表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/69

第22話 村の発展

 ピコに誇れる大人になろう。そう考えて、獣人の集団を拠点へと招いたのだが、結果としてこの判断は大正解だった。


「じゃあ、次はこの辺りに建てればいいんだな?」


 野太い声で尋ねるのは獣人の中年男性のカペタだ。やたらと体格がいいが、戦士ではなく職人らしい。そしてなんと大工知識がある。大工知識があるのだ! これだけでも拠点に招いて良かったと言える。しかも、着の身着のままに見えた彼らだが、最低限の道具は持ち込んでいたようだ。そう、彼らの移住とともに道具がやってきたのだ!


 素晴らしい。実に素晴らしいと言える。


 カペタの主導ですでに俺の作ったボロ小屋はリフォーム済み。というか、解体して建て直した。資源の関係で、こぢんまりとしたサイズに変わりはないが、快適性は大きく向上。なんと暖炉までついてるので、これで冬の寒さに凍えずにすむ! まぁ、薪の確保は必要だが。


 ともかく、カペタの存在により、懸念だった寒さ対策に目処が立ったのは大きい。今は、住人用の住居づくりに取り組んでもらっている。


「そうですね。スキルツリーの東側の用地を皆さんの住居にしようも思っていますので、ここから向こう側に建ててもらえると。土地が足りなければ言ってください。整地しますから」

「聖樹の東側な。あいよ!」


 カペタをはじめ、獣人たちはスキルツリーを聖樹と呼ぶ。無限の食料と、ときどき便利なスキルを授けてくれる不思議な木。しかも、女神らしき存在の導きでたどり着いた場所に生えているのだ。そう呼びたくなる気もわかないでもない。その気持ちは尊重しよう。しかし、俺は意地でも呼ばないからな。あのポンコツがくれた木を聖樹と呼ぶことなどできはしないのだ! 便利だから最大限活用させてもらうが、それはそれというものである。


「おーい。妖精たち、手伝ってくれ!」

「いいよ! 何するの?」

「穴掘り?」

「木を運ぶ?」

「まずは穴掘りだ。俺の言うとおりに掘ってくれ。余計な場所は掘らないようにな!」

「「「はーい!」」」


 建築には妖精たちの力を借りる。はじめは面食らっていたカペタも、もう慣れたものだ。細かく指示することで、彼らの能力を生かしている。おかげで、家が建つのが早いのだ。この調子なら本格的に寒くなる前に住人の家が出来上がりだろう。


「村長、狩りに行ってくる! ノアとタイガも連れてくぞ!」

「にゃー」

「ニャ!」


 大声で俺に声をかけてきたのは、ファンガ。獣人たちを率いているリーダーのような存在で、最初に出会ったときも中心になって話していた男だ。強面だが情に厚く義理堅いらしい。彼等を受け入れたことを感謝して、俺に仕えるとまで言っていた。ただ、こっちとしてはそう言われても困る。配下を持つような身分ではないのだ。なので、その申し出は断ったが、代わりに村長になってほしいと言われてしまった。


 先に住んでいた俺たちを立ててくれるということだろう。レンは子分だし、ピコは娘だ。ノアさんには言葉の壁がある。となれば、やはり俺しかない。というわけで名目上のことだろうが、村長の役目を引き受けた。まぁ、村長だからといって特別やらなきゃならないこともない。気楽なものだ。


「わかりました! 気をつけてくださいね!」

「ああ、大丈夫だ! 獲物を期待しててくれ!」


 ファンガは数人の獣人とノアとタイガを連れて森に入っていく。目的は食料と毛皮の確保だ。


 スキルツリーは毎日大量の実を生み出すが、その数には限りがある。三十人もの獣人を受け入れたことで、ついにスキルの実だけでは食料を賄えなくなってしまったのだ。そこで足りない分を狩りで補うことにした。


 幸いなことに、十分な戦闘力があれば、この森は獲物が豊富だ。その戦闘力が一番のネックなのだがノアさんがいれば概ね問題はない。さらに、ファンガの強さにも目を見張るものがある。ノアさんすら認める強者なのだ。ノアとファンガが協力すれば大猪でさえ仕留められる……というか、実際に仕留めてきたので怖いものなしだ。正直、喜ぶよりもスキルなしなのによくやると呆れてしまった。


