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第20話 情報収集

 ようやく最初の宿場町での治癒を終え、次へと進むことになった。しかし、その前に情報を収集しておく必要がある。

 最初のこの町でこれだけ時間を食ったということは、他の町でも治癒の能力を頼り、治してくれという者が殺到する可能性がある。というわけで、この先の町や村がどれくらいの規模のなのか、予め知っておきたいところだ。

 奏呪のことやキョンシーもどきのことを考えると、あまり一カ所に長く滞在したくないのが蒼礼の本音だが、それは鈴華が許さないだろう。

 民を救ってくれ。この随分と漠然とした、しかし国にとっては必要なことを押しつけてくれた鈴華は、一人でも多くの人を見て欲しいはずだ。

 しかもその先にあるのは都を荒廃から救ってくれだ。壮大にもほどがある。というか、それをやるべきは皇帝であって、一介の呪術師ではない。

「キョンシーばかりに目がいっていたが、幽霊が現われるなんていう、よく解らないことになっているんだったよな」

 夜、李期夫妻と一緒にお茶を飲みながら、蒼礼は確認をする。鈴華はそのとおりと頷くと

「龍北州は本当にまだ落ち着いている方よ。龍西州なんてあちこち悲惨なんだから。通ってきた感じだと、東も悲惨だったわね。だからどうしても、治癒が出来る蒼礼が必要なの」

 力強く言ってくれる。

「なるほど。そういう旅の途中だったのか」

 李期は今更ながら、旅の目的に気づいてふむふむと頷く。

「西と東が大変ねえ。そりゃあ、最近、お客さんが減るはずだわ。ここまで旅している場合じゃないものねえ」

 一方、明倫は売り上げが落ちるわけだわと溜め息だ。

「そう言えば、旅人の姿を見ていないな」

 折り返し地点に当たるからそれなりに賑わっているという話だったのに、この三日間で自分たち以外の旅人が来ていないことに気づく。

「そう。最近めっきり減ってねえ。最初はどっかに大きな交易点でも出来たのかしらって思ってたんだけど、最近ではキョンシーが出るでしょ。旅を控えているんだろうなとは思ってたわ」

 明倫は色々と考えなきゃねえと商売人らしい顔をする。どうやらこの飯屋の経営を握っているのは明倫のようだ。

「なるほどな」

 どこか貧相に感じたのは、町に活気がなかったせいか。蒼礼は今になってそれに気づいた。ということは、確実に龍北州にも影響が広がっていることになる。

「ここが折り返し地点だから、ここからは街道が繋がっているんだな」

「ああ。こっから次の宿場町までは距離があるけどな。間に村が三つあるから、そこで上手く交渉できれば野宿は避けられるよ」

 李期が、ここまで来るのは本当に大変なんだよねと呑気に言う。確かに商人以外には用事のなさそうな場所だ。北の特産品と他の地域の特産品の交換が中心だろうことは容易に想像できる。

「間にある三つの村の規模は」

 蒼礼は人口はどれくらいなのかと訊く。これが重要だ。この宿場町は全体で三百人。それでも大急ぎでやって三日だ。

「ううん。百人もいないと思うぞ。どこも農村だよ」

 しかし、流石にここはまだ北に位置するので、それほど人はいないと李期が教えてくれる。

「やっぱり南に行くと住みやすいもんなあ。龍南州は気持ちいいって、旅人たちはみんな自慢していくぜ」

 李期の言葉に、それはそうよねと鈴華は頷く。

「北は寒いのよねえ。知ってる、この蒼礼さん。そんな北も北の端っこで、さらに山の中に住んでいたのよ」

「うわあ、物好きだねえ。それも呪術の修行で?」

「ま、まあな」

 蒼礼は頷きつつ、思い切り鈴華を睨んでおいた。蒼礼がそこまで人里離れた場所に住んでいたのは、自分の身体の秘密と、奏呪の監視の目から逃れるためだ。鈴華はついという感じで舌を出す。

「じゃあ、こっから先の道のりは大丈夫だねえ。あんたが来てくれて助かったよ。ただ、これより先の宿場町はキョンシーもどきの目撃情報が多いわ。気をつけてね。って、呪術師の先生には要らない忠告だろうけど」

 明倫は本当に逞しい呪術師だねえと、蒼礼に感心していた。が、蒼礼はその視線が何ともむず痒かった。


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