戦場伝説
分割版です、大体オリジナルのエピソードを4千文字から5千文字程度に分割しただけの物で、内容は同じです。
ガッツリ読みたい方は1万字超の長文となる【ガッツリ胸やけ版】でどうぞ。
内容は分割版と同じですが、長文版は各話ごとにAI生成した扉絵を設定してあります、分割版は数が多すぎて無理っス...サンプル「長文版第一話」扉絵
内戦が続く南米某国、国境付近で隣国政府軍と対峙する兵士たちの間で囁かれる、不気味な死神の噂…。
ラッキーストライクの紫煙が漂う戦場で、兵士達の与太話が続くが…。
爆乳酪農家狙撃兵ホルスタイン零-zero- 腐敗した政府軍と国を蝕むカルテルを敵に回し、死神の絶望的な戦いが今、幕を開ける。
爆乳酪農家狙撃兵ホルスタイン零-zero- 第一話 「死神の噂」
ーーーーいつから始まったのか
何が発端だったのか
何人死んだのか
いつまで続くのか
どうすれば終わりなのか
ーーーーもう誰も覚えちゃいない。
この国ではすでに泥沼の内戦が始まってから、ずいぶん時間が流れている。
最初は政府のやり方に反発する、過激派のテロから始まった。
しかし、それを武力制圧する政府のやり方に不満を持つ多くの国民の世論や支持は、決して政府にとって好意的なものではなかった。
「テロは論外だが、政府ももう少し国民のことを考えてほしい。
汚職政治家や軍部の腐敗を取り締まってほしい。」
最初はそんな小さな不平不満だった、それが世論だった。
だが政府はこれを許さなかった。
不安な世情を憂えた国民の平和的なデモを、政府は短絡的に武力で鎮圧し始めた。
やがて国民の中にも公然と政府のやり方に反発する者たちが現れる。
政府は強権をもってこれらを弾圧し、手あたり次第に政治犯収容所や強制収容所送りにした。
やがてこれらの騒乱は拡大し、小さな火は内乱という巨大な燎原の野火へと、拡大していった。
これを好機と見た隣国は、この国の国境周辺に治安維持を口実に戦力を集結させ、虎視眈々と侵攻の機会をうかがっている。
そんな一触即発の国境付近。
大規模な戦闘こそ起きてはいないが、つい二時間ほど前にも、国境を踏み越えて侵入してきた小隊規模の戦闘集団との小競り合いが起きたばかりだ。
本格的な侵攻では無い、威力偵察といったところだろう。
「まったく....賞味期限切れ間近の、しかも旧式のレーションとはな。
正規軍が聞いてあきれるぜ、食い物ぐらいまとものなの寄こしやがれってんだ....」
一人の兵士がレーションの袋を丸めながら忌々しそうにつぶやく。
「まったくだ、おまけに俺の手持ちのはもうあの悪名高いゲロマズのポークビーンズしか残ってねぇよ、次の補給いつだっけ?」
「あのドロを固めたポークビーンズか、そりゃ御愁傷様だな。
俺はコロンビア製レーションをあと二つ残してあるんだ....
補給は四日後だ、それすらアテになりゃしねぇけどな。」
「俺のポークビーンズ二個と交換しないか?デザートに入ってたチョコレートケーキも三個つけるぜ。」
そんなやり取りをしながら、レーションに入っているインスタントコーヒーをレトルトパウチを温めるのに使っていた熱湯の残りを利用して淹れる。
「.....そういやさ、聞いたか? またあの死神が出たってよ。」
「死神って....噂は聞いてるけど、ただの戦場伝説だろ?
