第52話 サブダンジョンコアとジョブ。
サクサク行くよー!?からの!脱線!
エルダーリッチが消失した直後に、彼が立っていた室内中央の空間がぐにゃりと一瞬だけ歪む。
そして現れたのは、濁った灰色の球体の乗った、華やかな黄金の台座。
だが、これは……
「出たわね諸悪の根源!」
オレが何か言うまでもなく、姉ちゃんが抜刀しながら飛び出し、その球体を台座ごと縦半分に、綺麗に真っ二つにした。
ぱりんと軽い音で砕けた台座の上の球体は……トラップ付きのニセモノだ。
台座の下に埋め込まれていた、本物の第二迷宮のコアが、これも綺麗に両断されて、こちらはモンスターのようにザラリと崩れて、台座ごと消えていく。
スキルまで載せてぶった切ってたけど、これ姉ちゃん、見抜いていたのかな。それとも単に腹立ちまぎれに全部斬ったのかな?
まあどっちでもいいや、台座とニセモノ側に仕込まれていたトラップに引っかかることなく、事は成ったのだし。
なお、エルダーリッチの箱が人数分の他に、なんとダンジョンコアも箱をくれました。
何が入ってるんだろうな?
ドドド、と地鳴りの音が遠くから響いてくる。僅かに床が揺れる。
これは、繋がっていた第二迷宮が崩壊し始めたからだ。
誰もいないはずだから何事もなく消失して、迷宮が発生する前に存在していた土砂に巻き戻るように埋まって終わり、なんだそうだ。
まあ誰かがいても、人間は普通に地上のゲート前に放り出されるだけだそうだけど。
「ここは大丈夫なのです?」
「81から下は第一迷宮だから大丈夫」
「仮に崩れても、人間はその時に生きてりゃ外に放り出されるだけだよ!」
不安そうなノノに、姉ちゃんとリケラが迷宮の仕様を解説している。
オレが口を出すまでもないな。
それなりに魔力を消費したので、またもや休憩だ。
というかもう夜中なので、晩飯食ってここで野営だね。
「気が急くけど休憩は取らねばならないィ……」
「アタシたち歩いてただけだけどネ!」
「そこはまあ適性の問題なんで。という訳で今夜は鍋です」
敷物を敷いた上に木製の折り畳みテーブルを置き、どん、と湯気の立つ水炊きの鍋を載せる。
先日垂水で買った、スタックできるシェラカップを人数分出し、瓶入りのポン酢醤油は1本しか持ってきてないので順番に回してもらう。ご飯はタッパー入りだけどほかほか白飯だよ!
ってそうだ、水炊きといえば大根おろし!ぬかった!
「……あー、ごめん。流石に大根おろし器までは持ってきてない。
大根はキロ単位の査定だったんで端数があるにはあるんだけど」
「少年の収納、優秀過ぎる。おろしは贅沢なのでしゃーなし」
「迷宮で食べるごはんとは思えないのですが……ほかほか……」
「食べるわよー!明日の活力!」
姉ちゃんがややカラ元気っぽいけど、まあ気が逸るのはしょうがないからね……
なにせ、最下層まで、あと10層だ。
「……この食事、魔力回復がおかしくね?」
その事実に最初に気付いたのはリケラだ。
やっぱそうだよなー!第三世界で貰ったやつだから、魔力多め!
「食材の魔力含有量が多いと、迷宮内で食べる時に限って回復量が増える、そんな感じ。
コピー食品でもここまで派手にじゃないけど発生したよ」
「あーあーあー!噂では聞いたことある!」
なるほど、探索者界隈ではすでにコピー品の方が性能がいいと噂になってたんだな。納得だ。
ただ、コピー品による回復は個人差の範囲内っぽくて、定説になるほどには検証されてなかったようだ。
そもそもこれ、地上だと一切発生しない気配だしなー。
「ごはん、少し多いかしらと思ったけど、全部いけちゃいました……」
「レベル上がった分基礎代謝も上がってるからねー。食費が大変になるかも」
「ジョブのないノービスのままだから、多分そこまで大食漢にはならないと思うけど……あれ?」
ノノの言葉に反応した女子二人だけど、リケラが途中で首を傾げた。
「ノノちゃんジョブ付いてる……??でも、ナニコレ……見たことないんだけど???」
はい?
