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第54話 地形要素ばかりが面倒。

 また沼です。

 注意深くも足早に歩いて、コア持ちや主要個体は見つけ次第討伐しつつ、気が付けば95層だ。


 そう、流石に深層では雑魚にもコア持ちが結構な確率で混ざってくる。

 まぁ検知次第オレかリケラの魔法の餌食、はたまた姉ちゃんの双剣の露と消えるわけだが。

 いやホントに、レベル差の暴力、酷いな。


 で、この95層な訳ですが……まーた沼地だよ!!

 ほんっとダンジョンコアども、沼好きだな!?


「うーん……まずは〈雷撃《クルガロ》〉」


 まずはおもむろに、前方の沼地に雷撃ぶっぱだ。

 ごろごろと、ドロップアイテムが積みあがる。


「これ何倒してるの?」

「ヒルと藪蚊の上位種っぽい奴、あ、ブユもいた」

「うわぁ」


 そんなもん当然サーチできた時点でデストロイですよ!

 オレの範囲魔法一発でオーバーキル気味だから、オレやリケラはレベルの壁が有効で確定で無傷だろうけどさあ。


 ドロップアイテム自体はポーションとグリセリン、割と平凡。

 まあ敵も階層の割に小さくて弱いしな……細やかな不快感を追及した迷宮とか、正直かなり嫌な感じだけど。


 ぬかるむ足元は、リケラが炎魔法で焼いて一時的に乾かすという大技に出た。

 すぐに水が滲んでくるので、小走りにならざるを得ないけど。


 順次オレの雷撃とリケラの炎魔法が交互に飛ぶ。

 時々オレが炎魔法を担当したりもする。


「うぇー、これ以上は無理ー魔力回復がおっつかなーい!」

「んじゃ休憩だな、キリのいい場所だし、沼じゃなくなったしな」


 だけど、地形の回復が早くて魔力ポーションを飲んでる余裕があまりなかったこともあって、97層に到達したところでやっぱりリケラがガス欠した。

 まあこればかりはしょうがない。魔法そのものの魔力効率も違うんだけど、何よりも、勇者セットの自動回復が優秀過ぎてなあ……


 幸い沼は2層で終わりで、一応乾いた地面だったので敷物を広げて休憩だ。

 ただ、ずざざ、という砂の音が微かに聞こえてくるので、流砂の可能性、大。

 本当に物理障害だけで攻めてくるなあ?


