・ラゴゥお手製!
タルタル高菜チャーハン
(2人前)
ごま高菜 300g
鶏ササミひき肉 300g
卵 2個
白米 400g
タルタルソース 大さじ5
ごま油 大さじ2
鶏がらスープの素 大さじ1
塩 適量
卵をお椀でかきまぜておく。
白米をレンチンして温める。
高菜の水気を、ザルで切っておく。
火加減は常に強火。
まずフライパンにごま油をしいて熱したら、鶏ササミひき肉をパラパラに炒める。
塩少々ふる。
卵をくわえ、かきまぜながら炒める。
火を止めて、白米を入れ、鶏ガラスープの素を入れ、炒める。
火を止め、高菜とタルタルソースを入れてから、また火を付けて、塩少々ふり、5分〜7分、炒める。
お皿にのせたら、完成。
「うめーわい!こりゃ、コチュジャンも合うんじゃねぇか?」
「コチュジャン!メモしますねー!」
久しぶりの、皆でのご飯だ。
宮廷料理はそりゃあご馳走だし、チップのお母さんの料理の上手さには、かなわないけどさ。
「おいひい……染みる……」
「高菜とタルタルの組み合わせが、幾つになっても癖になるねぇ。鶏ササミからも鶏だしがきいて、加速的にスプーンが進んじまうよ。」
ラテさん達パーティも、スプーンが進んでいる。拳法家さんはラゴゥとクロウに調味料語りを始めているし。
「相変わらず、ラビちゃん達のパーティはご飯が美味しいわねぇ。これ、何?野菜?」
「これはほとんどラゴゥの功績っていうか。ラゴゥ、チャーハン作りに目覚めちゃったのよ。美味しいからいいんだけどさ。これは高菜って言う、野菜の漬物を使ってるのよー。」
ラゴゥが中華鍋を抱えて皆の元を回った。
「おかわりいる人ー!たーんと食べてねー!」
久しぶりだなぁ。ラゴゥの女将見るのも。
「おまい、珍しく、おかわりしねぇのな。」
「達成感で胸がいっぱいなのよ。あと、チップ、わたしにはしばらくチップがラクディアお嬢様にしか見えないわー。」
「一回のゲームを引きずるんじゃねえやい。また、遊んでやっから。」
ニャビ、食べ途中で寝ちゃった。
「こら、ニャビ!食べてからねなさいよね、夜中にお腹すいちゃうよ?」
ニャビ、なんとか起き上がり、ご飯を食べる。
やっと冒険再開のわたし達、美味しいご飯と達成感に満たされる。
食後に、わたしがヴィオロンを弾いた。
今までの区切りのようなものだ。
懐かしき宮廷の、円舞曲。
ヴィオロンの音色に合わせて、ラテさんがラゴゥに手を差し出した。
「踊ってくださる?」
「喜んで。」
拳法家さんが、エスメラルダの手を引いた。
「俺は勇敢な女王陛下と踊りてぇな!踊っていただけますか?キリッ。」
「ガッハッハッ!あたしゃ、バーナード以外は、足を踏むのに容赦はしないよ?」
「そんときゃ、回避しますよ!俺ぁ拳法家なんでね!」
皆が、踊り出す。
月夜の舞踏会。
胸には懐かしい王城の日々。
マリアンヌさん、この音色が聴こえますか。
わたし達はこれから再び、冒険の旅に出る。
たくさんの感動や、たくさんの驚きを、貴方に送るから。
この曲を、貴方に捧ぐ。
月明かりが、廻るワルツのシルエットを、草原に映し出していた。
それはそうとして!
わたし達の珍道中とグルメの旅は、まだまだ、続くよ!
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