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はじまり②


「それでは、冒険に出るにあたって少し復習しましょう」


一旦、禍々しい球体をしまわせることに成功した俺は大人しくアカネの話を聞く。


「今回の冒険の目的は、ざっくり言ってしまえば人間的な成長と女神様への貢献ですね」


女神様への貢献は言わずもがな、人間的な成長とは旅に出ることで心身共に強くなろうね~と、まあこんな感じのことだ。

優秀な人材が増えるのは国としても世界にとっても良いことだしな。


「まず向かうのは『スプリング大陸』ですね。そして、その中心にある冒険者の街『チャイム』で冒険者登録をします」


この世界、冒険に出たから冒険者という訳ではなく、きちんと手順を踏んで登録しないと冒険者という扱いにならないのだ。

その手続きのために俺たちは、世界最大の大陸である『スプリング大陸』を目指している。

俺たちの国、『誓和国(せいわこく)』からは海を渡らないと行けない場所にあるので、こうして馬車に乗り、船着場を目指している。


「街で登録が完了したら自由に冒険ができますが、まずはその街で初心者向けのクエスト等を確認してみましょうね」


魔法は達人級のアカネはともかく、俺は剣術も魔法も全くの初心者なのでその街で冒険者としてのいろはを覚えることになる。

ここまでの流れはなんとなく学校などで習ったので理解している。

アカネの話に俺は頷く。


「まあ、まずは街を目指すまでは準備をしっかりして安全に進むのが最優先だな」


「はい!その通りでございます!」





「去ね!!この女狐めが!!!」


「なによこのクソメイド!!!」


船着場について、ものの3分後の出来事である。



時は遡り、3分前の話でもしようか。

船着場についた俺たちは馬車を降り、乗る船を探し歩いていた。

大小問わずたくさんの船と、それらに乗る大勢の人間で船着場は混雑していた。

そんな中でもアカネは迷いなくスイスイと歩いていく。

少なくない人数の人間に一度もぶつからずに歩くアカネとは対照的に、慣れない場所を歩くのに手間取っていた俺は…


「あっ、すみません!」


ドンッとぶつかり、相手を転ばせてしまった。

相手は小柄な少女だったため、故意ではないとはいえ体格のいい俺が肩で突き飛ばす形になってしまった。

少女の周りには旅行用のバッグや、彼女のものと思われる杖が散らばってしまっていた。


「ごめん、大丈夫だったか…?」


「いえ、こちらこそすみません。帽子がでかくて前がよく見えなかったのです…」


深々と魔女のような帽子を被ったボブカットの少女に手を貸そうとした時だった。


ドウゥゥン…ッ


目の前が焦げて、穴が、空いた。


俺と、その少女の間が、だ。


「ユウト様ったら少し目を話したら…ふふっ」


目の笑ってないメイドが前方50mほどのところから魔法をぶっぱなし、何やら小声で呟きながらこちらに向かって歩いてくる。

周りの人も音に驚き、彼女のために道を開ける始末。


「あ、あの、アカネさん…」


冷や汗が止まらない俺は嫌な予感しかしない。

とりあえずこの子に危害が行かないようにしなければ…っ


「アカネ、俺がこの子にぶつかって転ばせちゃったんだ。だから、手を貸してあげようと思ってさ」


「まあ…!ユウト様ったらお優しいのですね…」


アカネは、うるっと涙を少し浮かべながら感動している。

人に優しくすることがそんなに感動することだったのか…?と思ったのも束の間。


「そんなクソ女狐にも優しくしてさしあげるなんて…」


俺の必死の説明も虚しく、すでにその手には闇を纏った球体魔法が顕現されていた。


「だぁーー!?待て待て待て!!俺がこんな小学生ぐらいの子に手を出すわけないだろう!?」


「……小学生?」


ピクッと、目の前の大きな帽子が揺れた。

俺の言葉に反応したのはアカネではなく、大きな帽子を深く被っている少女だった。

帽子を深く被っているため、表情は見えないがその体は小刻みに震えている。


(可哀想に…アカネの魔法を怖がっているんだ…)


巻き込んだうえにこんな怖い思いをさせてしまったのだ。ここはガツンとアカネに言ってやらないと。


「アカネ!公共の場で、それもこんな小さな子に魔法を放つなんてちょっとやりすぎじゃないか!?」


アカネも一応は自覚があるのか、少しバツの悪そうな顔をする。

魔法を発動させるのも悪いとわかっているので、球体魔法も引っ込めてくれた。

よし、いい流れだぞ。

しかし、その流れも即座に壊されることになる。


「……だ…」


「……ん?」


「だぁぁぁぁあれが小さい子よ!!!!!」


今度は目の前の少女が勢いよく立ち上がり、怒りを爆発させていた。

そして、床に転がっていた杖を素早く拾い上げ、俺の眼前に突きつける。


「私はもう16歳よ!このマヌケ!!」


顔を真っ赤に、顔色よりも濃い赤色の瞳に小さく涙を浮かべながら彼女は高らかに告げた。


ものの3分の出来事である。


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