「少年の魔力どうなってんの」

「自動回復がね……大雑把に言うと2秒で300くらい回復?」

「えぇ……うらやま……体力も魔力も?」

「体力は……いくつ回復だっけ……暫く減る事態自体があまりなかったから……」

「言われてみればあんたをパーティに入れてから体力減った表示、見たことないわね?」

「だってずっと格下だし、そもそも91以降はずっと先制殲滅してるから」

「我々も体力は殆どノーダメねーちょっと暑いトコで消耗したくらい?」

「しいていえばクソバードの不意打ちくらいかな。自動回復で何とかなる範囲だったけど」


 確か割合回復だったはずだから同じ数字じゃなかったよな……オレ体力の方が魔力より多いからなあ一応。

 ともあれ、同じように魔法を使っていると、自動回復の強いオレより、魔力量はオレより多くても回復手段に乏しいリケラが先にガス欠するのは、もうほんとどうしようもない。

 理不尽だろうが仕様の差って奴だ。


 今回は軽くコンビニ食品でおやつだ。沼地で冷えたから肉まんとかあんまんとかあの辺。

 消耗が大きいリケラにだけは、前の世界での貰い物、トマトのカプレーゼもお出ししておく。


「あ、いいなー」

「姉ちゃん全然消耗してないだろ」

「あ、回復用か、しゃーなし。でも今回リケっち2層抜き行けたから、今までの沼地系より進めてるよね?」

「あー、多分ノノたんのジョブの補正だと思う……なんかバフと回復力増幅してるよこの子」

「え?わたくしですか?」


 ノノ本人は完全に自覚のない顔だ。

 オレも全然気が付いてなかったけど、自動バフ系は本人も自覚ない奴多いっていうからなあ。


「オレが全然体感できてないから、割合数値じゃなくて実数のプラスが付いてる奴だな?」

「かもしんない。でも秒単位の回復に5~10プラスって継続的にはでかいよね!」

「確かに継続回復に乗るのはでかいな……」

「でも回復が間に合うほどではない、ですよね……」

「いや、まるっと1層分稼げてるのはめっちゃデカいよ!偉業だよ!」


 リケラ自身も魔力の自動回復自体は持っているようなんだけど、数字が魔力に対してしょっぱすぎる、らしいんだよな。固定値あるある、とぼやいてたし。

 そしてノノのバフは本人との距離で効果が変わるんだそうで、そこが5~10、という推定値に現れているらしい。

 ノノはオレが拾ったからか、基本的にオレの背後にべったりだからなあ……


「あたしとしては、ここにきて急に敵の強さ自体が下がったのが気になるかなぁ」

「……あのねアズちん、そうじゃなくてね。我々のレベルが高すぎるんよ……普通は十二分に心折れる凶悪エリア揃いなんよ?」

「……レベルに関してはなんていうかまあ……オレがいる時点で……?」

「でも、経験値的なものはサイズなりになっている感じがします」

「それそれ。沼になったらいきなり経験値入って来なくなったのよ」


 成程?ノノも姉ちゃんも取得経験値が下がったと?

 ってことは敵のレベル、やっぱり下がってるのか。

 ぶっちゃけオレの魔法だと、ここまでのエリアの雑魚は常時オーバーキルだからなあ……判らん……


「こんな深層でレベル下げる理由……?」

「レベルアップによる回復の妨害と、ごみドロップによるやる気ダウンくらいしか思いつかないわねえ」

「レベルアップ、全回復するタイプなんだ?」


 真面目な話、レベル制度に触れたのが帰ってきてからだから、そんな仕様、確認しようがなくてですね?

 というか、その仕様でもレベル酔いと空腹は不可避なのか?


「全回復といっても回復するのは体力と魔力だけだからね……」

「レベル酔いのような不調が回復するわけではなくてですね……」


 ……いやその節はマジですみませんでした。


「そもそもレベル酔いは体調不良や病気とも別物だからねえ」

「どんだけ健康でもやらかすからねー。発生基準は未確定だったりするけど」


 急激にレベルが上がりすぎた場合、ステータスと身体の状態に乖離が発生することがあるのがレベル酔いの根本的な原因である、らしいことしか判ってないんだと。

 なぜ判ってないかというと……レベル酔い現象の発生自体が比較的珍しいから、だってさ。


「普通に順序良く訓練しながら階層進めてくならレベル酔いなんて起こらないからね」

「アタシや少年みたいにレベルがカッ飛んでて経験値全スルーするような個体が混ざったときだけだからねえ、そりゃレアさー。

 それに貰う人数の方が多かったら頭割りで軽減されるしね!」


 聞けば、リケラの1500レベル以上、というのはエルディムでも相応の高レベルであるらしい。

 寿命を持つ一般人類には無理らしいので、さもありなん。


「安宿《あすか》がそのリケラよりレベルが上ってのが理不尽なんだけどなあ」

「レベル『換算して』、だからねぇ」

「そうだよ。オレ、レベル制度に触れたの自体、帰って来てからだからね?」

「そういやそうか……」


 むしろオレの方がよほど理不尽だと思ってるよ?多分。



 そんな雑談をしていたらリケラも充分回復したそうなので、休憩は終了だ。

 進むべき先は、見渡す限りの荒野。

 砂地と礫と岩盤が入り混じる、恐らくトラップ満載の、通らせる気自体がない奴だ。


 にしてもここ、モンスターの気配が薄いな?

 植物属性持ってるのに砂漠設定したせいか?それでもサボテンくらいはいるよな?


 足場のよさそうなところを歩き始めたら、いきなりにょろりと葉っぱのようなものが伸びてきたので、〈氷結《クルシェド》〉を叩きこむ。

 びきびきと地面にヒビが入る。ってうわこれモンスターの!!上!!!


 思わずノノを掴んで飛び退く。姉ちゃんとリケラはまだ足を踏み出してないのでセーフ。


「らしくないぞー少年」

「いや、今のは判りづらかった」


 リケラには軽く煽られ、姉ちゃんは気付いてなかった勢だったらしく擁護された。

 その姉ちゃんの足元にドロップアイテム。


「なにこれ……また蒸留水?」

「ネタ切れなの?深層ってもっといいもの出るんじゃないの?」

「わたくしたちが進めない、ということだけに全力を注ぎ始めている気配がします」


 恐らく、ノノの意見が正解なんだろうけど……なんでそこを見抜くんだろうな、この子?

 一応理由はある<見抜く

 なお回復量の数字は本人もあまり把握してなくて適当こいてる。ステ見ろよ……w

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