定例行事
「咳牛のミルク~」
「ミ~ル~ク、はい!
ごー、じゅー、じゅーご、にじゅ、にじゅーご・・・・・・・・・・・・・
・・・・45っ本!」
「・・・咳牛のミルクせっけーん」
「せっけん・・・・・はい!
にぃ、しぃ、ろぉ・・・・・12個!」
「・・・え~・・主婦蜘蛛の糸ぉ」
「いといと~・・・・はい!
にぃ、しぃ、ろぉ、やぁ、と!
はい、10個」
「砂糖蟻、岩亀、スパイシーロック~」
「えーーと・・・・うん、2袋づつあり!・・・重っ」
「次~、バクの鼻~」
「花?
・・・・・ん?お花は無いよ?」
「いや、顔にある鼻ね(笑)、
えーと・・・・メイコの右手側にある・・・そう、その袋じゃないかな?」
「え……、このデカい袋?
は?これ鼻?
ええっ?」
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今日は、待ちに待った、二ヶ月に一度の『日用品などなど大量に届く日』です!!
今は、納品書を見ながらで、発注した品の数が合ってるかをチェックしています。
発注書と納品書を交互にチェックしながら、一つ一つ読み上げてるのが、アル君。
届いた品の数に誤差が無いか、実際に商品を確認して運ぶのが、私。
私が運んだ品を倉庫等へ、せっせと運んでるのが、エルです。
あ!
ちなみに、この作業一日がかりだったりします。朝から夜まで。
『延々数えて運ぶ地獄』です。
なんでも、納品された品には、
生ものもあるから、傷む前に保存しないといけないからと、ほぼ休まず作業が続くんです・・・。
だから、はじめの内は、体力がもたなくて、夕方くらいには戦力外になっていた私も、
三回目ともなれば、だいぶ慣れてきましたよ!
あいまでの力の抜き方も徐々に分かってきたので、楽しむ余裕も出てきました。ィェイ!
余裕って、大切。
楽しいってだけで、こんなにも作業効率が上がるとは・・(笑)
今まで見たことも無い、謎の粉や石などを、コレ何?とか考えるだけでも楽しくってたまらない。
納品される物は、大半が食品で、米、小麦、肉、野菜、調味料。
次に多いのが日用品で、石鹸、衣類、雑貨・文房具、本など。
そして、残りがアリアの薬の材料になる色々な素材。
さっきの『バクの鼻』もアリアが発注した素材。
他にも、何かの血液や、何かの爪などなど・・・
魔物やら・・虫さんやら・・様々だから、取り扱いは要注意!
さっきなんて、たまたま荷台から落ちた袋から、
生きたままのムカデ(みたいなの)がザワザワ出てきて・・・・・(暗転)
気が付いたら、アル君が私の頬を叩きまくってましたよ。
ムカデは袋ごと消えてました(アル君が片してくれたもよう)
だから、ほっぺが異常に痛い・・
さすりさすり
一瞬、心臓止まったんじゃなかろうか。
…本当に恐怖を感じた時って、声出ないね(遠い目)
アル君とエルが、すぐ助けてくれたけど…しばらく鳥肌が止まらなかったのは言うまでもない。うえ。
アリアって、実は黒魔術でもしてるじゃないか?て、マジで思う。気持ち悪いのは勘弁して欲しい。
うっ!思い出すだけで寒いから
話をチェンジ!
えー・・・折角なので!
さっきの納品分から、使用頻度の高いものを、少しだけ紹介しま~す!パチパチ~!
え?
誰に話かけているんだって?
当然、脳内のデカい独り言です。しばし付き合って!
いや、別にね?決して、寂しいからとかではなくてですね。
少しでも楽観的に心を保たないと…
冷静に、動き回る虫など数えてられませんから~~~っ(泣)
虫無理っ本当に勘弁して欲しい。
てな訳で!
ジャカジャ~ン!!
これ、
基本調味料の砂糖蟻~!
その名の通り、砂糖がとれる虫!・・じゃなくて魔物!
蟻は蟻でも侮るなかれ、
蟻のくせに、なんと体長120センチはある巨大版!(小学生くらい?)
うう・・不気味ッ
性格は獰猛、視界に捕えた動くもの全てに攻撃を仕掛けて来るそうです。
だから、蜜を採取する際は、魔法か、専用の道具で眠らせる|のがベターで、近づくのは危険とのこと。
(ちなみに蟻の攻撃は、アゴ横にあるデカいふたつの鎌。
強度も切れ味も良いから、ナイフに加工して、店頭で売られてたりもするんだって。)
そして、この蟻は、花や果実などから蜜を集めて、腹部に貯めて巣に運ぶ習性があるから、
お腹は、常に密でポッコリ膨らんでるのだそう。
要は、その蜜を貰う訳ですが・・・、
どうやるかとゆーと、
眠ったところを、ズバッと攻撃!
