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蛍籠  作者:
21/119

第20話:反撃

 夕方になり美智は、自宅のリビングで飲みの準備をしていた。

 まだまだ、早い時間なので仕事組の二人はまだ来ないだろう。


 「功の奴、少しは早く来て準備を手伝うっていう考えはないわけー」


 と言っても、女将さんが用意してくれた料理を並べるだけだけど…………。


 ――――ピンポーン!


 玄関のインターホンが鳴ったので功が来たのだと思い、ドアを開けるなり怒鳴る。すると、そこに立っていたのは、功ではなく明だった。


 「功! 遅い!!」

 「あ…………、ごめん。一人で準備させちゃってた?」

 「明? どうしたの? 仕事は?」

 「今、試験前だからね。それとこれ。うちから何本か持ってきた」


 そう言って明が差し出したのは、ビールや日本酒、洋酒だった。


 「ありがとう。っていいの? これけっこう高いよ?」

 「いいんだよ。どうせうちの家族は飲まないから」

 「そっか。あっ、どうぞ入って、入って」

 「おじゃまします」


 明を家の中へと招き入れる。


 「昔と変わってないね」

 「うん。ほとんど家具とかは置きっぱなしだからさ。適当に座って?」


 美智は明をリビングに通すと台所にお茶を取りに戻る。そして冷やしておいた麦茶をコップにそそぎ、リビングへと戻る。


 「はい。お酒はもう少し我慢してね?」

 「うん。…………………もしかしてまだ功は来てないの?」

 「そうなの。暇人なんだから手伝ってくれてもいいと思わない?」


 それからお互い仕事のことやプライベートのことあたりさわりなく話していた。

 美智はせっかく二人きりの機会だから思い切って美花の日記に記されていた事を聞いてみることにした。


 「明。あのさ、美花から何か預かってないかな?」

 「預かってるもの? あったかな…………例えばどういった物?」

 「ノートとか資料の束だと思う。もしかしたら何かに入れて保管してるかもだけど」


 美智の言葉に明はしばらく考え込んでいたが、何か思い当たったのか表情を変える。


 「あれかな。大学ノートくらいの大きさの缶なら預かった覚えがある。でもあれは…………」

 「あれは?」

 「鎖でぐるぐる巻かれて錠もかけられてた。鍵は、美花が持っていたから誰にも開けられない。それに誰にも秘密にして欲しいって言われたから。美智にも渡せない」

 「美花が隠したがってるのは知ってる。でも、どうしてもそれが必要なの!! 私達が前に進む為にも」

 「美智?」


 明は、美智の必死な形相を見て、どうしようか迷っていた。でも、あれは美花が死ぬ前に自分にたくしてくれたもので、その約束は自分にとっては遺言にも等しい。


 「美智。君と功は何をしているの?」

 「え?」


 明は、夏美から相談されていた件を聞いてみることにした。


 「別に何もしてないよ」

 「嘘だ」

 「嘘じゃない」

 「美智は昔からそうだ。自分には隠し事や嘘が苦手なのを知っているからわざと顔に出さないように無表情になるよね? ずっと一緒にいた僕には分るよ」

 「明………………」


 明は、美智の手に自分の手を重ねて直も言い募る。


 「僕達に話さないのは巻き込まないためだよね? そしてそれは美花の事件のことだろ? さっき、言ったよね、前に進む為には必要だって。それは僕と夏美にも同じことが言える。十年前で時間が止まってしまっているのは君達だけじゃない。僕と夏美もなんだ」

 「………………」


 思いがけない展開に美智は、言葉を発することが出来なくなってしまった。

明が攻めに出てます。

次話は夏美が攻めに出る予定です

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