隣国ヴァジュラ1 不縁な再会
魔法を職とする国ヴァジュラ
ここでは魔蛍操作を体得したものでしか貢献出来ない場所が多く
その中でも暗黙・必須条件となるのが魔蛍操作基礎中の基礎
〝纏蛍〟〝魔装〟 〝魔式蛍術〟またの名を〝魔法〟
この三つを覚えて初めて職を物にできる
体得出来ない者 主に女性や子供も普通に暮らすことは可能
魔法じゃなくても手に職を持つことは少なからず無理ではない
収入源も豊富であり 魔法と言う文化を取り入れている七大国の中では
地下闘技場とギルドを最初に築いたライゴク王国のオーガ王は成功者だろう
ちなみに発案者は大臣のガタルゴである
中央王都から少し離れた場所に位置する市街地〝バラ〟
その端にある高台の草原に 一つだけ建つ民家があった
「先生!! おはよう!!」
「ございますを…… 付けろ!!」
玄関の前で大声を出す少年にいきなり殴り掛かる男
少年の後に続いて二人の男女も挨拶する
「「 おはようござます! 先生! 」」
「ウムウム!! おはよう!!」
後ろの二人には笑顔で挨拶を返す老人
そして三人の間に挟まれて頭を押さえる少年が叫んだ
「今日こそ魔法教えてくれるよな! 先生!!」
「オマにはまず言葉使いを教えたる」
「チッ…… 基本の操作は覚えたんだろ?! オグル先生?!」
オグルと呼ばれる男は少年を無視して背を向ける そして深く空気を吸い込むと
「こらぁぁぁぁぁぁ!!!! クソ餓鬼共ぉぉぉぉぉ!!!!
いつまで寝とるかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」
唐突に三人が耳を塞ぐ程の大声を拡散させた
しばらくすると家の中から寝癖まみれのもう一人の少年が頭を掻きながら出て来た
「もう一人はどうした?」
「ふぁ~~~~……」
寝癖の少年が欠伸で答えるのに対し オグルは溜息を吐いて町の方を見た
「ったく…… 拾ってやったらぁ勝手な行動ばかり取りよって……」
「先生!! 早く修行始めてくれよ!!」
「だったらオマら ニクロを連れて来い!! 五人揃ったら開始したる」
オグルの無茶振りにやる気無く返事した三人は急いで街中に出向く
「まったく…… アイツの所為ですっかり日課になったなぁ」
「まぁまぁ! 準備運動ってことで捜しに行こうよライト」
「イリアは甘いんだよ……」
愚痴を大声で漏らすライトに対して優しく励ますイリア
「そうだよ…… 俺達は仲間だろ?」
「ハァ…… ダルタ~~ お前も優し過ぎだって!!」
三人揃ってランニング感覚で町に下りて行く
その後ろをダルそうに歩く寝癖の少年をオグルが呼び止めた
「ニクロを捕まえられんのはオマくらいだ 頼むぞヴェル」
「……ハァ」
ヴェルは渋々駆け足で町に向かった
バラの中心地
店を覗けば商品が宙に浮いてたり自然現象を縮小した便利用品が並んでおり
頭上を見上げれば絨毯や丸みを帯びた四角い箱に乗った住人が行き来している
そんな中で見るもの全てが未知の領域に立たされていたのはニクロだった
必死に何かを探しているようだが
「すんません」
「へいらっしゃい!! 良いもん揃えてますぜ~~!!」
とある店に立ち寄ったニクロは 両手を擦りながら寄ってくる店主に聞く
「今から海に出る船ってあるか?」
「はい??」
首を傾げる店主にニクロはもう一度同じことを復唱する
「お客さん…… そないな用なら他所あたってくれまっか?
冷やかしは商売人にとって一番ドン引くモンでっせ?」
「冷やかしじゃ……」
ニクロは途中で言うの止め 港へと向かった
ーーやっぱお前みたいに何でも返してくれる奴はそういないな アイディー……
するとニクロは不意に足を止め 近くの店の前に出ている商品が気になった
「これって……」
近付くと店の奥から店主と思われる 中々年齢を重ねた老人が現れた
「お前さん…… これに興味があるのか??」
ニクロの見ていた品は宝の地図だった
「200ルピアで売ってやる どうだ??」
「興味はあるんだが硬貨は持ってない 冷やかし悪かったな」
彼が立ち去ろうとしたその時
「お主…… 奴隷じゃな?」
ニクロは焦るように振り返った
「怖がらなくてもよい 別に通報などしはせん……
ここは奴隷制度などとは程遠い大国ライゴク王国じゃぞ?」
「…………」
「これも何かの縁じゃ この地図のことを教えてやろう」
「はぁ? これが何だってんだ? 普通の宝の地図だろ?」
「これは〝無黒〟と呼ばれている宝の在処を示す地図じゃ」
「無黒??」
ニクロにとってその言葉は妙に気掛かりになった
「遥昔からこの地図は測量士から測量士へと写し渡され
現物と同じ物なのかは信用出来んがこれがどの場所を示す地図なのか
昔から全く解明出来なくてな いくつもの航海士が諦めたのじゃ
もしくは命を落とした呪いの地図なのだよ」
「目的地がわからない地図……」
「そう…… だから無黒の地図 勝ち星で色を塗る輩はまだ現れておらん
人によっては呪いの地図と言う奴もおるな
そんな地図だが 僅か数日前に体中傷だらけの旅人がワシんところに置いていきよってな?
店自体が呪われそうで気味が悪いってもんじゃよ……」
「そんなのを俺に売りつけようと? しかも奴隷関係ねぇじゃねーか」
「いや…… それがな……」
「あら?」
ニクロは声のする方を見た 直接会ったことは無いが
身の毛がよだつ絶対会ってはいけない
そう脳みそが警告しているような人物は彼の目の前にいた
「こ…… これはこれはサクバサ様……」
店主は怖気づきながらも挨拶した
口を開けないほどの恐怖を感じる彼は
奴隷の天敵とも言えるルシファード教会の幹部サクバサ・フレイアント
「あなた…… どこかで会ったかしら?」
恐怖のあまり身動き一つ出来ないニクロ
いつバレてもおかしくない状況だが 何も言えない自分の弱さを呪った
「…………」
「奴隷に似たような顔が何人かいたんでしょう!!
こいつは近所の知り合いで小さい頃から見ていますから人違いでしょうな
ワッハッハッハ!!!」
咄嗟に割って入る店主が救世主の如くニクロを庇った
「そう…… 出会ったついでに聞きたいことがあるんだけど」
「はい?」
「ここ最近でちょっとした事件に巻き込まれてね
私の奴隷がここに飛ばされたって聞いて来たんだけど 心当たりなぁい??」
その言葉に敏感に反応するニクロは 目を合わせはしないが聞く耳だけを機能させた




