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Q18 結晶 水晶 若草色?

なんで学長の名前を変えたのかって? 決まってるだろ? 忘れたんだよ。

 





「そういえば、この結晶どこで手に入れたんだい? これは火竜の体内にあったものだろう?」



 レガルド学長ははじかれたように顔をあげて、俺たちにそう質問してきた。



(ついに聞かれたか……)


 この質問は俺とルインの今後に、少々……いや、かなりの影響を与える分岐点だ。


 まず大前提として、俺たちはあまり目立つようなことはしたくない。


 俺はそんなに目立つことが好きなわけではないし、それ以前に俺が貴重なユニークスキルを3つも持っていることが知られたらいやおうなしに連れていかれるとか、あるいは利用されたりするだろう。それは、俺の望む未来ではない。これはルインも同じ意見のようだ。


 しかし、ルインについては少々意外だった。


 彼女の前世は知っての通り勇者だ。勇者といえばまさに目立ってなんぼな職業のように思っていたので、当のルインもそういうのは好きだと考えていた。


 だがルイン曰く、


「ん~、確かに目立つのは嫌いじゃないけどさ、でもそうなったらそうなったで色々と面倒なことになるっていうのは嫌っていうほど学ばされちゃったから、そこまで悪目立ちはしたくないかな~」


 とのことだった。


 要するに俺たちは、もう昔のような目には会いたくないのだ。だから、火竜を倒したこの力は何としてでも隠し通さなければならない。


 だから俺たちは、この質問に馬鹿正直に答えることはできないのだ。


 俺は、学長からの質問にどう答えようかあたふたしているルインに助け舟を出した。



「学長先生、実は――」




 ◆  ◆  ◆




 筋書きはこうだ。


 俺とルインが火竜のもとに来た時、すでに火竜は護衛の冒険者たちによって瀕死の状態になっていた。


 しかし、冒険者側の損害も激しく、生き残っていたのは二人の魔術師だけだった。


 ボロボロの火竜は最後の力を振り絞って、二人の魔術師に特大のブレスを浴びせかけた。


 だが魔術師の二人も、自分たちの後ろの子供たちを守るべく、決死の覚悟を決めて火竜のブレスに飛び込んだ。


 そして魔術師たちは、自分たちの中に残った魔力のすべてを使って強力な雷を生み出した。


 火竜のブレスと、魔術師たちの(いかずち)


 両者は、どちらも絶大な威力のものをぶつけ合った。



 結果は、相討ち。



 二人の魔術師は、火竜のブレスに焼かれ、また火竜は、魔術師の雷撃に胸を貫かれ、下に落ちていった。


 俺とルインは、無力にもただその様子を傍観するしかできなかったが、戦闘が起こっていた場所から何かが飛んでくるのを偶然発見し、それを回収した。




 ◆  ◆  ◆




「それがこの結晶だというわけかい?」


「はい」


「ふむ……なるほど。調査隊の報告にに照らし合わせても、おかしなところはなさそうだ」


「当たり前です。まさか、まだ学生でもない俺たちが火竜を倒せるとでも?」


「ははは、それもそうだね」


(とりあえず、危機は免れたか?)


 俺は、内心胸をなでおろしたが顔には出さないように気を付けた。




「いやはや、それにしても本当にキミたちが無事でよかったよ。もしも何かあったら、その時は僕の首が飛んでいたかもしれないね。物理的に」


 学長はなんちゃってと言って笑っていたが、こちらとしては申し訳なさもあって割とマジで笑えない。


「しかしキミたちぃ、今回本当に危なかったのは僕の首じゃなくてキミたちのほうなんだよ。あんな状況で馬車から出るなんて、こういっちゃなんだけど自殺行為もいいとこだ。そこんとこ、分かってる?」


「はい、すいませんでした」


「ならばよろしい。さぁ、キミたちもこんなことがあって相当疲れただろう、寮に行って休むといい。自分の部屋番号は寮の建物の前に張り出されているからそれを見るんだよ。荷物はもう届ているはずだ」


「ありがとうございます。失礼しました」


「し、失礼しました……」


 そう言って俺とルインは学長室を出ようとした。


「あ、ちょっと待ってキミたち」


 が、呼び止められた。


「……なんでしょう」


 やっと終わると気が緩んでいたので少しビックリしてしまった。



 レガルド学長はおもむろに机の上で手を前に組み、顔を寄せた。




「瘴気ってのはね、まだ詳しくは解明されておらず、効果も魔物の強化と狂暴化としか分かっていない。今のところ人間に結晶核ができた事例はないが、アレは確実にこの世界にとって害となるものだ」


「とはいえ、これはキミたちには関係のない話だろうね。……だけど――」


「……」





「――最近、瘴気の量が多くなってきているんだ」




 その透き通った緑眼は、鷹のように鋭かった。





「それだけだよ。いつでも学長室に遊びに来るといい」


「……失礼します」


 俺たちは、それだけ言って部屋から出ていった。






「何だったんだろうね、最後の」


「……さあ?」


 きっと俺たちには、関係のないことだろう。


 そんなことを思いつつ、俺とルインは学生寮なる建物に向かって歩いて行った。












 ◆  ◆  ◆














「ふふふ、あの子たちはすごいね。気配を消していたはずのキミをやすやすと見つけてしまった」


 レガルド学長は、隣でたばこを吸いながら佇む男性に声をかけた。


「……あんたが強烈すぎて、その後は忘れられてたらしいがな」


「褒めてくれてうれしいよ、ジキル君」


「褒めてねぇよクソナルシストが」


 ジキルと呼ばれたその男性は、目線を下に向けると、学長の持つ歪な青黒い結晶と何かの映像が映し出されている()()を一瞥して、またすぐに煙を吸い始めた。



「相変わらずあんた良い性格してるよな、ぜーんぶその水晶で見てたくせに」



 その水晶には、傷ついた火竜に雷魔の剣の魔剣技でとどめをさしているルインの姿がありありと映っていた。



「そのほうが面白そうじゃないか。それに、彼らも隠したがっていたようだしね」


「はっ、そうですか」


「こらこらすねないの。……そうだな、彼らには()()クラスに入ってもらおうかな」


「……へぇ、あの計画、実行したのか」


「即断即決が僕のモットーなんでね。まぁ、何はともあれこの後の組分けテストで、そこに入れる程度の能力は見せてもらわないとだけどさ」


 それだけ言うと学長は、机の上にある二つの結晶を横目に奥の部屋へと消えていった。






 ジキルは思った。



 青黒い結晶と、水晶を見つめる、その若草色の瞳。



 それには一体、何が見えているのだろう。








評価オナシャス

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