沢山の事を忘れてる事を忘れてる
「廃人という話ではなかったか?」
王の伯父、ウェカトは、隣を歩くイーシャに尋ねた。
「はい。大婆様が言うには……。」
「ああ~~、細かい話はよいよい。わしらはただ出産の祝いに来たのみ!」
イーシャは、そもそも伯父の方から尋ねてきたのではなかったかと内心思ったが、気に留めないことにした。
廃人だったが、状況が変わったという点が知りたかったのだろう。
山の国の国民性は、良く言えば素朴な正直者、平たく言えば馬鹿である。腹芸などはもっての他だ。中途半端に情報を得るよりは何も知らない方が良い。
「では、改めておめでとう。わしの義父、――お前の祖父から賜った言葉をお前にも授ける。
これよりお前は粘土だ。」
「は……?」
「お前は粘土なので、妻から何を言われても、赤子から何をされようと、沈黙するのみ。妻がお前の形を変えるならそれに従う。粘土だからだ。おしめを変えろと言われたら変えろ。風呂に入れろと言われたら入れろ。何も言わず、従え。」
「はぁ……。」
赤子のおしめや風呂などはあの侍女や大婆様がやるのではないだろうか。
「粘土なのは義父上の趣味が焼き物だったからだろうが……。ここでのお前の行動が今後の人生を大きく左右するのは間違いない。誤った行動を取れば地獄だ。」
「地獄……。」
「何でも義父上はお前の伯母アルカスが産まれた時に失敗をしたそうだ。そして、義母上がお前の父を産む際、女衆に捕まり、玉に紐を括られ、義母上が痛みに苦しむ度に、紐を強く引っ張られたとか……。」
「玉……。」
王に対して、そんなことがあるのだろうか。
「わしも嘘だと思うがな。ただ……たまに義母上が義父上に対して、何か囁くことがあってな……。口の動きは、「玉、紐」だったように……思うのだ……。」
「…………。」
どこか遠くを見つめる伯父に対し、何も言えないイーシャであった。
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「あら、寝てしまいましたね。」
はっ!フリーズしてた。何?あらあら、あらあらあらあらかわいい~~寝ちゃってるぅ~~~~!
「ではげっぷさせましょう。」
えっ、寝ちゃってるけど???
「げっぷが苦しくて起きたり、はき戻したりしますのでね。はい、体を起こして差し上げて。私の体感ですけど、背中と首を支えながら、仰向けから座らせるように体を起こしてあげますと、出ることが多いですわよ。」
なるほどなるほど。まだ寝入り端だから傷が浅くて済むって感じかな…。確かに20分後とかに起きられても微妙だもんな……。言われた通りに体を起こしてあげる。
「けふ。」
あ、ほんとに出た。なんとも言えない表情がかわいい。
「あら、でましたね。本当ならこの後肩に乗せたり、脇の下に腕を通してから、背中を叩いたり、撫でたりしてげっぷをさせてください。出れば何でも良いですよ。出ないなら出ないで仕方ないので、顔を横向きにさせて寝かせてください。こちらのかごにお入れして。はい。それでは王妃様はゆっくりなさってください。また王子殿下が起きたら参りますので。失礼いたします。」
赤ちゃんをクーファンに入れたらそのまま持っていかれてしまった。怒涛だった。多分宇宙ねこみたいな顔になってると思う。疲れた……。因みに股はずっと痛いです。何か大事なことを忘れてる気がする……。というか情報過多すぎて何がなんだかだよ……。
お読みいただきありがとうございます。