思わずオレもノノに鑑定……なんすかその『天地の星』って?ジョブなん?
「ジョブ、なんでしょうか、これ……?」
鑑定技能がなくても、本人には自分のステータスやジョブが判るのはこの世界の今の仕様。
というのも、エルディム人、この世界でコンピューターゲームって奴に触れた結果、オレが使ってるのとはちょっとフォーマットから違う感じの、ゲームっぽいステータス画面を作成することに成功しちゃったんだそうで。
なおオレは使えません。今使ってる勇者セット版と排他関係らしくてさ。
あれこれの隠蔽に使ってる部分があるから、変更できないんだよね。
「うーむ、説明文もなんもなーい!完全初見。判らんなー?少年、判る?」
「オレにもジョブ名らしい、ってことしか判らない……というかジョブ制度あったんだ、ってとこからだよ?」
「ああ、正規のジョブが出るの自体がレアだから、あんまり知られてないよね」
正直に言う。そんなシステムになってるとは思ってなかった。
ってジョブ自体がレア?どゆこと?
「迷宮管理組合に登録する方が早いと、だいたい探索者、って扱いになるんだけど、たまにジョブが生える人がいるんよ。あとはもっとレアだけど天然もの!
ノノちゃんのは正規のパスじゃないから、今までは探索者扱いもされずに一般人だったんだけどー」
「なおあたしの『勇者代理』も実はジョブです。称号からジョブが生えてるタイプ」
「マジか。じゃあオレの……は……?」
勇者称号をちらっと確認したけど、第三世界で変更された[異界の元勇者]のままだなあ。
第一世界にもジョブの概念はあったから、第二世界までは勇者がジョブでしたけども。
……ジョブ欄、空白。あれ?
「あー、少年のは称号同士で競合してるな?守護者と元勇者」
「ああ!……ってナニ?称号って競合するんだ??」
「多分勇者称号が『異界の』、更に『元』じゃなかったら、守護者の称号自体が弾かれてたんじゃないかなあコレ……レベル問題もあるしぃ……」
リケラの説明にうへえ、と内心思ったけど、そこは出さない努力をする。
第三世界、いい仕事しすぎだろ、あれもこれも!
でも言われてみればそうだな、勇者セットの情報保全って奴もあるからな。
下手するとそれで弾かれる可能性すら、ないでもないのか。
……多分これ、オレが本気で要らないって思ってたら現状でも弾かれるな。気を付けよう。
「よく初見で弾かなかったわね?」
「貰えるものは取り合えず貰っとく主義」
「警戒心ドコー?」
「守護者、って時点でそんな悪いもんだってこともないだろうと思って」
一応、オレなりに冷静に判断していることは強調しておく。
っつか仮にダメな奴だったら、オレの意思と関係なく、勇者セットが多分弾きますね!
あー。
だから、あの時、蝙蝠のおっさんの眷属化は、普通に有効だったのか。
あのおっさん、ガチでオレを助けようとしてくれたわけだし。
思いもかけないことに答えを得た気持ちになって、穏やかに今日は休息だ。
まぁ例によって結界張るから不眠なんだけども。
それでも、思ったより早く底に辿り着けそうな感じになってきたからな、心穏やかだぜ!
正直、ボス部屋の場合結界まで貼らなくても大丈夫かな、という気はしている。
でもなんていうか、習慣付いちゃってるというか……
女子3人に囲まれてると、流石のオレも大人しく寝てられ……いやそんなこともねえなあ?
身体的に枯れてるってことはないはずだけど、流石に千年以上活動してると、精神的にアレなんだろうか?
……違うわこれも勇者セットの状態保全だわ。目的がある間は本能の一部にも制限が掛かってる、っぽいや。
まあ姉ちゃんはもちろん、ノノに対してもオオカミさんになるつもりは当然ないんで、現状維持でいいな!問題ない。
リケラは……軽くあしらわれた挙句に鼻で笑われそうなんだよなあ、なんてったってガチの『実年齢でもお姉さま』だし……
寿命のない種族に年上とか年下とかあんま関係ないぞ^^
あと某召喚補助機構がいい仕事をし過ぎである……