バケモノみたいな対物ライフル担いだ、スナイパーってやつ。
3km先から装甲車撃ち抜いただの、対戦車ヘリを4km先から撃墜しただの....さすがにホラ話しだろ。」
「.....かも知れんが、襲撃された部隊の連中はおびえ切ってるってよ。
防弾板も重戦車の装甲すら楯にならねぇって。
おまけに普通の対物ライフルじゃ、説明がつかねぇような射程距離と貫通力らしいわ。」
タバコをくゆらせながら、コーヒーを一口すする。
「自分も聞いています、なんでも.....バケモノじみた巨大な狙撃銃を軽々と担いだ女が、一人でそのバケモノ銃を運用しているのだとか.....」
すぐそばで、二人のやり取りを聞いていた新兵らしき若い兵が話しに入ってくる。
「.....二週間前に配属されてきたばかりのお前も聞いてるのか。
まぁ正規軍ならともかく、レジスタンス共なら女の兵士がいても確かに不思議じゃねぇけどよ。
女がそんな化け物銃を担いで運用できるわけがねぇ。」
戦場名物、汚れた年季の入った飯盒に淹れたコーヒーを啜る、これが美味いのだ。
「うちに配備されてるデネル NTW-20 (口径20mm)でさえ並みの狙撃手じゃ手に余る。
ベテランスナイパーでなきゃ扱えないシロモノなんだ。
2kmmを超える距離から狙撃できる銃なんぞ、とても女の体力で扱えるわけねぇ、ただの戦場伝説だな。」
空になったコーヒー飯盒を傍らに置き、ポケットから煙草の箱を取り出す。
「......あ...そういや空だった...なぁ新兵、すまんがタバコ持ってたら分けて貰えんか? 食後のコーヒーの後の一服は特にうまいんだ。」
「あ、はい、どうぞ。
補給の支給品に入ってたやつですけど....」
新兵が、白地に赤い丸のロゴマークが入った煙草の箱を差し出す。
「あ....ラッキーストライクか、ありがとうよ、でも縁起悪いから、やっぱ遠慮しとくぜ。」
「なんですか、縁起悪いって?」
「そうか、まだ入ったばかりだと知らないか、それ吸っていると流れ弾に当たる....ラッキーストライク(まぐれ当たり)ッてな....縁起悪いってんで、ベテランはみんな嫌がるのさ。
上官に言えば交換してもらえるぜ、ほれ。」
そういいつつ自分のタバコを一本、隣の兵士に差し出す。
「お、ありがとよ戦友。
そんな縁起悪い銘柄のタバコ吸ってたら、お前も死神に狙われちまうかもよ?」
タバコを受け取りながら、先輩兵士が笑いながらそう返す。
「ま、所詮ただの伝説だろうがな、仮に実在したとしても、ここの戦線にゃ関係ねぇさ。
どこの基地の話しか知らねぇけどよ....そろそろ歩哨交代の時間だな、行くか....」
三人は傍らの自動小銃を手に取り、立ち上がった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
泥沼の内戦が続く某国、政府軍の駐留基地に新たな指揮官が着任してくる。
新任士官ガルフマン中佐は辺りの景色を見渡しながら車両から降りる。
「ここだな、前線のなかでももっとも損耗率の激しい墓場と呼ばれる第13基地か…やれやれ私も運がないな、今日からは巨大な棺桶がベッドとはな…」
ゴォォォォォォォンッッ!!!
次の瞬間轟く異質な轟音、軍人の本能として反射的に手近な遮蔽物の影に飛び込み振り返ったガルフマンは呟く。
「今のは銃声…いや、砲撃音か?」
すぐさま真っ青な顔の兵士が周囲を警戒しつつ走ってくる。
「本日着任予定だったガルフマン中佐殿でありますか?自分はニルス曹長であります!
敬礼もなしで失礼します!
