花の国3 微かに小さな思い出
「花の国にある港町デンファレ
その町から北にあるおよそ町には似合わないカジノがあった
そこでなんとラウル達は 第七皇女と名乗る女性に出会ったのである……」
「……何やってんだお前」
「嫌だな~先輩!! ナレーションっすよナレーション!
一度やってみたかったんスよ!!」
「てめぇは…… まともに情報も伝えられねぇのか!!!」
先輩らしき人は後輩の頭をド突く
「痛っったぁ!! でも先輩
さすがに漢の国関係者の前で暴れるのはマズくないっすか?」
「ドァホ!! カジノから出てきたところを捕えればいいだろうが!!」
「なるほど…… こうして先輩と後輩は下手に動くことが出来ず
暇な時間が再び訪れることになったのでした」
「こんの…… いい加減にしろよ……」
一方 カジノ内では
「おいそこのチビ共!! 妾にひれ伏せぃ!」
第七皇女と言い張る孤橋は ラウルとメモルに怒りの限り罵声を放っていた
「姫様ぁ!! その辺にして下さいまし……!!
この巻の首だけでは済まなくなります!」
「黙れと言うとろうが!! 今日で妾は一文無しじゃぞ!!
なのにあの小娘!! たった一回で…… 許すまじ!!」
孤橋の怒りはヒートアップして行くばかり にも関わらずラウルはさらに空気を濁す
「まぁまぁ姫様 こいつも何も知らなかった上でやったことですし
最初で最後の運を使ったってことで許しくれませんか?
言うじゃないですか~〝やる気の無い奴に限って出る〟って!」
ラウルの発言に孤橋の側近である巻の顔は汗だくになる
恐る恐る孤橋の顔を覘いてみれば 想像通りだった
「殺す…… 此奴等を…… 殺す!!!!」
憎悪の叫びを漏らす孤橋は大きめの扇子を取り出し両手で振り上げる
「純白の銀風 我の詩扇より奏でたり!!」
孤橋を中心に白銀の風が発生し その勢いは徐々に増していく
「これヤバくね?」
ラウルは冷静そうに見えて 冷や汗を掻きながら呟いていた
「これ魔法~~?」
周りが当然のように逃げるのに対し
逃げるに逃げられない状況を作ってしまった汗だくのラウルと
ただ陽気に孤橋を見つめるメモルだけがその場に残っていた
「銀風兎息!!」
風は勢いを増し 辺りにある物全てが風の渦に巻き込まれていく
「妾を……! 妾を侮辱した奴は…… ぶっ殺す!!!」
「そこまでだ孤橋!!」
吹き荒れる嵐が襲う場内を 平然と歩く一人の男
孤橋に近づき静かに彼女の持つ扇子に触れた
「うっ!? 趙炎……」
「陛下がお呼びだ…… すぐに戻れ……」
趙炎と呼ばれる男に孤橋は反抗もせず周囲の風が静まる
「すまない…… うちの皇女が迷惑をかけた……」
趙炎は頭を深く下げた
「……」
「……ん?」
趙炎はすぐに後ろを向き ラウル達とは逆の方へと去って行く
「巻! カジノのオーナーに修繕費をお願いします 行きますよ孤橋」
「覚えてなさいよ……」
孤橋がボソッと呟くと 趙炎の後を追って素直に行ってしまった
「疲れた…… 嵐のような奴だったな」
「今…… あの趙炎って人 私のこと見てなかった?」
「知らねぇよ…… 腹減った……」
床に座り溜息を漏らすラウルとは逆に メモルは思い出したかのように叫ぶ
「あれ? 無い?! 無い無い無い!! チップが無いー!!」
「そりゃそうだろ…… あの阿婆擦れ皇女のせいで全部吹っ飛んだからな……」
メモルは生気が抜かれたように床に倒れた
夕刻 日の入り間近
『まもなくWCT出発します! ご乗車の方は御急ぎ下さい』
アナウンスと共に次々と列車に乗る客人達 ゼッペルは駅でその光景を見ていた
「ハァハァ…… あぁ重いぃ~~」
「これはこれは…… お姫様をおんぶしてのご乗車ですか?」
ゼッペルはメモルを背負って帰って来たラウルに話し掛けた
「その姫様って言葉…… 当分聞きたくないんで……」
