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普通じゃない世界  作者: 鳥柄ささみ


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第十四話 カゲ

 __まずはヒナやヨシを見つけないと! それで、みんなで一緒に脱出するんだ!!


 リュウは城の中を全力で走る。

 城の扉や道などはとても大きく、それはビョードーの大きさに合わせて造られているからだろうが、そのせいでリュウが移動するにはとても時間がかかった。

 ヒナのように空が飛べたり、ヨシのように速く走れたりしたらまだよかったが、リュウの特別な力は発光したあと姿を消すだけ。

 だから、リュウはみんなを探しながらビョードーから逃げるために、体力が続く限りひたすら走り回るしかなかった。


「オレ、この世界来てからずっと走ってる気がするな」


 はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、とリュウは息をきらしながら走る。城の中は大きい上にとても入り組んでいて、まるで迷路のようだ。


 急な坂があったり、行き止まりだったり。落とし穴があったり、プールがあったり。


 そのためどんな罠があるかわからず、何も考えずにただがむしゃらに走ることもできなくて、リュウは余計に疲れていた。


「ヒナもヨシもどこにいるんだ?」


 探しても探しても姿が見えなくて不安になってくる。

 でも、ここに来たばかりのときのヒナも、きっと不安になりながらも自分達のことをずっと探してくれて、しかも助けてくれたんだと思うと、リュウは頑張る勇気が湧いてきた。


「そういえば、ここにはあの魔女しか住んでいないのか? それとも他に誰かいるのか?」


 今のところここでビョードー以外の誰かに会う気配はない。けれど、なんだか落ち着かなかった。

 ビョードーだけならあの大きな身体だし、どこにいるかすぐにわかるから隠れることもできる。でも、もし違う別の仲間がいて、そいつらにバレたらどうしようと思ったそのときだった。


【いたぞ! いたぞ、いたぞ! 普通じゃない人間!!】

【ここだ、ここだ! ビョードーさまにお伝えせねば!!】


「ヤバっ! 見つかった!?」


 ちょうど鉢合わせるように目の前に現れた黒いカゲのようなもの。

 それは人の形をしているが、真っ黒いモヤのようにゆらゆらと揺らめいていた。


 そして、リュウは自分の姿が見られていることに気づいて、自分の身体を見下ろす。

 どうやらいつのまにか透明化は解けていたようで、はっきりと自分の身体が見える状態だった。


 __ずっと透明でいられるわけじゃないのか!


 特別な力は一時的なものらしい。リュウは慌てて後ろを振り向き、来た道を全速力で戻る。

 後ろから、【待て待てー!!】と言われながら、どこか隠れられそうな場所を探した。


 けれど、来た道はどこも視界を(さえぎ)るものが何もない。隠れられそうな場所は全然見つからなかった。


 しかも追いかけてくるカゲ達はだんだん増えていき、おまけに普通の道だろうと坂道だろうと同じスピードでついてくる。


 リュウが落とし穴をひょいっと飛んで渡っても、カゲもビョーンと伸びて落とし穴の上をなんなく渡ってくる。

 じゃあ、水の中ならどうにかなるか? とプールを泳ぐと、カゲ達も後ろをふよふよと墨のように揺らめきながら同じスピードで泳いできていて、リュウは「こいつらしつこいなぁ!」とうんざりしながら必死に泳いだ。


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ。もう、無理ぃ……」


 いくら体力が人よりあるほうとは言っても、リュウはただの人間だ。


 走って、飛んで、泳いで、とやっていれば、さすがにバテてもくる。


 もうリュウの体力はほとんどなく、捕まりたくない! というただその一心だけで走り続けていた。


【もう逃げられないぞ】

【くくくく、そこはもう行き止まりだ】


「くそっ。行き止まりだ、どうしよう」


 カゲ達に言われた通り、目の前の道はぷっつりと途切れていた。

 切れている道から下を見下ろせば、そこは断崖絶壁(だんがいぜっぺき)

 城がある場所がかなりの高さなため、地上が遠すぎて車や家も米粒のように小さく見える。


 ここから落ちたらきっと死ぬだろうなと、あまりの高さにリュウは身震いした。

 カゲ達はそんなリュウを追い詰めるように、ジリジリと寄ってくる。


「ヒナもいないから空も飛べないし、オレはもうここまでなのか……っ」


 自分の特別な力もここで通用するとは思えず、絶体絶命。


【さぁ、ビョードーさまのところに行くんだ】


 カゲ達は他のカゲとくっつき、だんだんと大きくなり、リュウを飲み込もうとバッと頭上に広がったかと思えば一気に覆いかぶさろうとしてくる。

 だが、ちょうどそのとき、強く風が吹いた。


【うわぁあああ】

【離れるな! 飛ばされるぞぉ】

「うわ! あっぶねー!!」


 カゲ達は風に煽られてふわふわと旗のように空をたなびく。


 リュウは慌てて落ちないようにしゃがみながら途切れている道の端を掴んでいると、不意にリュウの目に虹色の雲がまばらにいくつも浮かんでいるのが見えた。

 それを見て、これに乗ればカゲ達から逃げられるんじゃないかと、リュウはなぜだか根拠のない自信がわいてくる。


【みんなくっついたか?】

【大丈夫だ】

【よし、いくぞ! ヤツを捕まえるのだ!】


 風が治まってきたタイミングで、再びカゲ達が体勢を整える。

 そして、またリュウの頭上にやってきて、ぱくんとリュウを包み込もうとした瞬間、リュウは「えい!!!」っと虹色の雲に思い切って飛び降りた。


【あれ、あいつはどこに行った?】

【捕まえたはずじゃ……】

【どこに行った!?】

【あ、あそこだ!】


 カゲ達がリュウを探すもすぐには見つからず。

 ようやく見つけたときには、カゲさえも届かない遠い虹色の雲の上だった。


【あともうちょっとだったのに!】

【さすがにあの距離は届かないな……】

【もっと魔法をわけてもらわねば】

【仕方ない。ビョードーさまに報告だ!】


 黒いカゲ達はリュウを今すぐ捕まえるのは諦めたようで、分裂するとだんだんといなくなる。

 リュウは、やっと休めると虹色の雲の上で寝転がってちょっと休憩したあと、「よっ!」「ほっ!」「やっ!」と複数の虹色の雲に飛び移りながら、どこか別の道に続く場所に着地するのだった。

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