ではなく、
お尻を優しくさすりましょう。
すると、あーら不思議、
蜜が出ます(笑)
いやいや、眠らせてるじゃん?て、当然ツッコミ入るけど、
そうなんです!なんと、蟻は眠ってても、お尻をさすれば蜜が出るんです!なぜなんっ。
なんか・・
あれ・・・
アブラムシみたい・・・
てか懐かしい・・・アブラムシ(笑)
習ったの小学生ですね。
あ、それと
正確には「蟻」じゃないので悪しからず。
私、蟻、蟻、言っとりますが、蟻だろうという所だから。
見た目は、まさに蟻を拡大鏡でみたらコンナ感じ☆くらいに、姿は「蟻」ですわ。けど、実際こんな蟻がいてたまるかよ!って思っとります。歩く度に、関節?接合部?がギチギチいうてるし、
虫の巨大な目はヤバいのよ!虫苦手にはヤバいのよ!お口からオロロロ事件になっちゃうのよ!凝視できません!
ま、
ま、
とりま、
こんな感じで、寝てる「蟻だろう君」にセクハラしまくって、安全に蜜を集めたらね、
固めて、削って、粉にして、砂糖にします(超略めんご)!
お尻シュガーな訳ですよ。
次、こちら!ジャン!
絶対必要岩亀!
体長15㎝くらいの亀で、海辺で生活してる、ちょっと残念な魔物さん。
この亀、海水の塩分を甲羅の表面にまとわせ、徐々に凝固させる特性があって、塩分を毎日、少しずつ積み重ねていく結果、甲羅はゴツゴツとした岩の様な見た目になるんだって。
しかも、塩分を積み重ねた甲羅は、徐々に固さを増して、自然と防御力をUPさせていくから、一見、
この子強いんじゃね?て思うじゃん?
違うの。
岩の様になればなるほど、
比例して甲羅が重くなって、
格段に動きが遅くなり、残念な体長15センチは、
村の小さな子どもたちにも、簡単に捕獲されてしまうくらいの、のろまの魔物になり果てまーす(沈ーん)。
このざんねん亀君、捕獲されたら、甲羅についた塩の結晶を、
おろし金の様なものでゴリゴリ、キレ~イに削られて、
海岸にリリース。
甲羅が軽くなった岩亀は、意気揚々と海に帰って、また甲羅に塩分をまとわせに行くんだと…なんとまぁ。
そして、この削った結晶を集めて、干して乾燥→塩に(超略)。
この世界の、大切な砂糖と塩です。はい。
因みに、海はオキナ国側にあって、海には魔物がうじゃうじゃ…、
でも、気候は年中安定して暖かく、大きな港町もあってか、交易も盛んで、人口も一番多い。
ほぼ獣人の方々で、種族も多種だそうです。
海は、キレイなブルーだけど、海全体の塩分濃度が非常に高い為、
純粋な魚や貝などは生存できなくて、代わりに岩亀の様な、《魔物》が生息しているそうな。
ここまで聞くとなんか、アラビア半島の死海に近いよね。(もちろん、アラビア半島には魔物はいないけど)
はたして、この世界の海は、死海の様に身体は浮くのかな?
トライしたいけど、魔物がいるから挑戦できない。
それに、島国出身者としては、新鮮な魚介類が食べられない事が非常に!非常~~~に残念だけれども、
エル先生の話によると、海の魔物の中には、身の美味しい魔物や、
プリプリの貝の魔物もいるんだって!いるんだってっ!!!
マジか!
でも、、
その、
それって、
ホントに食べて問題ない?
お腹痛くならん?
「魔物ですよ?
ちゃんと魚類なの??
セイウチや、ラッコみたいな哺乳類型の魔物じゃないですよね????
岩亀がいるってことは、両生類の魔物も存在するって事だから、
カ!カカ、カエルみたいなのも…
うひ~~~~~~~!」
両腕を高速で擦りながら地団駄してると、
「メイコ、楽しそうなところ悪いけど、そろそろ続きをやろう」
と、いつの間にか、真後ろまで来ていたアル君が、呆れ顔。
あい、すいません。
また、トリップして作業の手を止めてました。
だってさ、だってさ~『魚介味?の魔物』だよ?そもそも、魔物に意思があったらどうするさ?
想像してみてくださいよ、
テッテレ~♪
芽依子は半魚人の魔物を捕まえた(きっと哺乳類だ)!
↓
いざ、捌こう!
↓
魔物は泣きながら「助けて」とか言っている。
↓
「知るかーっ」
芽依子は問答無用に、包丁を腹に突き刺した!
ザシュ!ブシャーーーッ
↓
芽依子は、見事、三枚おろしにし、プリプリの【半魚人の切り身】を手に入れた☆
イヤッターーーー!!
て、なるかーーーーい!(泣)
魔物がしゃべってる時点で、無理だ~~~~~~~~~ぁ
速リリースだよ!捌けないよ!!!
うう(泣)うえ(吐気)
オロロロ事件
はっ
アル君の目が、さらに残念な子を見る目になってはる。
あい!すいません!
