エピローグ
「――拝啓、レベッカ・ユーバーヴィンデン嬢。
あれからどうお過ごしですか。
何も言わず、あなたの元から消えてしまい、混乱させてしまったでしょう。
申し訳ありません。
ウルリヒ君にも、悪いことをしてしまいました。
授業を最後まで行うことができず、心から申し訳なく思います。
この手紙をあなたが読んでいるということは、私は無事、東の国に到着したということでしょう。
その頃には、既に冬を越しているかもしれませんね。
義姉がエルンスト・レーベンに加担した罪を負い、レベル伯爵家が褫爵されたことは、もうご存知でしょう。
それだけではなく、私と兄が国外追放となったことも、もうご存じかもしれません。
本来なら一族みな打ち首になってもおかしくない罪だったはずです。
けれどオスカー陛下のご温情で、私たちの情報によって被害を最小限にできたという功績を認めてくださり、このような処分になりました。
陛下やニクラス様には、何度も助けていただきました。
感謝しても感謝しきれません。
さすがに兄弟一緒に同じ国へ、とは叶いませんでしたが、幸運にも東の国の言語は少しばかり学んでいますので、きっと何とかやっていけるでしょう。
あの時、エルンスト・レーベンから聞いた様々な真実。
それがあなたを苦しめていないか、それだけが心配でなりません。
レベッカさん。
過去の真実がどうあれ、どうか、今の自分を信じてください。
前にも伝えた通り、あなたは思慮深く、美しく、聡明な素晴らしい女性です。
忘れないでください。あなたは愛されるべき存在です。
だからどうか、人を愛することを恐れないでください。
どうか、諦めないでいてほしい。
もしもあなたが誰かを愛することができたなら、その愛を疑わず、信じてください。
きっとあなたなら、誰かから与えられた幸福ではなく、自分で幸福を選び取れる。
そう、私は信じています。
異国の地から、あなたの幸福を祈っています。
いつまでも。
あなたの親愛なる友人
――ライナー・ヴァールハイト」
ざあざあと水面を激しくかき分けて、船が進んでいく。
シュトルツェリア王国から旅立った帆船は、止まることなく大海を進み続ける。
甲板の上で、栗色の髪を風に靡かせる男が、一人。
風に飛ばされぬよう、紙束を丁寧に封筒に仕舞う。
懐にその封筒を仕舞うと、男は遠く、遥か水平線の先を見つめた。
男は思う。
報われることのなかった恋心は、この風と共に流されてしまえばいい。
時が全てを癒すだろう。
自分の心も、そして、彼女たちの関係も。
未来は誰にも分からない。
きっと、神でさえも。
たびたび更新がストップして申し訳ありませんでした。
これにて完結です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
心から感謝を!




