22.先生からの逃走劇…いや、僕は悪くないよね?
待ちやがれー!と先輩たちに抑えられながらも食堂のテーブルを踏み越えてこようとしてくる先生を横目に見ながら、その怒りをサーッと通り抜けた短髪の先輩に手を引かれて食堂を後にした…僕怒られないよね?入学初日というか開始から既に前途多難な気がするんですけど……
「よし、ここならもう大丈夫かな」
「え、ええっと」
「おっと!いきなり手をつかんで連れてきちゃってごめんね」
『本当にね』
「…んん?」
コノハが呆れたような声でため息を吐きながら文句を言ったんだけど、先輩の反応が変だな?というか猫って鼻からじゃなくて口からもため息出せるんだねぇ……結構前から知ってはいるんだけど、生暖かい息が髪にかかっているのを感じると改めてそう思うよ。
「どうかしました?」
「いや、何かの声は聞こえたんだけど…何処にもいなくてさ」
「えっ」
声は聞こえるのにどこに居るのかは分からない…もしや。
「コノハ……隠形してるでしょ」
『別にいいだろう?人の視線が集まるのが煩わしかったんだよ』
「もう人は多くないんだから消していいじゃん」
ちらほらと食堂から出てきて階段を上がっていく人は居るけど、さっきのイモ洗いみたいな状態からすれば天国みたいじゃないか。ちょっと他の人よりも背が低い僕からすれば圧迫感がすごかったんだから。
「んんん?声的に君の……頭の上にいるのかな?」
「そうです。ほらコノハ!出てきなさい!」
『全くうるさいねぇ。これでいいだろう?』
「うわっ!?猫だ!いや、猫又じゃないか!?」
ちょっと強めに言ったからか、隠形を解いて姿を見せてくれたみたいだ。あれ、今の僕って頭の上に大き目の猫を乗せた変人なのでは…いやいや、同業の陰陽師の人たちの中にはもっと変な格好の人とかもいるしまだまだレベルは低いはずだ。それに海外の人とかはもっと派手派手だったりもするし問題ないはず!
『余計にうるさくなっちまったじゃないかい』
「最初から隠れていなければ叫ばれなかったでしょ」
『ふんっ、気が付かない方が悪いのさ。あの大げさな男はあたしに気づいてたよ』
そうなんだよね。あの鬼岩って先生は僕の頭の上をちらっと確認していたけど、特に何も言わなかったんだ。だからコノハが隠形を使っているのに気が付くのに大分遅れてしまったよ。
「鬼岩先生は気づいてたのか…あー、初めての荒廃が来るって思っていたから感覚が乱れちゃってたかもなぁ」
「コノハの隠形は家の姉さんとかに気が付かれなかったりする時もあるので、仕方ないと思います」
「そうかい?あの朱音先輩が気が付かないのなら相当な術使いなんだねそのコノハっていう猫又は」
「ええ!自慢の相棒ですから!」
『…っふん』
ううーん、そっけない反応で寂しい……あの名前を読んだら可愛い鳴き声でとことこと近づいてきてくれたコノハはどこに行ったのだろうか。
「ふふっ、随分といい関係みたいだね」
「そうですかね?」
「だって傍にいるどころかほぼ一体になっているレベルだもの。そこまでのは父上の知り合いにもそういないからさ」
「だってさ」
『……』
黙っちゃったよ…でもこれ以上追及しておくのはやめておこう。
なんせ尻尾と爪が全力で頭を締め付けようと主張してきているからね!
捻くれ者の恥ずかしがりや。先輩の名前は次回にでも…
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