第八話 悠斗視点
「じゃあ今日の授業はここまでだがあと2週間後にテストがあるか
テストに出る問題は赤で書いてあるからしっかり覚えるように」
「起立、礼」
「ありがとうございました~」
ようやく午前の授業が終わった
今日は古文の授業があったからかなり眠かったが
俺が寝たら授業評価だけでなく学園全体から
俺の評価が下がるため寝ずに頑張っている
教師は「素行は最悪だが授業は真面目でサボらず、寝ずに受けてる変わった不良」
という評価でテストも大体70から最高は90ぐらいの点で
絶対に赤点はとらないようにしているが
他の生徒からは逆にそれが不気味と捕らえられてしまい余計に怖がるようになった
「お~い悠斗!!」
廊下で手を振っているのは美佐で隣には龍二もいる
ハスには集会の時に言ったことを律儀覚えていて廊下に連れ出そうとしている
廊下に出ようとすると他の生徒が道を譲った・・・というより逃げた
「相変わらずどこかに行こうとするたび注目を浴びるね悠斗は」
「もう慣れた・・・慣れてしまった」
「ツキガクの日常風景だね♪」
「そんな殺伐とした日常を俺自身が望んでいない」
「元凶がそんなこと望んでも周りがねぇ」
「俺はそこまで自分が怖いと思っていないんだが」
「ガンつけらたら大人しくお金出すくらい怖いよ」
「背中を向けたら命はないってくらい」
どこの殺し屋だよまったく
「実際噂だけで誰も悠斗からお金を巻き上げられたところを見たって人はいないよね」
「そういうのは言ったらボコボコにされるからわかってるから誰にもいわないだろきっと」
「まあ噂に尾ひれがつくのは当然だしこればかりはどうしようもないね」
「そんなこと言いに来たんじゃないだろ」
「まぁねぇ~、愛しの奏ちゃんに会いに行くために決まってるじゃない」
「論点はずれてないけど」
「愛しいはつけなくてもいいだろ」
「奏ちゃんを嫁にしたい」
「お前には婿がいるだろう」
「な!ゆ、悠斗いきなりそんなこと///」
「龍二は婿、奏ちゃんは嫁、OK?」
「それじゃ重罪婚じゃん!!」
「法律に縛られない自由人、それがあたし」
「龍二も手綱くらいちゃんと持っておけ」
「手綱ごと引っ張られるほどパワフルな彼女だから」
「尻にひかれるな」
「わかっていた事だからいいよ」
いいのかそれで?普段は尻にひかれてそのあと必要なら尻をひくって
感じがこの2人にとっては一番ベストな関係かもしれないな・・・
そこは俺じゃなく2人が一番良く知ってるか
「3人とも急がないと昼休み終わっちまうぞ~!」
「こらハス!!奏ちゃんに一番に会いに行くのはあたしだ~~~!!」
廊下は走らないようにっと言いたかったが二人とももう居なくなった
「僕達も急ごう・・・それに奏ちゃんが一番会いたがっているのは
悠斗だと思うから、そんな顔しない方がいいよ?」
「俺としては・・・学校では必要以上に会わないほうがいいと思ったんだがな」
「逆に不安になるよ、彼女が」
「・・・わかった」
昼休みはこいつらに任せて放課後の統治室で会おうと思ったんだが
余計な気のまわし過ぎか?
―――
――
―
「あの子が例の転校生?」「すっげえ可愛いじゃん」
「隣にいるのってもしかして冷徹の魔女?」
「弁当だけどあれって自作?」「噂によれば料理は得意らしいぜ?」
「しゃ、写真に納めて」「馬鹿!冷徹の魔女がいるんだからやめとけって!」
1-Cの廊下には人がびっしりでまるで動物園のパンダような状態だった
写真を撮ろうとしたら力ずくで止めに行こうとしたが
冬香がいたことが抑止力となったようだ
「うわ~これじゃ迂闊に近づけないな」
「まったく奏ちゃんはパンダじゃあないんだ」
「確かにその例えは的を得ているけど」
「あたしの嫁だ!!」
「それはちがう」
「ほら悠斗が先頭を歩いてよ」
「なんでだ?」
「皆逃げると思うから」
確かにそうなるかもしれないが俺への扱いが酷すぎるぞ
俺が1-Fに近づこうとするとみんな蜘蛛の子を散らすように逃げた
・・・なんか切なくなってきた
「よし!でかした悠斗!!」
美佐が1-Fに突っ込んでいきそのままハスもついていく様に入っていった
「あたし参上!!」
「続いて俺も参上!!」
ふたりともおまえらもやれって視線を飛ばしてきた
俺はやらないが龍二はどうしていいかわからないようだが
普通はやらない方が正解だと思うぞ
「先輩方うるさいですよ」
「「どうもすみません」」
奏もちょっと引いてるな、実は俺も引いてる
「奏っちゃ~ん!!」
「ひゃあ!///み、美佐ちゃん!?いきなり抱きついてきてどうしたの!?」