先ほどの音は中佐殿も聞かれたと思いますが狙撃であります、危険ですのでまずはコチラに移動を!」
「狙撃…?あの音がかね?まぁしかし即時避難せよというのはいい判断だニルス曹長、だが心配はいらんよ、ここは見ての通り重戦車の陰になっている、ひとまずは安全だよ、このまま現状について説明してくれたまえ。」
ガルフマン中佐は重戦車の影で中腰姿勢のまま走り寄ってきた兵士に告げる。
だがニルスは表情をこわばらせたまま早口でまくし立てる。
「いえ!中佐殿!この基地においては重戦車と言えど鉄壁の遮蔽物にはなり得ません!早くこちらへ!」
「心配性だな君は、だが結構、戦場では臆病なぐらい慎重になるべきだ。
ただあまり慎重になりすぎるのもよくない、報告したまえ。」
だがニルスは譲らない。
「お願いですからこちらに避難を!失礼ながら中佐殿はこの基地がなぜ墓場と呼ばれるのかまだご存じないのです!」
戸惑うガルフマンの腕を取りニルスは半ば強引に基地内に引き釣りこむ。
「ふぅ…ここならばとりあえずは大丈夫です中佐殿、ここは空爆に備えたシェルター区画、ここならトマホークの直撃にも耐えうる設計ですので、あの『鎌』であろうと流石に撃ち抜かれることはありません。」
(『鎌』…?しかし大げさな男だ、狙撃程度で…)
内心そう呟きながら、ガルフマン中佐はニルスに先ほどの轟音と現在の基地の置かれている状況についての報告と説明をうながす。
思い出したようにニルス曹長は姿勢を正し、報告を始める。
「はっ!現在わが基地は狙撃による攻撃にさらされております!基地の近くに狙撃兵が潜んでいると思われます…先ほどのあの発砲音、あれで格納庫で雑談をしていたミックとマークがやられました…マークにはポーカーの貸しがまだ4ドルあったのに…チクショウ!いい奴だったのに!…チクショウ!」と涙を流す。
「そうか…戦友だったのかね、心中察するよ、だが私も君も軍人だ、すぐに現状を確認したい、狙撃現場に案内したまえ。
着任の挨拶はその後だな。」
再びニルスの顔が青ざめる。
「いけません中佐殿!まだどこから『鎌』が飛んでくるのか分かりません!危険です、せめて周囲の安全が確認できるまで安全な場所に…」
諦めたガルフマンは兵士たちが慌てて駆け出していく方角をちらりと見て、自分もその方向へと歩き出す。
「格納庫と言っていたな…」
慌てて後を追うてくるニルス曹長。
「駄目です中佐殿!いけません!」
と追いすがるニルスの手を少し乱暴気味にガルフマンは払う、
「いい加減にしたまえ曹長、これ以上は命令違反と上官侮辱罪にあたるぞ!」
振り向きもせずそう言い放つとガルフマンは格納庫へと続く扉を開ける、そこにはすでに多くの兵士が集まっていた、当然だ、攻撃を受けているのだから負傷兵の搬送手当、狙撃現場の検証、場合によってはこの後すぐに狙撃兵を追撃せねばならない。
だがそこにいた兵士たちがある一点を見たまま格納庫内部には一定距離以上は決して足を踏み入れようとはしない。
「何をしている?現場検証と負傷兵の処置はどうした?」
ガルフマンの大声に兵達は弾かれたように振り向く。
だが誰も動こうとはしない。
追いついてきたニルスがガルフマンの隣で呟く。
「ここは死角になっていますからまだ安全ですが、格納庫の中にこれ以上進めば狙撃されます、誰も踏み入れないのです。あれをご覧ください。」
ニルスが指をさすその先には異様な遺体が転がっていた、一体は上半身と下半身が真っ二つにちぎれ飛んでいた。
もう一体は…いや、それはかつて人だった原型を留めていない肉塊にしか見えない赤黒い『なにか』でしかない。
狙撃で2名がやられた、との情報を聞かされてなければ、ガルフマンもそれが2人目の犠牲者の残骸だとはすぐには気づかなかったかも知れない。
「狙撃…と言わなかったかねニルス曹長?
君は判断力に優れた優秀な兵士だが、報告は正確にするべきだ。
これは狙撃などではない、明らかに対戦車砲クラスによる砲撃だ。」
ニルスは黙って格納庫の入り口付近を指さす。
そこには通常の狙撃などでは起こり得ないほどの巨大な穴が一つ空いている。
しばらくそれを見たあとガルフマンはフン!と鼻を鳴らす。
「見たまえ、おそらくあれが狙撃で撃ち抜かれた跡だろう、開口部は一箇所、犠牲者は二人…
つまりこの二人は一発の砲弾で運悪くまとめて撃ち抜かれた、というわけか…
だがしかし、砲撃だとするとどこにも爆発の痕跡がないのは確かにおかしい…榴弾ではなく徹甲弾…?
空襲に備え機銃対策に貼られた格納庫の防弾板を撃ち抜くために徹甲弾を使った…?」
そう呟きながら格納庫に足を踏み入れ二人の遺体に近づこうとするガルフマンをニルスの声が追いかける。




