13
砦を後にした俺たちはアルトの知識と記憶を頼りにヴァシュナ街道を目指し、昼過ぎにはどうにかたどり着くことができた。
この道を行けばハレスタルに着く。
「幸いなことに、ハレスタルの近くですよ。日暮れ前には着くでしょう」
時折旅人や荷馬車とすれ違いながら、街道を行く。
道中、俺たちは少年に名を名乗ると彼は、
「ティ……ティエラです」
と答えた。
「家はどこだ?よかったら送っていくぞ」
この少年もまだ幼い。リミィと同じように家に帰りたいだろう。
ティエラは少し考えて口を開いた。
「皆さんはどこへ行くんですか?」
「俺たちはハレスタルに行って、アカトの森にある楽園の鍵を……もらえたらもらう。それで楽園に行く」
「それなら、皆さんと一緒に行きます」
「でも、家族が心配しているんじゃない?」
ツィアナの言葉にティエラは首を横に振る。
「心配する家族なんて……いませんよ」
「そんなことないだろう。君はまだ幼いし、ご両親は」
「いません!」
食い気味に、ティエラは言った。その瞳は少し濡れているように見えた。
「まあまあ、ティエラ君にも何か事情があるみたいですし、このまま旅に連れて行ってもいいでしょう。彼もそれでいいと言っているのですから」
先を歩いていたアルトが俺とティエラの間に入る。
「そう……だな」
俺は納得しないまま、とりあえず頷く。
「それじゃあ、さっさとハレスタルに行きましょう」
少し歪んでしまった空気を直すように、ツィアナは明るい声を出す。そうして俺たち四人は再び歩みを始めた。
ハレスタルは山を背にした、南向きの城下町である。ルコア方面、つまり北からハレスタルに行こうとするには、山をぐるりと迂回する必要がある。山を越えるより迂回したほうが安全で、時間もかからない。
山を回り、しばらくすると城らしきものが見えてきた。
遠くからでも山の中腹に位置する尖った塔がわかる。城壁は白く、太陽の光を反射している。
街に近づくにつれ、その高さに圧倒された。すれ違う人の数も多くなっている。
いかめしい顔つきで門の両脇に立つ兵士たちの間を通り、俺たちはハレスタルの街へと入った。
にぎわいは今まで見てきたどの街とも比べ物にならないほどだった。大通りは人であふれ、もう日が暮れるというのに活気に満ちている。建ち並ぶ露店から客引きの声がせわしなく聞こえる。
「すごい……」
とツィアナは驚きに目を見開いていた。
もう夜になってしまうし、城には明日出向こうと決めた。俺たちははぐれないように人波を縫い、適当な宿屋にたどり着く。
宿の中は人でいっぱいだった。忙しそうな女将を呼び止め、今夜泊まりたいと申し出るが、女将は眉尻を下げる。
「ごめんなさいね、もう満室で。他をあたってくれるかしら」
俺たちは仕方なしと他の宿屋に行くが、二軒、三軒と続けざまに断られてしまった。三軒目の主人に聞いた話によると、王女の呪いを解き、褒美をもらいたいがために大陸のあちらこちらから人が集まっているそうだ。そんなに人が来ているとは思いもしなかった。
四軒目にしてやっと部屋を確保できた。路地裏の、あまりきれいとは言えない所だったが、贅沢は言っていられない。ツィアナとティエラは二人そろって渋面を作っていた。




