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猫を追いかけて

城の中を、ルシアは小さな足音を立てながら歩いていた。


新人侍女として働き始めて、まだそれほど日は経っていない。


仕事にも少しずつ慣れてきたものの、城は広く、知らない場所もまだ多かった。


そのとき――


廊下の先を、一匹の猫が横切った。


「あっ」


白と茶色の毛をした猫だった。


猫はルシアのほうをちらりと見ると、そのまま開いていた扉の隙間から中へ入っていく。


「待って」


ルシアも思わず後を追った。


猫が入っていった先は、城の奥にある中庭だった。


扉を開けると、そこには静かな庭が広がっていた。


色とりどりの花。


風に揺れる木々。


人の気配はほとんどない。


「猫ちゃん、どこに行ったのかな……」


ルシアは辺りを見回した。


すると――


少し離れた木の下に、人がいることに気づいた。


青年が一人、木の幹に背を預けて座っている。


膝の上には一冊の本。


静かな場所で、のんびりと読書をしていた。


ルシアは少し迷ったあと、その青年に近づいていった。


「あの……」


青年が顔を上げる。


「うん?」


穏やかな声だった。


ルシアは周囲を見ながら尋ねる。


「猫を見ませんでしたか?」


青年は少しだけ考えるように中庭の奥へ視線を向けた。


「猫?」


「はい。さっき、ここに入っていったんです」


「ああ」


青年は本に挟んでいた指を抜き、ページを閉じた。


「中庭の奥に行ったよ」


「奥ですか?」


「うん」


青年が指を向ける。


「たぶん、あの辺」


「ありがとうございます!」


ルシアはぺこりと頭を下げた。


そして教えてもらった方向へ、急いで歩き出す。


数歩進んだところで、ふと振り返った。


木の下で、青年はまた本を開いている。


ルシアは少し不思議に思いながらも、猫を探すために中庭の奥へ向かった。


――それが、ルシアとカイルの最初の出会いだった。

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