告げる想い
ティア視点に戻ります。
固まっていたフィルが復活したのは数分後だった。
「…まさか話が通じてないとは。君の鈍感さをなめてた。何とも思っていない女性にキスとかすると思う?」
言われてみれば、フィルがそんな不誠実なことする訳がない。
「ぐ、す、すみません。大切には思ってくれているはず、とかは思ってたんだけど…」
そんな考えを吹き飛ばすには、十分な熱のキスで。
さっきは驚いてつい色気もなく質問が口を突いて出た。
フィルは苦笑した後、私をソファに座らせる。
「…いや、そもそも俺がちゃんと言葉にすればよかっただけだから。勝手に妬いたりしてみっともないな…ごめん。…やり直しても、いい?」
「え?」
そばに跪き、優しい仕草で手を取られる。
いつもの冷静さの奥に強い意志が煌めく青い瞳。
ひたと目が合えば、つい見とれてしまう。
「…ティア」
きゅっと手を握る力が増す。
「君を、愛してる。」
ひゅっと息を吸い込んだままフリーズした私の手の甲に口付けを落とし、続ける。
「…ひとりの男としてずっと護っていきたい。ーーー俺と、一緒になってくれますか?」
自分が何を言われたのか、反芻するのに随分時間を要した。
ティア…?と覗き込むフィルに、真っ赤になっているであろう顔でコクコクと頷くことしかできなかったけど、
それを見たフィルは、ホッとしたように肩を撫で下ろし、口元を緩めて笑ってくれた。
「実は、陛下にも婚約したいって、伝えてあるんだ。認められるかはまだわからないけど。」
そんなとこまで話進んでるの⁉︎と驚いた私に、先走っちゃってごめん、とバツが悪そうな顔で謝るフィル。
なにこれ、幸せか!
「でも、認められるまで頑張るから。ティアは余所見しないで俺だけ見ててね」
そんな甘い言葉を吐きながら、額にキスをひとつ。
クールと思っていた騎士は、意外に甘い。
ゆでダコのようになりながらそう認識しなおしたティアだった。
砂糖がザーッと出そうですね。
読んでくださりありがとうございます。