第29話 踏破報酬と箱の中身。
うっかりはお約束。
「そういや50の箱って……持って帰ってきちゃったな?55の箱っぽいのもあるけど」
「あ、見てもらうの忘れてたァ」
ふと収納の中を見たら箱が2種類入っててですね。
そっか、55層もクリアしたことにはなったから箱だけあるのか。
「でもこれ55の箱の方は当然秘匿よね?」
「あーそれね、かいちょーが55のはいつものチケットって教えてくれた」
「あれかあ!」
5%割引券か!まあ確かに妥当ではあるな、戦ってはいないもんな。
「あと踏破報酬の方、話は聞いたけど貰い忘れてる気が?」
「あー、そういえば、そうね?」
「ドロップアイテムの査定で時間が掛かり過ぎたからしょうがないよ」
そう、職員立ち合いでの箱チェックを忘れた理由は、踏破認定チェックする前にドロップ品の査定をしてしまって、時間がなかったからだ。
垂水の迷宮管理事務所自体は終夜営業だそうなんだけど、オレ達が晩飯食う場所がなかったんで帰るしかなかったんだよね!
垂水迷宮は、会長爺ちゃんのおかげで今まで溢れた事はないんだけど、事務所の造りの方が大きいだけで機能は他所と同じなんで、未踏破だった第一の事務所には、そもそもメシ屋とかショップの類は入ってないんだそう。
昼勤職員のごはんはデリバリーだそうだし、夜勤組は基本弁当だそうだ。
ただ、正式に踏破認定が出たら、食堂やお弁当屋さんの誘致はあり得るのだとか。
「実際垂水第二の事務所はコンビニ併設してるしね、二十四時間営業で」
「それがここの最寄りのコンビニ?」
「そういうこと。明日おにぎり買ってこようかなァ」
「明日は第一直行よ!踏破登録ちゃんとしないとだもの」
「はぁーい」
二十四時間営業なら寝る前に買いに行ってもいいような気もしたが、多分姉ちゃん的には今日はもう出かけたくない、んだろうな。
うん、姉ちゃんはオレの隠し事を見抜くけど、オレだって、たまにはね。
多分今の姉ちゃんは、爺ちゃん会長の件から、五斎さんに関して最悪の事態を連想してしまっていて、そんな連想をしてしまったこと自体を隠したいんだろう。
現状でその可能性はかなり低いとオレ自身は予測しているけど、絶対ないとは言えない以上、オレから何か言えることはないからなあ。
その日はそのままシャワーだけ貰って寝た。ソファーベッド、案外快適。
翌日は朝飯を食ったらそのまま第一迷宮の事務所だ。
今日の朝飯はクロックムッシュでした。姉ちゃんが料理上手いの、助かるなあ。
「あの箱ってチケット以外に何が出たことあるの?」
「垂水だと調味料が結構出るわね。20層ではよくウスターソースが出るわよ」
「?……ああ、戌でわんこマークのあれか……」
うーん、どうも時々、思い出すのに時間がかかるものがあるなあ。
いや千年からの間、ひたすら虚無なバトル繰り返してて、これだけちゃんと覚えてる方が凄いのかもしれないけど、オレ。
「商標、アリなんだ……」
「25層がな○卯のから揚げで30層が猿で始まるサ店監修の缶コーヒーだった時には脱力したわね」
「なにそれ反則では」
「なお間に挟まる29層は水ようかんが出ます。レア品が竹流し」
「スライムがパック入りの水ようかん落とすのシュールよね」
そんな話をしていたら、あっという間に第一の管理事務所だ。
「あっワカツキ様ヤグス様リケラ様!申し訳ございません!」
開口一番受付のおねーさんに深々とお辞儀で謝られるオレらです。
「いやー先に査定やっちゃったのはこっちのミスだから気にしないで!」
姉ちゃんは笑って謝るお姉さんに顔を上げさせ、オレとリケラもへらっと笑って頷く。
こういう時はだいたい姉ちゃんに任せておくのが多分得策だ。
オレはここのルール、まだあんまり知らないしな。
「それでは本日は改めて踏破確認と箱査定、でしょうか」
「そうね、ラストは54だからないけど、50層の箱があるからそっちを見ないとね」
そんな訳で、まずは箱開封の儀からだ。
「50層はサボテンと伺いましたが」
「そうよ、ドラゴンフルーツって奴」
「ですがこれは」
「ツナ缶も出てたから……ダジャレ枠で……」
姉ちゃんの箱から出てきたのは、なんと『とんかつ弁当』だ。
流石にとんかつ弁当とサボテンの関連性が判らない。
「そういえば全国チェーンのとんかつ屋にサボテンがどうのって屋号の店があった、ような」
「ああ!ありましたねえ!このあたりですと、隣の市に行かないとないですけど」
な○卯もそうだが、屋号までありなのかよ!セレクトが幅広すぎるだろ!
