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EWIG(エーヴィッヒ)──帝国騎士と病床の白髪の友が織りなす、戦乱を生き抜く長編戦記【全99話完結】  作者: 黒わんこ
第二巻 第四章 『紫星』

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第26話 予期せぬ同伴者

 カリュースとヴィランがデスたちの元に戻ると、デスは驚きあまり言葉を失っていた。


 リーディスは一瞬、自分の考えの通りにことが動いたことに満足げな反応を示すと、ヴィランに二言三言《ふたことみこと》挨拶をし、そのまま落ちついた様子でソファーに座っていた。


 「なんじゃって、公爵がわしらと一緒に来るんじゃ!」

 「わたしが一緒に行くと何かまずいことがあるのか!」


 ヴィランは、きつい語調でデスに向かってそう言い放った。


 「そんな話をしとるんじゃないわい。公爵という地位にいる者が、どうしてわしらと共にスィークリトに来るんじゃ。

 わしゃ、理由を聞かんと納得がいかんわい!」

 「理由などない。ただわたしが共に行くと言っているだけじゃ。

 それで文句があるのか、この髭絨毯!」

 「な、なんじゃとこの大女!

 お前さんのきまぐれで付いてこられたら、わしらの計画が台無しじゃわい!」

 「お主のような髭絨毯の立てた計画など、古来から成功したためしはないのじゃ。

 わたしが加わって新しく立て直すのがよいじゃろう!」

 「なっ、なにを!」

 「まあまあ、デス大騎将」


 見るに見かねたリーディスは、デスをなだめた。デスは、リーディスが間に入ると、しぶしぶヴィランと言い争いをするのをあきらめた。


 「ヴィラン様にはやってもらいたいこともございます。ですから、今回はヴィラン様と共に、一旦スィークリトに戻りましょう」

 「ぐっ……リーディスがそう言うのであれば、仕方があるまい。


 じゃが、わしゃ認めんからな!」


 デスは、ぶすっとした顔つきで、床に直接座り込んだ。


 「無粋な髭絨毯は、椅子に座るということを知らぬようじゃ」

 「なっ、なんじゃと!」

 「まあまあ」


 リーディスは、今にもつかみかかろうとしているデスを抑え、ヴィランに向かって言った。


 「ひとまず、ここにいては何かと不自由でございます。ここは一度帝都ラウェルに戻り、対策を立て直したいかと存じます」

 「うむ。そう思って、表に馬の用意をさせておいた。すぐにでもここを出るぞ」

 「なんじゃと、わしらは今日ここに着いたばかりなんじゃぞ。

 一度も休むこともなく、帝都にとんぼがえりをしろと言うのか!」

 「おや、髭絨毯は、一日休まないと馬に乗れぬとみた。それでよく帝国大騎将の地位にいるものじゃな。

 いっそのこと、カリュースに譲ってやってはいかがかな、ご老体」


 ヴィランは、いつにましても意地悪く言った。デスは、興奮《こうふん》のあまり顔は赤くなり、手は小刻みに震えていた。そばで見ていたエレオノールは、いつデスが爆発するか、はらはらしながら様子を見守っていた。


 「とにかく、馬の用意をしているのであれば、すぐにここを出よう」

 「カリュース様のおっしゃる通りです。デス大騎将、すみませんがよろしいですね」

 「仕方があるまい」


 デスは、ぶっきらぼうに言った。ヴィランは、また何かデスに対して言おうとしたが、エレオノールが後ろからそれを止めたので、それ以上おかしな言い争いにはならなかった。


 カリュース達は、サジ伯に対して礼をのべると、表で待っていたリューベックから馬を引き取り、夜の闇の中を帝都を目指してまっしぐらに馬を駆《か》けた。


 闇を駆《か》ける馬が六体。

 カリュース、リーディス、デス、ヴィラン、エレオノール、リューベック──彼らは、これから起こる出来事に無意識の内に、胸の高鳴りをおぼえていた。


 闇夜を駆《かけ》ける彼らの蹄音《ていおん》は、やがて来る変革の鼓動《こどう》のように響き渡る。


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