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大国漢の国 首都洛華4 縁巡りの格率


ほとぼりも冷めて時刻も真夜中になっていた

劉徳と張車と別れて趙炎と関尾の二人は港の方へと歩いている


「里に変えるのか?」


「はい 馬のことも心配ですし」


関尾は突然進路を変えて静かな高台を目指し始めた

趙炎は訳分からず付いていく


「どうしたんですか?」


「まぁ座れ……」


その場に腰を降ろして二人は目の前の海を一望する


「趙炎…… 今年で二十一か?」


「酒飲みましたよ?」


「ハハ…… そうだったな」


「なんです?」


「妻との間に子供を授かってな……」


「えっ?! おめでとうございます!」


趙炎が嬉しそうな顔で祝う圧に関尾は驚く


「そうか…… 祝ってくれてありがとな」


「お名前は?」


関平(かんぺい) どうだ普通の名だろ?」


「意味は?」


「無い…… これからの時代には必要無いからな 自由に生きさせるつもりだ」


少々驚く趙炎を関尾は見て笑う

何も触れずに持ってきた酒を飲み 何も言わずに趙炎に渡す


「桃酒…… え?」


「一つ約束事だ…… 飲んでくれ」


「何を?」


「息子を守ってくれ…… 頼む」


「どういうことですか?」


「何も言わずに呑んでくれ!!」


静かな風が流れる 趙炎は考えても意図が読めずにいたが別に応えることに抵抗は微塵も無い


「言われなくても…… 貴方の息子さんを他人に見る事は出来ませんよ」


その言葉に関尾は胸を打たれた

そして趙炎から見られないよう顔を隠し その表情は普通では無い


「俺は関尾さんを尊敬しています…… 父として」


「?!」


「親がいなくても…… 常に貴方がいた 育ててくれたのが貴方と貴方の奥様でした」


「…………」


「俺の意地です! 弟さんは守らせて頂きますよ!」


「っ……」


趙炎は残りの酒を全て飲み干して空瓶を関尾に返す

港に向かう趙炎の後ろを歩く関尾は持っていた酒瓶を強く握り締めていた

船着き場には将軍が自分の国に帰る為の船が特別に備わっている

彼はそれに乗って関尾の方を振り向くと


「では…… 奥さんには挨拶しておきますので」


「あぁ…… 悪いな」


「それではお休みなさい」


「……趙炎!!」


中に入ろうとした趙炎は急いで関尾の見えるとこまで足を戻し


「俺もお前を他人だと思った事は無いぞ!!」


「っ……」


その後の事は恥ずかしいのか 関尾は言葉を詰まらせてしまった


「……ありがとうございます」


趙炎は一礼した後でも関尾を尊敬の目で見る

船は動き出し 趙炎が船内に入っても関尾は港の端で見送っていた

寝室で水を飲む趙炎もまた 窓から見える月を見ながら関尾の言葉を思い出していた


ーー他人では無いか…… 一方的ではなかった


月明りに照らされる趙炎の微かな笑みが 将軍とは遠く離れた子供の顔となっている

しかし急に顔色が悪くなって洗面所で吐き気と闘う


「……飲み過ぎた」


フラフラとベッドに倒れた趙炎はそのまま目を覚ます事はなかった



〝 ………… 〟



ーー声が聞こえる 聞き覚えのある声だ


〝 妻を…… 返せ…… 〟 


次に映像が出る ぼんやりとしているがとても明るく 胸のざわめきが逃げ場無く襲ってくる


〝 何故…… 主君は裏切った……?! 〟 


〝 俺は悪くない…… 戦争があるからいけないんだ 〟


〝 何故…… ……は…… ………を…… 裏切った…… 〟


〝 私達は貴方方に…… 忠実だったのに…… 何故差別したんだ〝創設神〟よ 〟


誰かが揺すっている感覚を最後に趙炎は目を覚ます

自分の身体は汗だくとなっており 周りを見渡すと船長が心配そうにこちらを見ていた


「飲み過ぎですよ趙炎殿 そして到着しましたので準備の方を」


「…………」


船長は趙炎の安否を確認すると 安堵して船室を出て行った


「何だったんだ?」


不思議な夢に混乱する趙炎は 覚えている限りの夢を整理してある一つの疑問を抱く


ーー誰の夢だ? いや…… 複数ある 大雑把な映像でも一人の記憶ではない


訳が分からず考えることを止めた

洗面所で顔を洗い終えると支度を整えて船室を出る

外に出ると自分の生まれた島 かつて燭季漢の国と呼ばれていた故郷が目の前に広がっていた


「ただいま……」


そう呟きながら船を降り 船着き場付近で深呼吸をする

洛華で買ったお土産を持って趙炎は自宅へと帰ると

近付いてみて分かる月明かりに照らされる見知った顔

というよりも幼少から育ててくれた関尾の奥さんが出迎えてくれていた


「お帰りなさい趙炎 随分と遅い戻りだったじゃないの?」


「ただいま戻りましたおばさん! 関尾殿と祝杯を上げてまして……」


「まったくあの人ったら…… よっぽどあなたと酒が飲みたいらしいわね」


「ハハ……!」


ふと趙炎は庭の椅子の上にある嬰児籠エジコの中をそっと覗いた


「初めましてだな関平!!」


趙炎の顔を見た赤子の関平はいつになく山岳より昇る太陽に劣らず笑っていた


「そういや趙炎 あの娘来てるわよ!」


「……やっぱりか」



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