↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/69

第62話 感動し損ねる系の再会。

 っつか義弟の事は覚えてねえから再会未満。

 道すがら買ってきた食材はリケラに要求されたものなので、一旦リケラに渡す。

 姉ちゃんほどじゃないけど、リケラも料理は上手い方だ。但しほぼエルディム式。

 無論オレも手伝うつもりだったんだけど、本日の台所組、ノノとリケラに止められた。


「ごめんよ、今日の料理はきちっと計量しないとダメなやつでねえ」

「お手伝いはわたくしがしますのでー、こちらで待ってくださいねー」


 そもそも姉ちゃんちは若い夫婦向け物件だからか、キッチンはそんなに大きくない。

 まあまあ大柄なオレまで入ると動線に無理が出るから、仕方ないな。

 但し、オレが座らされたのは、キッチン入り口にあるスツールだ。

 まだ出してない買い物があるんで、ここで待機しろって事らしい。


 と思ってたら、てきぱきと早速何かを作ったリケラにはい、とタッパーを手渡される。


「時間経過させたくない品だからしまってちょ」

「アッハイ」


 収納を冷蔵庫というか一時保管庫に使われるようです。まあ確かにできたてほやほやで揃えるなら、これが一番確実ではあるな。


 それにしても、リケラの料理は魔法を駆使するタイプのもので、一品ごとに掛ける時間はさほど長くないけど、いやに品数が多い。

 これをここのリビングのローテーブルにお出ししたら、はみ出すのでは?


「安宿《あすか》、今日の茂咲の専務さんの接待にしーちゃん混ざってたって板に出てるけど」

「えー、そんな話まで話題にされんの?名城雲《なきぐも》さんは確かにいたけど、組合の木在《きさら》さんも一緒だったぞ?」

「ハーレムじゃん、って専務がおっさんだネ!」


 素直に返事をしたら、リケラから嫌なツッコミが来た。

 姉ちゃんは専務の接待だと思ってるようだし、組合側から最初に提案された人選はまさにそんな感じだったが。

 なお今回の依頼以前にも定期的にレベリングしていたという専務さんは、おっさんというほどの年齢には見えない、という事だけは追記しておく。

 まあ普通に奥さん一筋の真面目な人だったけどね!


「本当はもう一人いたんだけど、当日キャンセルになってね」

「あら、組合斡旋の仕事よね?」

「本業の方で出動かかっちゃったんだって。お医者さんだって話だった」

「あー、そういえば朝イチにヘリ飛んでたわね!」


 そう、本当ならパーティは6人編成が基本なので、もう一人連れていく予定だった。

 早朝に仕事が入って無理になった、と連絡があったのは集合前の話だったそうで……

 今の世の中でもお医者さんは大変だなあ。



「よしこれで全部」

「はい収納」

「じゃあお兄さんもそっちの部屋に移動です」


 姉ちゃんと情報を交わしている間にリケラの調理は完了し、できたものは全部オレの収納送りに。

 そして席を立つよう促され、リビング側に全員で移動すると、リケラが扉を閉める。

 あれ?さっきまでオレの後頭部に当たってた、昔懐かしい系のビーズ暖簾はどこいった?

 扉、どこから沸いた?


「んじゃ改めて繋げるー」


 どうもリビングとキッチンの間にどうやってか扉を設置したのはリケラらしい。

 扉に魔法で細工をして、別の場所に繋げるようにもしている?


「暖簾と扉を差し替える魔法使って、魔法加工した扉に魔法鍵を当てると任意の場所に繋がるって魔法だよん」


 リケラの説明。うーむ、エルディムの魔法便利すぎんか?


 エルディムという文明は元々魔法文化を科学レベルに磨き上げてきた高度魔法文明だったそうなので、そういう生活に便利な魔法はあれこれ存在する。

 ただ、現代エルディム人は、基本理論に沿って魔法を構築するので、オレが使う勇者セットの魔法、〈クリーン〉や〈解毒《シェセラー》〉みたいな、効果範囲の割に魔力消費の少ない魔法が余り多くないらしい。

