表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

118/118

第118話 味方する理由

 それ以上の情報は出てきそうになかったので、尋問を切り上げる。ひとまず、ボルヴァスはそれなりの待遇で扱うことになった。自由は許さないが、拘束もしない。見張りをつけて軟禁という感じだな。


 この対応はアムフェリクスという謎の存在を考慮した結果だ。その目的によってはドラクハイム以上の敵となりうる。その場合、ドラクハイムと手を組む可能性もなくはないというわけだ。セルヴァンや取り巻きたちは難色を示したが、手札は多いほうがよいと主張して受け入れさせた。なお、転移については知られたくないので、アラヤ村には連れていかず、ユーリッドに留め置いている。


「さて、どうしたものか……」


 スキルツリーの周囲で、方針会議を開く。それほど大げさなものではなく、ちょっとした相談みたいなものだ。


「ボルヴァス王子を捕虜にしたことはドラクハイムに通達したほうが良いでしょう」


 まだ少し顔色が悪いセルヴァンが意見を述べる。ボルヴァスを捕らえたことを伝え、返還を条件に完全撤退と賠償金の支払いを要求するつもりのようだ。


「それで向こうが頷くのか?」

「そのまま受け入れることはないでしょう。しかし、条件を変えて交渉をしてくる可能性はあります。その間、時を稼げるのは悪くないでしょう。それに王子が捕らえられたことが兵たちに伝われば、士気は落ちます」


 なるほど。時間を稼げば、非戦闘員をアラヤ村に避難させることもできる。交渉の成否にかかわらず、こちらにはメリットがあるな。


「アムフェリクスのことも探れますからね」


 レンも頷いて賛意を示す。たしかに、それもあるな。


 アムフェリクスについては、今のところ何の情報もない。クロニクル・オブ・ロードに関連することなら、レンに聞けばわかるかと思ったが、残念ながら聞き覚えがないそうだ。たまたま知らないのか、それともゲームには登場していない存在なのか。今のところ、はっきりとはしていない。


「ローニー。アムフェリクスについて教えてくれ」


 声をかけると、ローニーがビクリと肩を揺らす。眉を下げた困り顔で口を開いた。


「教えるのはいいけど、私たちが知っているアムフェリクスとはたぶん違うわよ。無関係とも思えないけど……」


 そう前置きしてローニーが話しはじめる。それによれば、アムフェリクスはかつて存在した獣人の国アーリマーニの守護神的な存在らしい。


「私の知る限り、アムフェリクス様の名前を冠した組織はないわね」


 守護神の名前としては知っているが、ドラクハイムで暗躍している者たちの素性は知らないということらしい。


「その名前は広く知られているのですか?」


 レンが口を挟む。ローニーが顔をしかめて、首を振った。


「それは……ないと思うわ。周辺国なら多少は知られているかもしれないけどね……」

「つまり、アムフェリクスを名乗る集団は、アーリマーニの関係者だということか?」

「そうなるでしょうね」


 ローニーが頷く。その脇で、ラピードが何か言いたげな表情で俺を見た。


「どうした、ラピード」

「それだけではない」

「と言うと?」


 問い返す。だが、ラピードからの返事はない。


 その様子に、ローニーがハァと息を吐いた。


「頼むから意見があるならちゃんと言ってちょうだい」

「むぅ」


 面倒くさそうにラピードが首を振る。それでも、短く息を吐いたあと、ぼそりと呟いた。


「あえてその名を出したのなら、自らの所属を明らかにする意図があるのではないか。その者たちは俺たちの同胞の可能性がある」

「そういうこと……たしかにそうかもしれないわね」


 ラピードの指摘に、ローニーが憂鬱そうに同意した。ウェルも言葉こそないが、僅かに眉根を寄せて頷く。


「同胞? アーリマーニの生き残りって意味か?」

「その中でも、領土を取り戻してアーリマーニを復興させようって考えの一派ね。私たちとは別にスカウト活動をしている仲間が何組かいるのよ。そのどれかがアムフェリクスを名乗ってドラクハイムに接触した可能性はあるわ」


 なるほど。地道なスカウトよりも、国の上層部に食い込んだほうが味方を増やすには手っ取り早いとか考える者がいても不思議ではないな。同じように他の部隊が別の勢力に取り入ったときのことを考え、仲間内では所属がわかるように、アーリマーニの生き残りだけがわかる言葉を組織名として使ったわけか。


 しかし、そうなるとローニーたちをどう扱ったものか。今は一時的にアラヤ一家に雇われているが、このままでは仲間内で争うことになるぞ。


「お前たちはどうするつもりだ?」

「向こうに合流するかって話? それはないわよ。私たちはあなたたちに協力するって決めているから」


 ローニーは迷いなく俺たちにつくと告げた。腹芸は得意ではなさそうなので、おそらくは本心だ。しかし、だからこそ疑問が残る。アラヤ一家に肩入れする理由は何か?


「ありがたいが、それはなぜだ?」

「んー……」


 少し考えこむローニー。その傍らでウェルが何か囁く。ラピードも頷いて同意を示し、それでローニーの心も決まったようだ。


「前にも言ったかもしれないけど、私たちは探し人がいるのよ」

「ああ。大猫のことか?」

「聖猫様ね。もっと言えば、聖猫様が守護しているはずのアーリマーニの公女よ」


 公女……?

 ええと、貴族の娘ってことだったか。それとも、公爵家の娘?


「その公女がどうした」

「もしかしたら、あなたの娘——ピコちゃんがそうじゃないかって思っているの。残念ながら確証はないんだけどね」


 はぁ!?

投稿スケジュール変更のお知らせ

最近、書き進められないことが多くなって毎日更新が厳しくなってまいりました。

本作投稿を水曜日、土曜日の週2投稿にさせていただきます。

というわけで次回投稿は土曜日です。

m(_ _)m ごめんなさい

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