 ファンガの強さは他の獣人と比べても一線を画している。レンが言うには、クロニクル・オブ・ロードの有力キャラクター、いわゆる英雄キャラなのではないかとのことだ。


 英雄キャラには各勢力の初期英雄のような固定キャラの他に、ランダム生成の英雄がいるらしい。ランダム英雄は主にスカウトによって加入する在野の英雄キャラで、能力や容姿はプレイごとに変わるのだとか。基本的には固定英雄と比べると少し見劣りするくらいの能力らしいが、それでも一般兵と比べれば格段に強い。ファンガを見れば、その評価にも納得だ。


 彼らが毎日、食料を供給してくれるので非常に助かっている。


 食料の他にも重要なのが毛皮だ。これは防寒具に利用する。雑草加工術で服は作れるが、あれは寒さを凌ぐという意味では無力だ。綿花があればどうにかなりそうな気もするが、ないものは仕方がない。毛皮も無加工では虫が湧いて使えないが、集団の中には狩人もいて、鞣し加工の知識があった。おかげで、何とか防寒着の確保もできそうだ。


 今のところ、村の運営は順調だ。しかし、これから来るであろう冬を考えると不安はある。寒さへは対処できそうだけど、食料がなぁ。


 果たして、冬も今と同じように獲物が狩れるんだろうか。野生動物は冬眠で姿を消す。魔物はまた別かもしれないが、一抹の不安がある。不安があるなら、それを解消するのが村長としての役割だ。たとえ、名目上であってもな。


 一応、野菜を育てる準備はある。今も、子どもたちがはしゃぎながら畑に種を蒔いている。これも、獣人たちが備えとして持ち込んだものだ。寒い時期に採れる作物が中心で、今からでも収穫は間に合うらしい。ただ、それは彼らが暮らしていた土地での話。環境が違うこの地でしっかり育つ保証はない。やはり、もう少し保険が欲しいな。


「うーむ」

「ケント、どうした?」


 いつの間にかすぐそばでピコが首を傾げていた。他にも三人の子どもたち。年が近いからか、すぐに仲良くなって、ピコを含めて一緒にいることが多い。一人は少しお姉さんのリコ、残る二人はピコと同じくらいの年頃で女の子がアム、男の子がルオだ。


 唸っていたせいか、ピコはともかく他の子は不安そうだ。これはいかんな。笑顔。笑顔だ。


「食べ物を増やすにはどうすればいいかなって考えていたんだ。食べ物はいくらあってもいいだろ?」

「おお!」


 素直なピコは目を輝かせて喜んだ。他の子も深刻な話じゃないと思ったのか、不安そうな表情は消えている。よしよし。やっぱり笑顔は大事だな。


「うまい実、増やす!」


 ちょうどスキルツリーのほうを向いていたので、ピコはスキルの実を増やす話だと思ったようだ。もちろん、それができたら助かるのだが。


「種を蒔いたら増えるかな?」


 ルオが首を傾げながら言った。さっきまで種蒔きをしていたからこその発言だろう。


 これには目から鱗が落ちる思いだった。スキルツリーは俺が能力としてもらった特殊な木だ。さらにはホームオブジェクトとしての特性を合わせもっている。そのせいで、増やそうという発想がなかったのだ。


 だが、残念ながら問題がある。


「スキルの実に種はないんだよね」

「あ、そっか……」


 あらら、シュンとしてしまった。良い意見だったから落ち込む必要はないんだけどな。


 しかし、話はそれで終わらない。


「種がないと増やせないね」

「でも、お父さんが木は種がなくても増やせるって言ってたよ。ええとね、接木って言うんだって」

「だったら、あの木も、増やせる?」

「どうかなぁ」


 女の子三人の何気ない会話だったが、雷に打たれたような気分だった。


 接木……接木か。ひょっとしたら、ひょっとするのか?

ファンガ 種族:獣人

クロニクル・オブ・ロードの英雄キャラクターの一人。ランダム英雄なので、能力値はプレイするごとに異なるが、基本的な傾向としては戦闘と統率が高めのキャラクターとして生成される。

現実となったこの世界ではわりと上振れした性能で登場。ゲームと違って単純に数値化できないが、無理矢理するならこんな感じ。


戦闘:89 統率:70

知略:49 工作:22

話術:37 商才:23

儀礼:19 義理人情:72


能力値は普人の素養の上限が100くらいの想定。種族によって上限は異り、また成長によって伸びるので100を超えることもあり得る。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