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ゆっくりと

翌日。


ルシアはいつものように仕事を終えると、中庭へ向かった。


扉を開けると、カイルは木の下で本を読んでいた。


「こんにちは、カイル様」


「こんにちは、ルシア」


昨日までなら、少し離れた場所に座っていたルシアだったが、今日は迷いながらもカイルの近くへ歩いていく。


「……ここ、座ってもいいですか?」


カイルが少しだけ目を細める。


「もちろん」


ルシアはカイルの隣へ腰を下ろした。


以前のようにぴったり隣ではない。


けれど、昨日よりはずっと近い。


「今日はお仕事、終わった?」


「はい。昨日より早く終わりました」


「それならよかった」


カイルは本を閉じる。


「昨日、僕が手伝ったからかな」


「……そうかもしれません」


ルシアが小さく笑う。


そのとき、植え込みの向こうから猫が姿を現した。


「にゃあ」


「あ、また来ました」


ルシアが嬉しそうに振り向く。


猫は二人のところまで歩いてくると、今度はルシアとカイルの間に座った。


「ふふ。今日は真ん中ですね」


「ここが気に入ったのかな」


二人で猫を見つめる。


肩が少し触れそうな距離。


ルシアはふと気づいたけれど、今日は離れなかった。


カイルも何も言わない。


ただ、猫を撫でながら穏やかに笑っている。


「……なんだか、前みたいですね」


ルシアがぽつりと言った。


「うん」


カイルは静かに答えた。


「少しずつ、戻っていけばいいんじゃないかな」


ルシアはその言葉を聞いて、安心したように笑った。


「……はい」


そしてその日から、ルシアは中庭でカイルの隣に座ることが、少しずつ増えていった。

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