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14.自室の怪

 試しに部屋を見渡してみるけど、別にどこかが崩れたような後はないし何かが割れている感じもしない。うーん、揺れの影響は何もなさそうだ…なんなら一部の物なんかは直っている気がする?


「なんじゃ、部屋を見渡しても変な所なんぞないだろうに」

「そうなんだけど、逆に変な所がないから変だというか」

 なんせあんなに揺らしていた何かの痕跡が全くないんだよ。開けた瞬間に変な感じもしなかったし、ネズミとかが逃げたような音もしなかった。そもそもこの家には猫がいっぱい住んでいたからネズミが入り込む余地はないだろうけど……今も飼われているのだろうか?


「それにしても、本当に綺麗に残ってるなー」

 むしろ綺麗すぎる気もしなくもない。だって長い間何もしないまま保存するのは難しいだろうし、修繕をしてくれた?でも、この部屋にある子たちを全部を直すなんてお金がかかるだろう…金属が混じっているのなんて錆ちゃって取り換える必要があるだろうしなぁ。手間ががかかり過ぎていないかな?


「がま口なんて艶が出るほど手入れされているし…僕も欠かさずやっていたけど、ここまでのレベルはプロの手腕でしょ。この子もここまで綺麗にしてもらって嬉しいだろうね」

 小学生の頃に母さんに連れられて行ったハンドクラフトのフリーマーケットで、一目で気に入って買ってもらった思い出の品だ……今思えば、あのフリマって普通のフリマだったのかなぁ。ただの釘にしか見えないものがめちゃくちゃ高くてびっくりした記憶がある。その後さらに高い釘を母さんがお得ねって買っていたのも驚いたけどさ。


 ググッ

「んん?」

 気のせいだろうか。今がま口の口金が勝手に動いたような……うーん、やっぱり気のせいか?

「感慨深い顔をしたと思ったら今度は不思議な顔に変わりおって、忙しいの」

「この子を買った時のことを思い出していたら動いたような気がしたんだよ。でも、幾ら大事にして話しかけていたりしたとはいえ……何その顔」

 今度は金ちゃんが何とも言えない顔になってしまった。僕は特に何もおかしなことは言っていたいと思うんだけど?


「ふぅむ、認識のズレとは恐ろしいものじゃな」

「認識のズレって、この部屋にある子たちに関係してるの?」

「寧ろそれしかないだろうに……よいか、ここに居る物達は300年の間この形をそのまま保っておったのだぞ?」

「まぁ、そりゃそうだよね」

 その間に色々と修理とか修繕はされただろうけど。


「因みにだが、その間にこの部屋に入ったのはあの猫と私だけだ」

「んえ?それじゃあこの茶釜とかは金ちゃんが運んで修繕士さんとかに渡してたってこと?」

 火車さんは体格が大きいし楽に運べそうだけど、あの大きさの動物は普通はありえないだろうし修繕士さん逃げちゃうよなぁ……それにお猫様だから面倒くさがってやらなさそうだし。


「まずはそこじゃ。私はお主の賃貸に居た物を運んで以来、一度もここの物達を外に出しておらん」

「んん…?そうなると、どうやって罅とかを直したの」

 確かここら辺に大き目のがあったんだけど。


 ゴトッ


「おおっと」

 ちょっと強く押しちゃったのか茶釜が揺れちゃったよ。危ない危ない…こんなに重いのは今の体じゃ支えきれないからね。

「……」

「何でそんな目で見るの!?流石に今の僕じゃ持てないのは分かってるよ!」

 だからそんなにジトーっと見なくてもいいじゃないか。危なっかしいのは自分でも重々承知してこの部屋にやって来たんだから…


「いや、ギンに向けたわけではないんだが…まあよい。ここに居る物達は修繕されたわけではなく自身でお主にまた使われるために直したんじゃ」

「自分自身で?余計分からなくなってきたよ……答えは何なの?」

 考えすぎて頭から煙が出てきそうだ。というか既に出ている気がする――――そこにある鉄瓶みたいに。


「あれ?何でお湯が沸いてるの?」

 さっき見たときは水とか入っていなかったのに…

残念なほどそこらへんが鈍い。


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