表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
愚者を仰げ  作者: 柊 要
1章
20/54

5 「ランゼ視点」


改めてこいつら人間じゃねえな。と目の前を悠長に歩く三人を見ながら、

盗賊の少年こと、ランゼは息を吐く。思い出されるのは数秒間の出来事。

現れた敵を容赦なく手持ちの武器で殺していったのである。

殺すことへの恐怖心や嫌悪感が一切見られない。

躊躇なく殺しているところを見た時は、強い吐き気に襲われた。

背中に冷や汗が伝う。

本当にこの人たちを頼った自分は、正しかったのだろうか?

いや、正しいはずだ。僕によって被害を受けたというのに、

事情を聴いて、見捨てずに此方を助けるなんて言うお人好しはいないだろう。

僕はこの人たちに、いや、時さんに感謝しないといけないんだ。

そのためにも、この人の役に立てるようになりたい。


「ん〜!弟君の場所分かったよ!この先にある地下に幽閉されてるんだって!」


元気よく報告したのは色さん。片手には血まみれになった盗賊がいた。

あの盗賊は知っている。確か強さでも、功績でもトップレベルだったはず…。

色さんはこの中で一番強いと思う。

血を見たら少し動揺する時さんとは違って、何も気にすることなく対応している。


「どうしてそんなに強いんですか?」


と聞いてみると、


「昔っから熊と戦ってるからかな~?」


と帰ってきた。

熊と戦うってなんだ?もしかして素手?聞いたときは信じられなかったが一緒に行動している素手で戦っていると信じるしかなかった。

でも、戦っている時は自然と目が奪われた。

嗚呼。これが「憧れ」という感情なのだろうか?憧れという感情を抱けるような環境ではなかった。

僕にとって、彼女たちは希望だった。因みに僕は時さんの横を歩いている。


「地下..ですか?」


「うん!締め上げたら教えてくれた!」


無邪気な子供のように明るく笑う。地下なんてあったのか…。

どうりでこそこそ組織内を探しても、弟が見つからないわけだった。


「早くいかないと!」


そう焦って走り出すと、首根っこを掴まれ、ぐいつ、と引き寄せられる。


「うわっ!何するんですか!」


引き寄せた人物を勢いよく睨む。


「そんなに焦って走ると、お子ちゃまなランゼ君は転ぶと思ってな」


此方に視線を合わせて、嗤うかのように言われる。青筋が立った。


「気安く触らないでください」


「うおっ」


手を強めに弾く。気分はどん底である。

この苛立たしい男こそ、僕が尊敬する少女たちの兄である。

なぜランゼがこの様な態度をとるのか、それは以下の理由からである。


まず、最初に金目当てで時に襲い掛かったときに、容赦なく攻撃されたことである。

その時から既に彼に対しては好印象ではなかったといえる。

蹴り飛ばされ。ナイフを首にあてられたとき、彼女が止めなければ、危うく自分は死んでいたのだ。確かに襲い掛かったので殴ったり蹴ったりするのは正当防衛だと思う。だけれど殺そうとするのは間違っているのではないか。という怒り。


元はと言えばこの感情は、ランゼにはなかった。ただ、時の優しさに触れた時に初めて生じた感情なのである。


それから、彼が一番気に食わなかったのは、自分に対する態度である。

上から目線なのが気に食わない。

自分のことを格下だとしか思っていないのだ。

妹に言われたから、仕方なくお前を保護してやる。という空気を常に放っている。

それがまず苛立たしい。

そんなことから、彼に対して怒りがい集中してしまったゆえの態度なのである。

過酷な状況で生きていたと言えども彼は少年だ。心や感情は、未熟なのであった。

ただし少年は、自分の行動が正しいと強く思うのだった。



「お前みたいなやつ、嫌いだ!」



「ふぅ~ん。そう」




「そういうところも嫌いだ!」



最早敬語すら抜け落ちてた。





面白いと思った方はブックマーク、評価宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