表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/10

禁忌の面

赤無市の最北にある神社にひとつの面が封印されているという噂がある。

封印というと何だかマンガめいた話のように思えるが、実際それは「危険すぎる」が故に神社が管理をしているそうだ。被ってはならないだけならまだしも、触ることも、その面を見ることも憚られている。まさに「禁忌の面」というものだ。


ここから先の内容は、ぼくがこの「禁忌の面」について調べた内容だ。

図書館の赤無市の歴史などの資料を辿ってみたが、この面に関する情報は一切なかった。件の神社に取材を申し込んだが、けんもほろろに断られている。そのため、この面にまつわる話を知っているかというのを街頭インタビューのようにあちこちに聞いて回り、その内容をまとめたものでしかない。


毎度のごとく信憑性に乏しい内容ではあるけれど、全体のイメージはお伝え出来るのではないだろうか。


①名称について

「禁忌の面」というのは通称。本当の名前は「うつし身の面」。

「うつし」が「写し」なのか「移し」なのか、はたまた「現し」なのかは不明。


②詳細な内容

正確には定かではないが、昭和25年前後に作られたという噂。製作者は倉内重造という面職人。重造には綿彦という弟がおり、綿彦はなにかを「視る」ことが出来る人間だった。※兄弟の名前は諸説あるので、最も数の多かったものを採用。


子供の頃より綿彦から「視える」内容を聞いていた重造はその内容に魅了され、自分も「視て」みたいと思い焦がれるようになる。そのことを知った綿彦は、それに干渉する行為は非常に危険だと説得もするも受け入れられなかった。それどころか、重造は弟が自分だけが「視て」いるものを、独り占めしようとしているのではないかと疑念を抱き出したという。どういう経緯でそう思ったかは不明だが、面の目を通して「視る」ことが出来るのではないかと思った重造は、面作りに没頭していく。


時は経ち、重造は面職人で生計を立てるようになっていた。作る面の評価は高く、発注も潤沢にあったが本人は全く満足していなかった。それまで、どの面を通しても「視る」ことが出来なかったのである。


──面の出来は年々良くなっているのに何故だ。

──何が足りない?


重造は悩み、迷い、その執念は粘度を増してどす黒い感情をより膨張させていった。そして、ある日ついに爆発する。


その日、重造は離れて暮らすようになった綿彦の家に赴き、彼を殺してその血で作って持っていった面を着色し、彼の眼球を両方ともくり向いて遁走する。


警察による大掛かりな捜索が行われた結果、数日後に彼は件の神社近くで死んでいるのが発見された。野良犬にでもやられたのか身体の損傷は酷いものだったという。そばに落ちていた面の眼窩には綿彦のものと見られる眼球が嵌められていた。面の裏面には綿彦の血で書かれたであろう赤い文字で「うつし身の面」とあった。あまりの惨状に、捜査員の中には具合が悪くなるもいたそうだ。


そうして警察に回収された「うつし身の面」だが、その後も怪異が立て続けに起こっている。


まずは面に嵌められた綿彦の眼球であるが、ガラス加工か何かされたような状態だが工法が不明。また腐るなど劣化も起こっていないという。


そして、面だが警察の証拠品補完庫に入れられたが、そこから毎夜毎夜うなり声と何かをつぶやく声が聞こえてきた。事態を訝しんだ職員が保管庫の中をのぞくと、面の眼球がぬるりと動いて職員を視たという。


重造の死体発見現場の操作に当たった捜査員と証拠品保管庫の怪異に遭遇した職員の本人または家族が次々と体調を崩したり、発狂するような事態が起こり、署内は集団ヒステリィさながらのお騒ぎになった。


あまりの気味の悪さのため、例外中の例外とも言える証拠品の厄払いが神社で施されたが、当時の神主が言うには「面の持つ力があまりにも危険すぎるため、神社内の結界を張った場所で時間をかけて弱体化していくしかない」ということだったという。


このような流れで、面は今現在も封印されているようだ。


「視る」ことに取り憑かれた重造の執念と「視える」が故に殺されてしまった綿彦の血と眼球が生み出した「禁忌の面」。この面が生み出す怪異は一体何を意味するのだろうか。そして被ることで何を「視る」ことが出来るのだろうか。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