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普通じゃない世界  作者: 鳥柄ささみ


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第二十七話 約束

「落ち着くところに落ち着いた感じかのう? まぁ、お前達の話はとっ散らかってたが」

「あれ? えぇ!? びょ、ビョードーさまが何でここにいるの!?」


 小さなビョードーがひょっこりとリュウのポケットから顔を出すと、ヨシがびっくりして後ろに飛び退いた。


「そこまで驚かれると、ちょっとショックじゃな」

「あ、ごめんなさい。それで、えっと、何でビョードーさまがここに? てか、いつの間にこんなに小さくなったの?」

「アタシはあのビョードーであってビョードーでないものじゃ。本体のビョードーから切り捨てられたもの……って、この説明も三度目じゃな」

「え? 切り捨てられた?」

「あぁ、そうじゃ。簡単に言えばビョードーがいらないと思った感情かの。さっきのヨシの話でいう、リュウへの嫉妬や妬み、と言ったところじゃな」


 ヨシは言われてすぐに納得する。

 実際に経験したからこそ、理解が早いようだった。


「きっとビョードーはヨシの負の感情に気づいて、仲間に引き込もうとしたのかもしれぬ。自分に似ている部分を見出してな」

「似てる? ヨシが?」

「あぁ、本質が似てたのだろう。いじめられていたことやそれに不満があったところなど含めてな」

「だから、ヨシはすぐに普通にされなかったってこと?」

「恐らくな。ヨシの境遇が似過ぎていて、ビョードーが共感したのかもしれぬ」

「そうだったんだ……」


 ヨシがぽつりと呟く。

 ビョードーによって「普通」に書き換えられなかったのはよかったけれど、そうして自分の悪い部分が見破られていたことにヨシは複雑な気持ちだった。

 だが、リュウは小さなビョードーの話の、違う部分に注目していた。


「だったら、やっぱりビョードーは一人ぼっちは寂しいって思ってるってことじゃない?」

「まぁ、そうだな。それをあやつが認めるかどうかは知らぬが……」

「認めさせようよ! ずっと一人ぼっちは誰だって寂しいし。小さなビョードーだって、ずっと一人であの部屋にいたのは寂しかっただろ?」

「まぁな。だが、あやつも意固地だからなぁ。まぁ、今ここでそんな話をしていてもしょうがない。とりあえず、まずはヒナを元に戻してあげたほうがいいんじゃないかのう?」


 小さなビョードーに言われて、そこでやっとヒナのことを思い出した二人はあわあわとする。


「あ、ヤバっ、ヒナ!」

「ヒナちゃんのこと、すっかり忘れてた!」

「知らぬぞ? ヒナにどやされても。ちなみに、この状態でも会話などは聞き取れているからな」

「マジか、やべっ!」

「絶対ヒナちゃんに怒られるよ~」

 

 ヨシはポケットから人形になったヒナを取り出すと、「ヒナちゃん、ごめん!」と魔法をかけた。

 すると、ボンっ! と煙と共に人形から元の人間の身体へと戻るヒナ。

 そして、キッとヨシを睨みつけたかと思えば、ギュッとヨシのほっぺをこれでもかと強く引っ張った。


「ヨシくんのバカ! 最低! てか、二人して私のこと忘れるだなんて信じられない!!」

「ごめん。ごめんよ、ヒナちゃん!!」

「ヒナ、マジでごめん!!」

「人形になってるの、すっごくすっごく、恐かったんだからね!」


 ヒナの目にはじんわりと涙が滲んでいた。

 普段強気なヒナも、人形にされて身動きが取れない状態というのはとてつもない恐怖だったのだろう。

 ヨシも自分のしてしまった過ちに、心の底から謝った。


「うん、ごめん。本っ当にごめん! 許してもらえないことをボクしちゃって……ヒナちゃんごめんなさい」


 ガバッと勢いよく頭を下げながら拝むようにヒナに手を合わせるヨシ。

 その様子をチラッと見ると、ヒナはムッとした表情のあと、ぐににに、とヨシの両頬を引っ張った。


「バツとして、夏休みの宿題は一緒にやるからね? わからないところは教えてよ。しょうがないから、それで許してあ、げ、る!」

「うん! もちろんだよ! ありがとう、ヒナちゃん!!」


 ヒナは満足したのか、つねっていたほっぺから手を離す。そして、すぐさま気持ちを切り替え、「それでどうするの?」とリュウとヨシと小さなビョードーに話しかけた。


「みんなで元の世界に帰るんでしょ?」

「うん」

「あぁ、今度こそみんなで」

「だったら、またあの神社に行かないと」


 今度こそ三人一緒に元の世界に戻る。

 だがその前に、リュウにはなさねばならぬ約束があった。


「でもその前に、ビョードーを説得しないとな」

「はぁ? 説得? リュウくん何を言ってんのよ! もうみんな揃ったんだし、早く元の世界に帰ろうよ!」

「そうだよ、リュウ。次はきっとリュウも逃げられないよ?」

「でも、オレはこの小さなビョードーと約束したからな。ビョードーと仲直りさせるって!」


 リュウが小さなビョードーを見ると、やれやれと言った様子で肩を竦ませる小さなビョードー。


「アタシはそんな約束した覚えはないが、あんたたちを見ていたらちょっとだけ頑張れそうな気はしてきたかね」

「へへ、そうだろ? あとさ、オレに考えがあるんだけど……どう?」

「何よ、考えって。どうせリュウくんのことだもの、ろくでもない考えでしょ?」

「失礼なやつだなー! まぁまぁ、聞けって!」


 リュウはそう言うと、コソコソと三人に自分の考えを話す。

 ヒナは「そんなの本当に効くの~?」と半信半疑だったが、ヨシも小さなビョードーも「まぁ、まずはやってみるか」と話に乗ってくれた。


「きっと上手くいくから、ヒナも協力してくれよ!」

「うん、ボクもリュウの考えはいいと思う!」

「ヨシもこう言っているということじゃ。やってみるかの」

「もー、しょうがないわね! このまま帰っても何も解決しなそうだし、小さなビョードーにもお世話になったから、ちゃんと終わらせて、今度こそ元の世界に帰るために頑張るわよ!」

「さっすがヒナ! 話せばわかるー!」


 リュウがおだてれば、ヒナもまんざらではなさそうに笑う。


「じゃあ、そうと決まれば準備するぞ!」

「「「「おー!!」」」」


 四人はリュウの提案を実行するため、それぞれ動き出すのだった。

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