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花の国2 カジノ好きの出会い


「そろそろ…… 飯にしようぜ…… はぁ…… はぁ……」


「そうだね!」


メモルは元気に手を挙げた

一方でラウルは既に疲れ果てていたが無理もない


「ラウル~ あそこの店にしよう!」


メモルが指差したのは 港町で一番大きい建物でしかも超一流の店だった


「あのなメモル…… お前金持っているのか?」


「お金って何~~?」


ラウルの頭が下がる


「あのな…… 俺はお前の列車の部屋代まで払っていて財布の中が危機的状況なんだよ」


そう言うラウルは懐からしぼんだ巾着袋を見せた


「別に飯代はあるが味だけを楽しむような……

無駄遣いするほど金は持ってないって訳だ」


「むぅ~~」


メモルは頬を膨らませながらキョロキョロと辺りを見回した


「じゃああれで増やせば?!」


メモルの指差す方向 その先にはカジノと書かれた店がある


ーー記憶無いクセに なんでカジノを知ってるんだ……


「あのなメモル…… カジノなんてのはな……」


「さぁ!! 一勝負してやろうぜ~!!」


メモルは話を聞かず一直線にカジノへと走って行った


「話聞けぇぇぇ!! そしてどこでそんな言葉覚えたぁぁ!?」


ーー……たくっ ……ん? ……まさか!


メモルに続くように 後ろから活きの良いラウルが吹っ飛んできた


「もう…… 勘弁して」


ラウル達がカジノに入って行くと同時に 近くにあの怪しい男達も到着する


「おい!! また見失ったぞ!!」


「そうですね…… あーあ~~ サクラ見たかったな……」


「こいつは……!!」


真面目が皆無の相方に何かが切れそうな先輩だった




一方でラウルとメモルは店内にて


「さぁ!! ジャンジャン稼いじゃおう~!!」


「そんな簡単じゃないんだが……」


「ラウル! お金頂戴!」


「っ……」


嫌々だが遊び代としてメモルに持ち金の2割を渡した


「ありがとう!! 行ってきま~~す!」


メモルはキャッキャとカジノの中へはしゃいで入って行く


「……さて 何してようかな」


ラウルはメモルが遊び終わるまで ブラブラとカジノの中を探検していた


ーーもしかしたら…… こうやる気の無いときだけ当たりがくるかもしれない!

一回くらいやっても罰は当たらないだろう


ラウルは一回だけ目の前にあるスロットを回してみた


「来い…… 来い!!」


画面には77と並び


ーーおぉ!! 来るか!!?


最後の枠には何とも美味しそうなリンゴが姿を見せた


「……まっ これが普通だ どれメモルは終わったかな……?」


その時 目前から見覚えのある空色の髪がこっちに向かって歩いてきた


「どうだった? 見るからに儲かっては無いが……」


ずっと下を向いているメモルに対してラウルはその俯く顔を覘くと


「どうした?」


「やり方……」


「……へっ?」


覘いた先には 涙を流しているメモルが目に映った


「やり方がわかんないよ!!」


メモルの泣き喚く声が 五月蠅い場内に負けじと響き渡る


ーーそうきたか……


「んで金は?」


「店の…… 人に聞いたけど……

金出せば出来るって…… それで怖くなって……」


所々でグスングズンと鼻を啜るメモルを見て

ラウルは浅くため息を吐いた


「来いよ…… やり方教えるから」


ラウルは涙を拭うグシャグシャで赤く腫れた顔をしているメモルの手を引っ張る

このとき 初めて相手から手を握って貰ったのはラウルが初めてだった

彼女はすぐに泣き止み ラウルが慰めている途中には明るい顔が戻っていた


「ほら…… これはルーレットって言ってな! まぁやり方は簡単だから」


メモルを椅子に座らせ 着々とルールを教えてやった


「わかった?」


「わかった!! とりあえず好きな番号に賭け金を置けばいいんだね?!」 


「ん~~ そんな単純じゃないんだけど…… まぁそんなとこだ」


メモルはテーブルにあるナンバーを見始め 即座に賭け金を置いた


「33!!」


メモルは33と書かれた番号の上に賭け金全てを置いた


ーー駄目だこりゃ…… 37分の1だぞ


回転する円盤の中で転がる玉が勢いを無くした瞬間 参加者全員に緊張が走る 

もちろんメモルも意味が分かっていれば 緊迫した空気を共有出来るのだが

おそらく理解していない

そして運命の瞬間 玉は黒の33番に入っていた


「…………マジ?!」


唖然とするラウルに対し

メモルの大声と共に場が騒然とした


「やった~~!! 当たったぁぁ!!!」


「嘘でしょ……」


「あんなガキに……」


「ありえないわ!!」



「……ほんっっっっと あり得ない!!!」



途端にテーブルが引っ繰り返った いや引っ繰り返された


「なんで貴女みたいな!!! 凡人が!!!  ……認めない!!!」


「落ち着いて下さい孤橋様ぁ!! ここにいることがバレますよ!?」


「ええぇい黙れ!! 私に触れるな!!」


何やら高貴な着物を着た女性が

側近らしき人物に抑えられながら揉め事を起こしていた


「誰だ? あいつ?」


ラウルは首を傾げているのと裏腹にメモルはずっと喜んでいた


「ラウル!! 見て見て!!

これで私達お金持ちだよね?!」


「あぁ…… うん…… そうだな」


メモルに返事してやるものの 視線は暴れている女性から逸れなかった


「おい巻!! あの者達を直ちに極刑せよ!!」


ーー無茶苦茶だな……


ラウルは心の中でツッコんだ


「構いませぬが姫がここに居なかったと口実を作るには……

何かと無理があります…… 正直にギャンブルをしてたとでも言うつもりですか?!」


「構わぬ!!」


上から物を言う口調で話す女性は

引っ繰り返したテーブルに足を置いてラウル達を蔑む目で睨みつけた



「妾は【漢の国】娯の将〝第七皇女〟孫孤橋(そんこきょう)であるぞ!!」



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