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闇に潜む女  作者: 大窟凱人


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6/6

ある冬に起きた惨劇の非公開報告書

記録映像や音声、証言などをもとに作成


■ 2月10日 


10:42

■■県■■村に住む男性から、家族が血を吐き倒れたとの119番があり、現場に救急車が駆けつける。ところが、駆けつけた救急隊員は帰ってくることなく、村にとどまり続けた。連絡をしても返事はなかったため、警察が駆けつけるが、無線から「助けて」という肉声が届き、彼らの連絡も途絶えた。■■村の住人も同様に、ひとりとして連絡が繋がることはなかった。

■■県警は対策本部を発足。感染症による致死を疑い、ただちに■■村への立ち入りを禁止。専門家を含めた調査チームが招集。


大雪のなか、救出部隊が出動した。


12:21

隊長からの通信。「救助は無理だ。ここへは絶対に来るな」この連絡を最後に通信が途絶える。


13:30

■■県警は政府に協力を要請。自衛隊のドローンによる調査開始。リアルタイムの映像を受信し情報を得ようとする。雪が降る中、村民と救助部隊の死体を確認後、何者かによってドローンは破壊される。

吹雪のため映像は不鮮明。詳細は不明。


16:11

人間、もしくは未確認の存在による攻撃と推測。非公開で雪原地帯に強い人選の特殊部隊が再編。


17:50

首相による突入許可が下りる。



■2月11日


10:00

晴天。防護服に身を包んだ第一部隊が■■村に潜入。カメラを装着した隊員Aによるリアルタイムの報告あり。日に晒された村民と救助部隊の損壊死体を複数発見。いずれも凍り付いている。外傷がある者と、吐血のみの者に分かれており、外傷のある者は体中に無数の穴が開いていた。


10:20

降り積もった雪で形成されているオブジェのようなものを発見。いずれも歪。歪んだ人の顔。手や足、眼球などの一部。垂れた長いツララが不自然に渦を巻いて触手のような形状になっている。

この時「気色悪りィ雪まつりみたいだ」と隊員Aがこぼす。

専門家が水に異変が起きている可能性を示唆。


11:34

想定していた脅威を発見することができないまま村の探索が終了。

専門家が雪の一部を採集し、キャンプまで帰るか検討を始める。

天候が変わり、雪が降ってきたところ、画面にノイズが走る。

視界が急激に悪化。ヘルメットカメラの映像が、影を映す。

隊長が臨戦態勢の号令を出すが、同時に隊員Bに何かが飛んできて突き刺さる。

画面が激しく揺れ、隊員Bのヘルメット上部から不自然に長い氷の棘が突き抜けているのが映る。

悲鳴すらなく、倒れる衝撃音だけがマイクに拾われた。

隊員Bはその場に倒れる。銃撃が開始される。

数分の間攻防が続く。映像には、ツララによる攻撃により次々と倒れる隊員たちが映し出される。

隊長、退却命令を出し、撤退する。


11:52

すでに隊の半数が死亡。

退却途中、それまで静止していた、歪な形の雪のオブジェが、動き出していた。不完全な人間のような外見。関節が存在しないかのような不規則な挙動で、雪同士が擦れる『ギチギチ』という異音を立てながら接近。隊員たちは銃でそれらを撃退しながら進む。

突然、隊員Cが吐血して倒れ、隊員Aが駆け寄る。苦しそうな隊員Cの映像がアップで映し出される。防護服が雪の手に掴まれ破かれており、そこから雪が入り込んだ様子。

隊員Cの絶命を確認し、撤退を続行。


12:12

村の外まであと30mほどの地点にて、殿を務めていた隊員Dが雪の奥から飛んでくるツララに貫かれ死亡。吹雪の奥に見える影をカメラが捉えた。

最初に遭遇したときの数倍巨大。見上げるほどのサイズ。

風の音に紛れて人の呻きにも似た不気味なノイズと獣のような音声が混入、記録されており、これにより隊員たちの戦意が著しく低下。

明らかにツララによる攻撃の速度と強さも増している。隊員が続々と倒れていく。


12:20

手榴弾などの爆薬を使った応戦。巨大な雪影がひるむ。部隊は村を脱出。


12:35

10名中、2名だけが生還。


■ 2月12日

持ち帰った雪を顕微鏡で調べた結果、六方晶系の結晶構造に、生物学的な神経網に酷似した異常な歪みを検知。

「非科学的なことは言いたくないが、こんなもの見たことがない。邪悪で強い怨嗟を感じる」と研究員は述べる。

病原菌や感染症の疑いはなく、この村の雪にのみ現れる現象。


■2月13日

■■県警による調査チームが村の近隣や関係の深い業者に聞き込み調査を行う。

■■村は閉鎖的で、村八分のようなことがたびたび起こっていた。わかったのはそのくらいで、なにか兵器を隠し持っている等、危険思想の疑いはない。


■2月14日

寺の住職に呼びかけるも、対策や浄化する方法は見つからず。

政府はこの地域を立ち入り禁止区域に指定。


■2月20日

雪の変異による被害が隣の村に拡大。再び救助を行うが同じように大量の死傷者が出る。


■4月3日

雪が完全になくなったタイミングで再調査を行う。以前のような現象は起こることなく、白骨化した死体を回収。その際、白骨死体の配置が、かつて村八分にされ凍死した一家の家の跡地を囲むように並んでいた。


■5月20日

無人発電所と熱源装置を建設して雪の拡大を抑制する案が固まる。


【総括】

本事案は自然現象ではなく、特定の環境下における自律型結晶構造体と定義する。警告:次期冬期において熱源による抑制が失敗した場合の代案はまだ用意されていない。また、蒸発した水分が、雨や霧に変質して害を及ぼす可能性も残されている。政府方針:より強力な熱源の開発研究に注力。


以上、報告を終了する。



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