ちゃんと手動かします!
黙々と数える作業に戻りマス!
いやはや・・・
魚介食べたい欲求が強すぎて・・・気を抜くと妄想が
いかん、いかん。
オッホン!話変わって、これ!スパイシーロック!
片手に乗るくらいの大きさの、その名の通り、見た目は、まんま岩!なんだけど、ある条件の下、生まれる貴重な岩で、削って、土や不純物を除くと、胡椒の様な調味料が採れる。ホカド国でしか採れない岩で、ホカドの代表的な特産品の一つ(採掘場所や収穫方法などは極秘なんだって)。この胡椒岩がとにかく貴重で、高級品。なかなか手に入らないらしい。
なぜ、岩の中に胡椒・・て?
わーかりません!
あれだ、気にしたら負けなヤツです。え?
次いきまーす、
乳牛咳牛!
咳牛は、驚くと咳をする牛。
咳をさせ続けないと搾乳できない牛なので、大きな太鼓を叩きながら、搾乳作業をするらしい(どういうこっちゃ)。
太鼓の音と、牛の鳴き声が響き渡るので、耳栓が必須な過酷な作業らしい…壮絶だわ。
などなど、他にも面白い物はいっぱいあるんだけど・・・
こんな感じに、アリア村の家庭菜園や、森などで入手できない食材や日用品が沢山届くのだが、
毎回、荷馬車3~4つが連なってやってくるので、それを見た、近隣の村の住民も、畑の作物や、果物を持ち寄ってアリア村にやってくる。
各々、気軽にバザーをしたり、アリアと物々交換をしたりと、交流をかわしていて、
この、他村からの物々交換を見越して、アリアは納品の量を、毎回多めに発注をかけている様だが、
物品が余ったり、在庫を抱えたりしたことは、ほぼ無い。
アリアの交渉能力が神がかっているのか・・・あっという間に捌いていくから、感心してしまう。
それに日頃、交流の無い他村の方たちとの会話は、私も楽しみにしてる。
奥様方は、子どもの古着の交換をしているし、男性陣は自ら捕った獲物を自慢し合ったり、
自らDIYした家具や雑貨や、狩り用の得物(動物の牙を尖らした様なもの)などを、売買していた。
いつも私たち4人だけの静かなアリア村が、この日だけは一転、お祭りの様な賑やかさなので、
一日ずっと動きっぱなしではあるが、貴重なイベントにテンションが上がりっぱなしの私は、
ワクワクと興奮で、疲れなんか全く感じない。
座っている時間も惜しいから、アル君と立ったまま、食べるサンドイッチも美味しいし、
すっかり仲良くなった他村の子どもたちに、私の世界の遊びを、伝授する大切な任務もあったりして、こんな私でも、この日ばかりは人気者なのだ。モテ期到来っ(子ども限定)
今回は、定番の【ダルマさんが転んだ】を教えたのだが、これはとても大好評で、子どもたちだけでなく、大人も参加して夢中になっている。
ダルマさんは偉大なのだ。
当然、「ダルマってなに?」て聞かれるので、
「赤くて丸くてヒゲの生えた妖精さん」て、ことにしました(笑)
確か、ダルマは、有名な僧侶のお名前だった気もするけど・・・
うる覚えで、ちゃんと説明も出来ないから、ここは妖精さんで。
やっぱりというか、子ども達からは速、「え?ヒゲ??」ってレスポンスがあったから・・・
地面にダルマを描いてあげました。ちゃんと可愛ゆい感じでね☆
ヒゲの妖精さんは、眉毛もガッツリ太くて、濃ゆい顔してんだ~♪
かっこいい手足(筋骨隆々)に、羽はおまけで、ちゃんと書き足しときました。
男の子たちは、「すっげ~~強そ~~~!」と、なかなかの好反応をでしたが、
女の子たちに《キモワイイ》の概念は、まだ早かったらしく・・・全員ドン引きでした。
いやいや・・・きっとその内、キモカワ流行るはずっ
がんばろうぜ!ダルマ!
次回は、【イロオニ】を教えようと考えているのですが・・・
《鬼》も妖精でいけますかね?・・・どう思います?
あ、今更ですが・・・この納品物、
アリア村まで届けてくれてくれているのが、オキナ国の首都ラフテで1、2を争う大商会の、『満月亭』。毎回ここが一手に引き受けてくれています。
首都ラフテは、小さな村々があるだけのキミ国と違って、交易が盛んな大きな都市だ。
そこの数ある商会の中で、私たちがお世話になってる満月亭。
満月亭の代々の店主と、アリアは取引してるらしい。
てゆか、アリアは何歳でしょうかね?
てな訳でして、
まだまだ伝えきれない不気味納品物も、大都市キミ国のことも、おいおい話します。おいおいね、おいおい。
それより、先にお話したいことが!あるんですよー。
やっぱ、《恋ばな》はさみましょ!