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Q17 結晶核モンスター?

 





 俺達が学園に到着した頃、既に他の馬車や遅れていた馬車に乗っていた人達はとっくの昔に着いていて、教員達からの説明を受け終わり割り当てられた寮部屋などで休んでいるらしかった。



 しかし、俺とルインは説明もほどほどに、あの優しそうな女性教員によって真っ先に学長室に案内されていた。




「学長先生って、どんな人なのかな」


 三人で廊下を歩いていると、不意にルインが小さな声でそう質問してきた。


「さあな。エルフ族の男性だとは聞いているが、詳しいことは知らん」


 二人でコソコソと話していると、俺たちの前のほうを歩いて道案内をしてくれている先生がくすくすと笑ってきた。


「ふふふ。あなたたち、そんなにかしこまらなくてもいいのよ? 確かに時々怖いくらい鋭い時はあるけど、基本はただのちゃらんぽらんなんだから。ただ――」


「――かなり変人(おもしろいひと)だから、驚かないでね?……いや、驚いてあげたほうが喜ぶかも」


「「…………」」


 俺とルインは、その言葉で余計不安になった。





 それからすぐ、俺たちは精巧な模様が彫られた仰々しい扉の前に来た。扉の上には、達筆な文字で『学長室』と書いてある。


 コンコン


「入りたまえ」


 ガチャ 


「失礼します学長。例の二人を連れて参りました」



 学長と呼ばれたその男は、優雅なしぐさで手を振り、礼を伝えた。


「ああ、ご苦労だったねアイシャ。もう下がって良いよ」


「はい。……後は頑張ってね、お二人さん」


 そう言って、アイシャと呼ばれたその教師は俺たちを残して去っていた。





 学長室には、一時の静寂が訪れた。


 この部屋にいるのは俺とルイン。また、部屋の隅のほうで壁に寄りかかりながら葉巻を咥えつつ、こちらをその鋭い視線で見つめる白髪赤目の男が一人。


 そしてもう一人、洒落た真っ赤なスカーフと、キラキラとしたスパンコールの輝く派手な衣装を身にまとい、クルッと華麗(むだ)なターンを決め、恐らく俺たちに向けているだろう香ばしいポーズをとった、金髪緑眼の若い(見た目の)エルフがいた。


 正直、反応に困る。


 学長室に変な空気が漂い始めた頃、真ん中に陣取っていたエルフがまた別のポーズをとった。


 えぇ……。


 本格的に漂い始めたその空気は、あのルインでさえも思わず目が死んでしまうほどだった。



 そしてやっと、この空気の原因の男が口を開いた。無論、美麗なターンと決めポーズ付きで。


「さて、もうキミたちもこの僕から溢れ出るオーラによって薄々感づいているとは思うが、改めて自己紹介だ」


「僕は、キミたちの母校となるこのプライレス国際総合学園の5代目学園長 レガルド・ビィ・ペンドラゴン さ。まずは初めましてといったところだね」


 そう言って彼はビシッとした歩き方で颯爽と近づいてきては、俺たちに握手を求めてきた。


「え、ええ。初めまして、学長先生」


 とりあえず握手に応じると、彼は機嫌よさげに戻っていきそのまま奥の机にある椅子に腰かけた。


(というか、オーラも何もさっき学長って呼ばれたときに反応してたよな……)


 よくわからない人だが、どうやら悪い人ではなさそうだ。多分。


 そして俺は、今ちょうど学園長のとなりの位置にいるあの男性に目を向けた。


「ああ、気にしなくてもいいよ。この人もこの学園の教師だ」


 学長にそう言われたその男性は、こちらをちらりと見た後、軽く会釈のようなことをしてから、また葉巻を吸い始めた。





 学長は椅子に座ったまま腕を組んでから、少々芝居がかった態度でこういった。


「それにしても大丈夫だったかい? キミたち。あんなところに火竜がいたなんて、完全にこちら側のミスだ。幸い生徒たちに被害はなかったから良かったものの、護衛として雇った冒険者たちが全滅してしまうとは」


 彼は、やれやれといったふうに手を眉間に持って行った。


「報告にあったんだがね、火竜は瘴気(しょうき)に覆われていたそうじゃないか。竜種でこんなことが起こったのは、今回が初の事態だ」


 ん? 瘴気だと?


「すいません、その瘴気ってなんですか?」


 ルインがそう質問すると、学長はそうだったといったという感じで答えた。


「瘴気ってのはね、ここ数年の間に何度か確認されたものなんだけどさ、空気中に漂うそれを魔物が大量に吸い込むと、体の中に瘴気の結晶ができて狂暴化するんだ。人間には何故か効果はないけどね」



「僕たちはそのモンスターのことを“結晶核(クリスタル)モンスター”と呼んでいる」



「クリスタル……」


 ルインはおもむろにあの謎の結晶を取り出した。


「あの、もしかしてこれがその瘴気の結晶ってやつですか?」


 ルインがそれを出すと、学長は机から身を乗り出してそれを受け取った。


「おお! 間違いない! そうそれだよそれ。しかしこんなに大きなものは初めて見た。いつものは個体差もあるけど、大体それよりも一回りほど小さいものだったよ」


 学長は、やはり元の知能が高いものほど巨大化するのか? いやしかし……とブツブツ一人で考察を始めたが、一つ俺たちに聞いてきた。


「そういえば、この結晶どこで手に入れたんだい?」




 ……さぁ、ここからが面倒だ。





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