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Ep.3 『思わぬ欠点』


ドルターは依然として状況が呑み込めていなかったが、気を取り直して4人にショットガン水流を発射した。しかしまたもそれは避けられた。



ジャンプしたグレートフォースの4人はドルターの前に着地した。


「お、おのれ!」


ドルターは身構えた。いくらなんでも、エースクラスを4人同時に相手して勝ち目があるとは思いにくい。



しかし予想に反して、4人は攻撃を加えてはこない。ドルターはきょとんとした。なぜなら、目の前にいる最強のヒーロー4人は、誰が戦うべきかと話し合っているのだ。




「やはりここは、一番年上のブッチャさんが」「まぁ、それでもいいっすが」「でも、もし戦いたくないっていうなら、私戦いますよ?」「女性を戦わせて、男の俺達が後ろで眺めているってのもなんだか違う気がしてしまうのですよ。時代錯誤なのは理解してるんですが」「僕は、戦う事自体は構わないので、もし皆さんが戦いたくないなら、戦いますよ?」「いえいえいえ、ザンさんはどうも犠牲気質が高すぎる。俺だって皆さんの代わりに戦うつもりはありますから、どうか無理をせず」「大丈夫ですよ。僕の事ならお気になさらず」「私だって皆さんの事尊敬してますから、女とか気を使ってくださらなくて大丈夫ですよ。戦士ですから戦いますよ。お手を煩わせるのもなんだか……」「やっぱり、俺が戦うっすよ」「一旦、整理しましょう。この中で出来るなら今は戦いたくない方は?」「……」「いませんな。んじゃあ、戦いたい! って人は?」「……まぁ、みなさんが戦いたくないなら戦いますが、どうしても戦いたい! ってほどでは……」「まぁ、俺もザンさんと同意見っすな」「まぁ……私は皆さんの意志を尊重したいと……」「ですよねぇ~」


 


本部にいる静子はモニターを前に、頭を抱えてデスクに項垂れていた。



「なんなのこの人たち……」



静子は完全に計算違いをしていたことに、ここに至って初めて気づいた。



後ろにいる竹山も先ほどから唖然と突っ立っている。



そして室内に長官が入ってきた。



「現場の様子は自室で見ていた。しかしこれは一体どうしたことだ! 彼等は一体何をやっているんだ、さっきから!」



長官はモニターを指差して怒鳴った。



怒鳴りたくなっても無理あるまい。




静子は顔を上げて長官を見た。



「完全な誤算でした」




そう、誤算だったのだ。




彼等は他を圧倒する絶対的な強さを誇っていながら、決して威張ることなく他人を思いやる。なので、チームを組んでも何の心配もいらないと思っていた。



しかし実際はそうではなかった。



彼等は他人に気を遣い過ぎる。




その為、主体性の欠片もない。




積極性は皆無なのだ。あくまで他人の意志を最優先。自分から、こうしたい、と発言する事が無い。考えてみれば訓練の時からそうだった。


調和を大事にし過ぎるあまり、いちいち相手の意見を第一に考えてしまうのだ。



一見、尊いことのようだが、戦闘においてだとそれは単にチームとしての判断力が鈍り、行動の遅延に繋がるだけである。




あれほど強いのに、主体性が無い。これではチームとして致命的だ。というより、チームを組ませた意味が無い。




そうなのだ。彼等の強さとは、個人で行動してるが故に発揮できていたものだったのだ。誰かの気持ちや意見を気にすることなく、自分の判断のみを頼りに行動できるからこそ、彼等は誰に気を遣う事も無く、持てる力を如何なく発揮してきたのだ。




実は彼等こそスタンドプレー向きの性格だったのだ。




ライバルとの競争ではなく、自分の中でコツコツと経験や考え、練習を積み重ねることで成長するタイプ。カナラズが誇るエースは4人が4人とも、そういう性格だったのだ。





静子はこの事を長官に説明しようと立ち上がったが、既に全身から力が抜けており、説明する気力すらも湧き起こらずに、再び椅子にぐったりと座り込んだ。



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