そう吐き捨て ラウルはゾンビのように列車に乗り込んだ
メモルをベッドに寝かしつけると自分もベッドに横たわる
「つーかーれーた!!」
睡魔が襲い 寝そうになった時に隣から大声が響き渡る
「当たったぁぁ!!! あれ……?」
「起きたか?」
「私…… 当たったよね?!」
「当たった」
「そして?」
「風に飛ばされた」
「夢じゃないんだ……」
落ち込むメモルにラウルは気晴らしに聞く
「あのさ…… お前の選んだ33 あれ当てずっぽか?」
「違うよ~」
メモルは裏から表に返したように開き直った
「ラウルと私の名前がどっちも三文字だったから!!」
そう言って指を三本立てたメモルはラウルに押し付けた
「なるほど…… それとそこにある袋……
なんも買ってやれなかったからその…… まぁアレだ……」
ラウルは徐々に顔を火照りながらメモルから視線を逸らしてタヌキ寝入りをかます
「え! 何々??」
メモルはすぐに袋を開けてみせる
「え? これって……」
袋に入っていたのは 花の国特産花のカランコリィだった
ーー花言葉は確か…… 〝小さな思い出〟
メモルは不思議と涙で溢れ 横になっているラウルの身体を背後から抱きついた
「ありがとう!! ラウル!!」
「わかったから寝かせてくれよ……!」
ラウルに怒鳴られながらも離れないメモルは ラウルをギュッと抱き続けた
「ねぇ…… ラウル……」
「ん……?」
「これからもさ…… 一緒に旅しようよ」
メモルはどこか遠慮勝ちな態度で言う
「私…… バカで記憶無くて足手まといでさ
頼りないけど…… 他に行くところないから」
ーーそれ ただ俺に甘えたいだけじゃないのか……?!
ラウルはツッコミを入れそうになったが 言う雰囲気では無かった
「ただ目的の無い一人旅をしてもさ 何も見えてこないよ」
ラウルの腹部に当たるメモルの両腕が次第に強くなる
「いいじゃん…… 目的なんて無くても」
ラウルは眠気を抑え込み 言葉を返した
「俺は腕試しっていう旅の目的があるけど……
旅なんてものは目的が無い方が自由で良いと思うけどな」
ラウルは起き上がり メモルと対になる感じで顔を合わせた
同時に列車の汽笛が鳴り響き デンファレの駅から少しづつ移動し始める
「旅は目的があってするより
自由に世界を歩くから楽しいし気付くものがあるんだ!
自分が何者だか分からないなら 何物にも縛られない自由なんだぜお前は!!」
メモルの目に映ったのは
ラウルを照らす夕日の光が希望の光と思わんばかりの輝きに見えた
「だからそのさ…… たまに出るネガティブメモルはもう卒業しろよ!
いつもの明るいアホルに戻れって!!」
「アホルじゃないもん……」
アホルと馬鹿にされて怒ったメモルは 涙を流しながら笑って言い返した
「ニコニコ笑って ドジっても
明るく行けばいいんだよ…… 今も…… これからも」
と言ってラウルはベッドにうつ伏せになり 枕を頭上に乗せて顔を隠すように寝てしまった
メモルは窓から見える夕日を見て涙を腕で拭い取り その夕陽に負けない笑顔をラウルに向けて作ってみた
ーーありがとうラウル…… 本当に……
列車は行く 次の目的地を目指して
「うぉぉぉぅい!!!!!!!!
行っちまったじゃねぇかぁぁぁ!!!!」
「行っちまいあしたね~~ でも見て下さい先輩!!
サクラの木の枝! 枝!! 枝だけでもすごい綺麗ですよ!!」
「お前は…… 殺す…… 絶対いつか殺す……」
「いいじゃないすか~~どうせ待機なんだし~~ 仕事に支障出ませんよ?」
ーーなんでこんな奴とタッグなんだ……
先輩の方は頭を抱え 大きくため息を吐く
「列車は次どこへ向かう?」
「次は…… あれですね あの世界一広い闘技場で有名な国【ガルバーク帝国】っすね」
「……マジかよ」
ーー行きたくねぇぇぇぇ!!!