 以前その辺の話をリケラとした時も、なんでこれで魔法がこの効果で起動するのー!!って頭抱えてたし。

 これが第三世界の魔法になると、構文が違うだけで似た効果の魔法があるケースがドカンと増える。

 但し中級まではこれも第三世界魔法の方が魔力効率がいい。上級以上は消費魔力が増えたので、エルディム式と大差ない結果になりがちだが。


(世界が融合してまだ6年ほどですので、今は他世界の法則でも雑に動く、という感じですね。

 なので、キミ自身が使う分にはずっと問題ないでしょうけど、世界が安定していくにつれて、他に伝えるのが難しくなる魔法はあると思います)


 世界樹さんから解説が入る。

 成程?オレがずっと使えるってのは……勇者セットの情報保全が効いている限りは、って事だろうな、多分。



 再び開いた扉の向こうは、見覚えのある、季節のない森だ。リケラの亜空間投影エリアだな。

 この世界に帰って来た初日の寝床としてお世話になって以来、ちょくちょくお邪魔してたりはする。ここ半年くらいは仕事でしか会ってないからご無沙汰だけど。


 その入り口からほど近い場所で、寝袋ですやすや眠っている五斎さんが見える。

 五斎さんに最後に会ったのは救出の時だから、随分健康的な寝顔になったなあ、というのが最初の感想だけど……ここはツッコミどころだよなあ?


「……退院そうそう寝袋?」

「本人の希望なんよ。部屋の中が怖いっていうから」


 そしてツッコミには割と深刻な回答がリケラから。

 トラウマになってる?いや、あの状況をちょっとでも覚えていたら、なるよな、うん……


「植物がそばにあるのは大丈夫なんだ」

「寄生植物なんてオブジェクトには入れてないよ。あいつらアタシらから見ても外来種だし」


 リケラによれば、元々エルディムにいた他の生きたものを狙う食性を持つ植物は、地球でいうところの食虫植物、ウツボカズラとかの捕食系だけらしい。

 地球のそれよりどいつもこいつもサイズがでかくて、野生哺乳類は勿論、デカブツになると人類も狙うので、近くにいると割と物騒な存在。

 但し、自分たち自身も光合成はしていて、補助的に獲物を狙うものばかりなのは地球と同じっぽい。

 当然、本来ならリケラが寛ぐための空間であるここには、そんな物騒なものは入ってない。


 なので、退院が本決まりになる前から、病院でも亜空間エリアへ避難していたんだそうだ。

 だからリケラが余り姿を現さなかったんだな……


 そして退院の時も、この亜空間経由で帰ってきたから、姉ちゃんも五斎さんも、近所の人には見られていないらしい。

 そんなこともできるのかと思ったら、流石にセキュリティ設定できる人がいないとだめ、だそうだ。

 成程覚えておこう。五斎さんを取り返してから、実家……自宅のセキュリティ権限はオレが貰ってるからな。いつか使う日があるかもしれん。


「イツキー、ごはんできたわよー」


 そして姉ちゃんが声をかけるなり、ぱちりと目を覚ます五斎さん。


「おはようアズ、いま何時……?」

「19時半よ。今日はリケラが退院祝いでごちそう作ってくれたし、あたしの弟が来てる」

「おとうと……ああ、うん、話は聞いたね。アスカ君、だっけ」


 ああ、やっぱり覚えてないんだな、判っちゃいたけど。

 ほんのちょっと寂しい気持ち、オレにも感傷がちゃんとあるんだなという再確認。

 いやあ勇者システムの感情補正が割ときつめでさあ……たまに人類らしい感情の定義とか確認したくなるんだよ。


(外せませんの?)


 外す気はないよ。これがなければ、千年近く戦ってる間に、確実にオレは存在自体が擦り切れ果てて壊れてたはずだから。

 ……多分外したら揺り戻しが来ると思うし……


(千年ですか。流石にそのレベルだと、反動がないとは言えませんの……)


「安宿、何ぼけっとしてるの。挨拶しなさい?」

「え?あ、そうだったゴメン。こんばんは、夜楠《やぐす》安宿です。退院おめでとうございます?」

「少年、なんでそこで疑問形」

「ありがとう?たしかに、社会復帰とかには、ほど遠いから、めでたいかどうか、あやしいよね」


 リケラに突っ込まれたよりも、本当に五斎さんが後輩だったオレの事は微塵も覚えてないのが、そして、彼の話す……どこかたどたどしさの残る、平坦な音の言葉が、やっぱり寂しい、悲しい。


 オレも普通の人間なんだな、ってつい安心してしまうの、本当はこういう場ではよくないんだろうけどなあ……

 という訳で主人公本人も珍しく自分の感情に振り回されている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。