第26話 予期せぬ同伴者
カリュースとヴィランがデスたちの元に戻ると、デスは驚きあまり言葉を失っていた。
リーディスは一瞬、自分の考えの通りにことが動いたことに満足げな反応を示すと、ヴィランに二言三言挨拶をし、そのまま落ちついた様子でソファーに座っていた。
「なんじゃって、公爵がわしらと一緒に来るんじゃ!」
「わたしが一緒に行くと何かまずいことがあるのか!」
ヴィランは、きつい語調でデスに向かってそう言い放った。
「そんな話をしとるんじゃないわい。公爵という地位にいる者が、どうしてわしらと共にスィークリトに来るんじゃ。
わしゃ、理由を聞かんと納得がいかんわい!」
「理由などない。ただわたしが共に行くと言っているだけじゃ。
それで文句があるのか、この髭絨毯!」
「な、なんじゃとこの大女!
お前さんのきまぐれで付いてこられたら、わしらの計画が台無しじゃわい!」
「お主のような髭絨毯の立てた計画など、古来から成功したためしはないのじゃ。
わたしが加わって新しく立て直すのがよいじゃろう!」
「なっ、なにを!」
「まあまあ、デス大騎将」
見るに見かねたリーディスは、デスをなだめた。デスは、リーディスが間に入ると、しぶしぶヴィランと言い争いをするのをあきらめた。
「ヴィラン様にはやってもらいたいこともございます。ですから、今回はヴィラン様と共に、一旦スィークリトに戻りましょう」
「ぐっ……リーディスがそう言うのであれば、仕方があるまい。
じゃが、わしゃ認めんからな!」
デスは、ぶすっとした顔つきで、床に直接座り込んだ。
「無粋な髭絨毯は、椅子に座るということを知らぬようじゃ」
「なっ、なんじゃと!」
「まあまあ」
リーディスは、今にもつかみかかろうとしているデスを抑え、ヴィランに向かって言った。
「ひとまず、ここにいては何かと不自由でございます。ここは一度帝都ラウェルに戻り、対策を立て直したいかと存じます」
「うむ。そう思って、表に馬の用意をさせておいた。すぐにでもここを出るぞ」
「なんじゃと、わしらは今日ここに着いたばかりなんじゃぞ。
一度も休むこともなく、帝都にとんぼがえりをしろと言うのか!」
「おや、髭絨毯は、一日休まないと馬に乗れぬとみた。それでよく帝国大騎将の地位にいるものじゃな。
いっそのこと、カリュースに譲ってやってはいかがかな、ご老体」
ヴィランは、いつにましても意地悪く言った。デスは、興奮のあまり顔は赤くなり、手は小刻みに震えていた。そばで見ていたエレオノールは、いつデスが爆発するか、はらはらしながら様子を見守っていた。
「とにかく、馬の用意をしているのであれば、すぐにここを出よう」
「カリュース様のおっしゃる通りです。デス大騎将、すみませんがよろしいですね」
「仕方があるまい」
デスは、ぶっきらぼうに言った。ヴィランは、また何かデスに対して言おうとしたが、エレオノールが後ろからそれを止めたので、それ以上おかしな言い争いにはならなかった。
カリュース達は、サジ伯に対して礼をのべると、表で待っていたリューベックから馬を引き取り、夜の闇の中を帝都を目指してまっしぐらに馬を駆けた。
闇を駆ける馬が六体。
カリュース、リーディス、デス、ヴィラン、エレオノール、リューベック──彼らは、これから起こる出来事に無意識の内に、胸の高鳴りをおぼえていた。
闇夜を駆ける彼らの蹄音は、やがて来る変革の鼓動のように響き渡る。




