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第38話 ダニを集めよ!

「はい。それに、やはり一般人の感覚からすれば、幽霊は死んだ人と同義です。となれば、見知らぬ人のはずがない。これも問題です」

 それぞれに違う幻術を掛けるとなれば、やはり個人個人に術を仕掛ける必要がある。しかし、そうなると一人の呪術師では無理だ。

「ふうむ。どれもこれも、難しいな」

「はい。一体誰がこんなことをやっているのか。奏呪としても理解に苦しむことばかりです」

 奏翼は本音を告げると、そのまま皇帝の前を辞していた。




「これが術の掛けられたダニか」

「ああ」

「僅かに気配を感じるというだけだな。これが人の血を吸って呪力を増幅させるわけか」

 三日後。ダニが奏呪の本部に持ち込まれ、あれこれと議論がなされていた。人間をキョンシーのように凶暴にする呪術だが、ダニ一匹からはそれほど強い気を感じない。なるほど、見過ごしてしまうわけだと納得していた。

「一般人から見れば、ダニの僅かな気配なんて解るはずもなく、結果としてキョンシーが現われたと考えてしまうわけか」

 奏刃はよく出来た仕組みだなと、敵ながら感心していた。しかし、目の前にしてみても、なんとも器用な呪術だと呆れるしかなかった。

「俺も取り憑かれた奴がキョンシーなのかと疑ったからこそ、ダニに気づけたからな。キョンシーはいわば死体だ。しかし、取り憑かれた男は生者の気配がしたし、なにより術の気配が弱かったんだ」

 奏翼は当時のことを思い出し、そう説明した。その見抜き方に、奏呪の面々はなるほどと頷く。

「達人でなければ疑わないだろうね」

 奏銀は奏翼にそう賛辞を送る。が、奏翼は肩を竦めただけだ。

「つまり、敵は明確に奏呪を意識しているということだ。私たちを釣る気なのかもしれない」

 奏刃は奏翼の反応に対しては何も言わず、会議を続けた。それに、集まっている面々は同意すると頷く。

「動き出せば、敵も自ずと次の動きに出るというわけですね」

 奏眼の確認に、奏刃は大きく頷く。そして、それにはどこかで戦闘を起こすしかないだろう。

「馬一族の殲滅で出てきてくれれば楽だったが、敵はまだだと感じているに違いない」

「だが、奏呪が積極的に戦闘を行うのは、他の一族たちに決起の瞬間を促すことになる」

 奏刃の逸る気持ちを奏翼が宥めた。それに、そこが問題なんだよなと腕を組む。奏刃とて適当な相手がいなければ無理だと解っている。

「血に関しては」

「分析中だが、どれが培養先かを特定するのは困難だな。相手が小さすぎる」

 ダニという手段に、とことん苦しめられる奏呪だった。




 ダニの小ささに苦戦させられたものの、それなりの数が集まると、何とか解析することが出来た。

「追加で千匹も集める羽目になるとは思わなかったけどな」

 奏銀が遠い目をし

「まあ、駆除に一役買ったと思えば、いいのではないでしょうか」

 奏眼もぐったりとしている。

「だらしないぞ、お前ら。その千数百匹をすり潰したこっちの身にもなれ」

 そんな二人に、解析を担当した、奏呪では数少ない女子の一人・(そう)(かい)が呆れた声を出す。

「すり潰す・・・・・・」

 しかし、具体的に想像した奏銀は青い顔をするだけだ。人を殺すことに慣れている奏呪だというのに、だらしのない話である。

「まあいい。私は奏刃様と奏翼様に報告しに行く」

「はい」

 助手に使っていた二人がだらしないままなので、奏海は諦めて一人で報告に行くことにした。奏呪の本部が入る建物の地下に作られた実験室を出ると、すたすたと上に上がって長官たちの姿を探す。

「おや、奏海。珍しいな、実験室から出てくるなんて」

 と、丁度良く奏翼と鉢合わせた。その奏翼は何やら書類を抱えていて、忙しそうである。

 この男は昔から仕事を断るのが下手だったなと、奏海は思い出す。今日もどうせ奏刃から嫌がらせのように書類仕事を押しつけられたのだろう。

「報告は後の方がいいかな? 最強呪術師様」

 そう察しつつも嫌味込みで言うのが奏海だ。それに奏翼は顔を顰めたものの

「仕事をしながら聞こう。ああ、その前に奏刃を呼んできてくれ。奥の書物庫に籠もっている」

 久々の嫌味だなと受け流し、奏刃を呼んでくるよう命じる。

「ちっ、面白味のない」

「それはどうも」

 奏翼はさらっと返すと、書類が重いとさっさと割り振られた執務室に入る。十年振りに戻った奏翼に対し、意外にも多くが期待を寄せている。その事実が仕事の山にあるわけだが、それを影で操っているのは皇帝だろう。

「さっさと信用を取り戻せってことだな」

 ということで、仕事を押しつけてきたのは奏刃ではなく、尚書省である。官僚の不正が横行しているので、脅しを兼ねて何人か始末出来ないかという相談やら、行政が円滑に進まない部署への脅しやら、まあ、要するに脅しが主な仕事だ。


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