「嫁に会いに来ただけよ」
「?」
キリっとした顔で言っても奏には伝わらなかったようだ
「奏ちゃん授業のほうはどうだった?」
「授業で当てられてももきちっと答えられていました」
「奏ちゃんすっご~い!!頭いい~!!」
「いや、そんなに褒められることでもないから・・・あと美佐ちゃん手つきが」
「大丈夫、おっぱいを触ろうとしているだけよ」
「大丈夫じゃないからやめなさい」
「これがあたしのスキンシップなの!疚しい気持ちなんか欠片もないわ!」ジュルル
「涎が出ている時点でアウトだから」
「これはあ」
「言い訳しないでほら離れて」
「汗って言いたかったのに!ネタ殺しだ!」
「いいからこっちに来る!」グイ
「ああん」
「相変わらず東条先輩は変じ・・・じゃなくて元気ですね」
「冬香ちゃんも相変わらずのクールだねぇ」
「ありがとうございます」
冬香についてだが俺はイマイチこいつのキャラがイメージできない
クールな感じだがどうもそれを無理に維持してしているような
本心ってやつが見えないがいつか見られる時がくるのかどうか
「今更だがすげぇ注目されてない?」
こんだけ騒げば注目されのは当然だがこのメンツだから余計に注目されるな
新聞部にとってはいい記事になりそうな気がする
「そりゃあここには全校生徒の注目の的である美少女転校生に
川神グループの孫娘の一人にして統治会の冷徹の魔女こと川神冬香に
統治会のムードメーカーである私こと東条美佐に
女性にそこそこ人気のあるツキガクの空手エースで沢渡龍二に
そしてぇ!目を合わせるだけで恐怖のどん底に叩き落すツキガク史上最強の鬼人
赤坂悠斗がここにいるんだから注目されるのは当然なのだぁ!」
よく噛まずにスラスラ言えたなさすがハスと同様に人気のあるリスナーだ
「・・・・・・俺は?」
「岡本先輩は落ち担当ですから異名なんてありませんよ」
「落ち担当って何!?俺扱いってそんなんなの!?嘘だろう!?」
「「「「間違ってない(です)」」」」
「ひでぇよ、泣きたくなってきたよ」
「ほ、ほら、せっかく皆も来たんだから一緒に食べよ、ね」
「それもそうだね、美佐も」
「奏ちゃんはあ「私が座ってますから沢渡先輩で隣でいいじゃないですか?」
「ほら美佐、おいで」
「くそぉ~龍二~~!!冬香ちゃんが~冬香ちゃんがぁ~」
「よしよし」
「そこまで泣くなのか」
会長が加わればどうなっていたことやら
―――
――
―
「ねぇ美佐ちゃんさっき川神グループって言ってけど誰のこと?」
「「「「え!?」」」」
「・・・奏、私の苗字は?」
「え?それはかわ・・か・・み?川神?」
「最初から気付いていると思ってたけど」
「え、え、ええぇぇええぇえ!!??か、川神グループって凄い資産家で
そのま、孫だったなんて・・・ぼ、僕てっきり」
奏が紙に書いた字が川上になっていた
「そっちじゃありません、こっちの川神よ」
「し、知らなかった」
奏はショックを受けてほかの皆から励まされていた
少し離れたところで小声で冬香に声を掛けられ
「赤坂先輩の言った通りになりましたね」
「冬香はあの驚きが演技に見えるか?」
「そうですね・・・少しだけ会話して確証はありませんが
演技をしているようには見えませんね」
奏のサポートをしてくれと頼んだときのこと
「あと川神グループの孫娘だって自分から言わないでほしい」
「元々言うつもりもありませんし第一この町で川神と言ったら
川神グループだというのは常識だと思うのですが」
「お前にはあいつの友達になってほしいと思っているからな
それにそんなお飾りなしで会話されたことないだろう?」
「・・・それが当たり前ですから」
「じゃあいい機会だ。飾りっ気なしでぶつかってみろ」
あいつに川神のことは教えていないしさっきまで
ただの学生としか見ていなかっただろう
「正直少し戸惑いがありましたが不思議な感じです」
「そうか、いい体験だったろう?」
「・・・まるで姉さんみたいなこと言いますね」
「言い方だけさ、あの人には常に上にいるかな
だから形だけでも真似したくなるんだよ」
「・・・奏は可愛い子ですね。あなたには勿体ないです」
「勘違いしているようだが奏はそんな気持ち持っていないぞ?
なんていうか友達っていうより家族ように見ている気持ちだ」
「私はまだ彼女のことは完全に信用できませんが
いつか親友と呼べたらいいなと思っています」
親友ときたか、冬香にここまでの言わせるなんて奏も成長してるようだな
それから冬香がこれからも冬香ちゃんって呼んでくれる?と聞き、2つ返事で返した