「というか弁当になってればコメもありなんだ」
「あら、言われてみればそうね。まあレアドロップもいいところだから例外なのかしらね」
そしてリケラの箱も同じものが出た。仲いいなキミタチ?
「あとは安宿の箱だけど」
「ほいほい……ってなにこれ」
オレが開けた箱から出てきたのは、透明な液体入りの、緑と黒のラベルが付いた細長い瓶だ。
「……テキーラ……?」
「……違う、テキーラの原料はサボテンじゃない……まあオクラもいたからそこはノーカンでいいか……」
「垂水でアルコールが出たの、初めてじゃないです?」
まさかのお酒。しかも結構度数高い奴。
爺ちゃん????
「いや、どこかでワインが出た覚えがあるわよ」
「ああ、41層のアルパカが何故かワイン各種落とすわね!」
「ということは?」
「箱では初、そして初の蒸留酒ですね!他にもあるのでしょうか!」
受付のお姉さんはイケる口なのか、やけに嬉しそうだけど……
オレは呑まないんだよなあ、技能のあれやこれやで、酔えないから。
箱確認は無事に終わったので、次は踏破認定の方だ。
これは迷宮パスをチェックするだけだ。
これも爺ちゃんと世界樹さんが小細工して、55層の情報はなしになっている。
実際55層はもう迷宮から軽く切り離された状態らしいので、虚偽のデータとも言えない状態だけどな。
「ふむふむ……少しデータに歪みがありますが、54層で確定ですね」
「データに歪み?」
「出入りの前後に階層構造に変更があったようです。
階層のキリが悪いので、恐らく未完成の階層が崩れた、あたりではないでしょうか。
今後の運用に問題は出ないかと」
成程?どっちみちあの未完成エリアは除外される運命だったって訳か。
無事迷宮踏破が認定されたので、住民カードの方に報酬が入る。
……わあ、七桁?!
「流石に50層越えだとでかいわね。今日も帰りは買い物すべきかしら」
「あー、少年にも服買おう服!流石に第一踏破は祝賀会あるっしょ!」
「え?祝賀会?出ないとだめ?」
正直オレあんまり目立ちたくないんですが!小市民を!目指したい!
(無茶言うわこの子)
まさかの:世界樹さんに真っ先に突っ込まれた。
「出ないとダメに決まってるでしょう。あんた自分が功労者だって自覚ある?」
「小市民は無理だと思うよ?」
そして何故かリケラに小市民ネタが漏れている。世界樹さあああん?!
とはいえ、稼いだらある程度カネを落とせ、ってのは理解できるので、買い物には付き合うしかないね……
いやマジでなんでこうなった?
ノーマル市民ライフが既にこの世界に存在しないからしょうがないってコト?
せやね。
あとテキーラの件はかいちょーが下戸だから……詳しくないらしく……アルパカは泡まで出るけど……




